第5話
「皆様お疲れ様でした! 集計が終わりましたので、結果を発表します!」
大会が終わり、私達はまた校庭に集められていた。正直、教室で各クラス報告でいいと私は思う。わざわざ立ってタメにもならない話を延々と聞かされるよりもよっぽどマシだ。
どうでもいいのでさっさと終わらせて欲しいものだ。
「優勝したクラスは……」
魔術によって各クラスのスコアが表示される。
「Sクラスです!」
まあ、予想通りだな。戦力に差がありすぎる。Sクラスが勝つのは当然だ。
「では次に個人成績最優秀者を発表致します。今回の大会で一番ポイントを獲得したのは、Sクラスのヴァンさんです! 記録は脅威の1038点! ヴァンさんは壇上へどうぞ!」
はぁ……。
向かってきた者を全員始末していたせいでこんな結果になってしまうとはな。
面倒だが、逃げようとしなかった私の責任だ。行くとしよう。
「では一位になった感想をどうぞ!」
感想か……。
特にない、はいけないのだろうな。
「私に向かってくる者が多かった故の結果だ。それ以外にない」
「ほほう。積極的に動かず、向かってくる敵だけを倒してこの点数ですか。これは底が知れませんね!」
勝手に良い方向に持っていくのはやめてほしい。私からしたら迷惑な発言でしかないのだが。
「個人成績最優秀者のヴァンさんにはこちらの勲章と魔道具が配布されます。ではどうぞ」
司会者から勲章と魔道具を受け取る。魔道具は指輪型か。効果は転移と。ふむ、中々使えるな。消費魔力量が多く常人が発動するのは不可能だが問題ない。
私は普段から移動に困ってはいないが、一瞬で移動できるというのは便利だ。
勲章はなんの役にも立たんがな。
「皆さん、ヴァンさんに盛大な拍手をお送りください!」
はぁ……。
さっさと席に戻ろう。
「続いて、成績準優秀者を発表いたします」
なるほど。
それも発表されるのか。普通に考えればSクラスの二人のどちらかだが、その二人でない可能性も十分ある。
「成績準優秀者はEクラスのメシアさん! ポイントはなんと566点! メシアさんは壇上へどうぞ!」
メシア……?
あぁ、あいつか。
壇上に上がったその男は、短い銀髪と蒼の瞳を持ち、自信に溢れた表情をしていた。
「メシアさん、学年内で二位になった今のお気持ちは?」
「結果に満足せず、次は一位を取ってやりたいと思ってます!」
「これはこれは! ヴァンさんに下剋上を起こしたいと。熱いですねー!」
この司会者中々いい性格をしているな。そうやって生徒のやる気を出させようとしているのだろうが、その生徒の相手をしなければならない者の身にもなって欲しいものだ。
「成績準優秀者のメシアさんには勲章が送られます」
「おう、ありがとう」
「そして今回優秀な結果を残され、そのクラスに実力が見合っていないと判断された生徒はクラスの引き上げが行われます。メシアさんは満場一致でSクラスです!」
「マジ!? やったー!」
まあ、あの強さでEクラスは流石にな。今のあいつの強さは、冒険者で言うなら準二級レベルだ。魔法や魔術が使えないからと言ってEクラスを名乗らせるのには無理がある。
妥当なクラス上げだ。
「ちっ。なんであんなやつが……」
まぁ、それを快く思わない者は当然出てくるのは当然の事だ。彼の学園生活には様々な困難が立ちはだかるだろう。
だが彼はそれを乗り越えてしまうのだろうな。
まるで、小説の主人公のように。
私は彼の物語を離れた所で見るとしよう。
◇
大会が終わった次の日。教室に入り空を見つめていると、騒がしい声と共に扉が開かれた。
「おっはよー!」
騒がしく入ってきたのは、元Eクラスの生徒メシアだ。朝っぱらからご苦労な事だな。
「あ、ヴァン!」
「はぁ……」
「なんだよ、朝から辛気臭ぇ顔しやがって」
「面倒なのが来たからな」
「え、お前が面倒だと思う奴がいるのか!? 紹介してくれ! 戦いたい!」
はぁ……自覚がない馬鹿の相手をするのは疲れる。
まあそれも今のうちだけか。
そろそろあいつが来るはずだからな。
「ちっ」
噂をすれば何とやら、か。
「おいお前」
「ん?」
「なんでお前みたいなクズがここにいんだよ」
「あん?」
予想通りの展開だな。
「何だよお前」
「俺はアーク・グランナイト。この国の第二王子だ。お前のようなクズが気安く話しかけていい相手じゃないぞ」
「へぇ。それでその第二王子様は俺がここにいるのが不満だと」
「そうだ。わざわざ言わないとわからないのか?」
「いいや。言われなくてもどうせ聞かねぇし」
「貴様……!!」
やはりこうなるか。
予想はしていたが、これ程想像通りの展開になるとは思わなんだ。
「おはようございます……って、どういう状況ですの?」
教室を開け中の様子に困惑したリエラが私に問いかけてくる。二人はリエラが入ってきた事に気付いていないようだ。
「アークがメシアに突っかかった結果だ」
「なるほど。お二人とも血の気が多いですわね」
「まったくだ」
「……初めて会った時はもうちょっと可愛げがありましたのに」
おや、どうやらメシアと面識があったようだな。
まあ興味もないし追求はしないが、面識があるならさっさとあれを止めてほしいものだ。
いや、彼女が来たならもう大丈夫か。
「これお主達、朝っぱらから喧嘩なぞしおって。そんなに喧嘩したいなら決闘でもしておれ」
タレスも人が悪い。そんなことを言えば、二人は当然くらい付いてくるだろうに。
「決闘か。ならこれで決着をつけようじゃないか」
「へっ、いいぜ。ボコボコにしてやる」
ここまで読みやすい馬鹿共も他にいないだろう。
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