第2話
入学式も終わり、私は自分の教室に入った。
この学園では成績に応じてクラスが分かれる仕組みのようで、私は一番上のSクラスのようだ。
成績は扱う魔法、技と魔術の制度、筆記試験の点数で判断される。
余談だが、おそらくこのシステムは冒険者を参考にされている。
冒険者にもそれぞれランクがあり、上から特級、一級、準一級、二級、準二級のように分けられ、一番下が五級だ。
この学園も上からS、A、B、C、D、Eに分けられている。冒険者との差別化も行うためにこのような形になったのだろう。冒険者は冒険者証の色で位を判断するが、この学園でも腕章の色でクラスを分けている。
閑話休題。
Sクラスの生徒が私の他に二人集まると、担任と思われる人物が入ってきた。品のあるローブを纏った老人だ。
………化けてるな。
「今日からSクラスの担任を務めるタレスじゃ。よろしくの。まずは自己紹介じゃ。名前、魔法や趣味などを話せ。順番は廊下側の席からじゃ」
どうやら私は一番最後のようだな。わざわざ自己紹介に力を入れる必要もない。適当に流そう。
「俺の名はアーク・グランナイト。この国の第二王子だ。せいぜい足手纏いにならないようにな」
ほう。まさか第二王子が一緒だとはな。そういえば復讐の為に世界を巡っていた時に聞いたことがあったな。
たしか幼くして教育係の魔導士を唸らせるほどの魔法を見せ、剣の腕は国内でも上位に位置する天才だったか。
当時の私は興味が湧かずその後の話を詳しく聞いてはいないが、感じる魔力量からして学生の域を遥かに超えているのは事実だ。
もし冒険者として測るなら二級は硬いな。天才と言われるのも納得だ。努力を重ねれば一級も夢ではないだろう。
だが、それほどの才能の持ち主であっても力に溺れてしまえばただの愚者に成り果てる。
ボサボサの金髪に欲望に濁った青の瞳。顔立ちは整っているが所詮は見た目だけ。中身が腐っているハリボテなんぞ意味がない。
「わたくしはティール公爵家の長女。リエラ・ティールですわ。趣味は研究とお茶会ですの。よろしくお願い致しますわ」
そう名乗ったのは薄紫の髪を緩く巻いた少女だ。リエラ・ティール。その名も聞いたことがある。
世にも珍しい植物系魔法をその身に宿し数々の論文を発表した魔法の天才、いくつもの特効薬を作り疫病の蔓延を防いだ聖女だったか?
噂では魔法と魔術特化との話だったが、信じない方がいいだろうな。口調に反して彼女は頭が切れるようだし、どこまでが嘘でどこまでが本当なのか定かではない。
ただ感じる魔力から強さを仮定するに二級から準一級程はあるな。彼女の持つ植物系魔法の詳細がわからん以上信頼はできないが。
さて、次は私の番か。適当に済ませるとしよう。
「ヴァンだ。性はない。よろしく頼む」
口ではそう言ったが、よろしくするつもりなど毛頭ない。
「うむ。自己紹介も終わったことじゃし授業の説明をしよう」
タレスが授業の説明を始めるが、真面目に聞いているのはリエラだけだ。
大体、一度説明されたものをもう一度説明されているだけだ。内容は大体把握しているし、聞く必要はない。
「さて、授業の説明はこれで以上じゃ。次はクラス対抗戦についてじゃ」
おや?
なにか聞いたことのない単語があったな。内容は大体察しがつくが、大人しく聞いておくとしよう。
「このクラス対抗戦は各学期の始まりと終わりにあり、それぞれのクラスが一つのチームとなり、他のクラスと競い合う大会じゃ。種目は例年通りバトルロワイヤル。他クラスの生徒を倒してポイントを得る。そのポイントの合計点を元に結果を決める。なにか質問はあるかの?」
タレスの呼び掛けに一つ手が挙がる。。手を挙げたのはリエラだ。
「先生、それでは獲得できるポイントがクラスによって偏りすぎるのではなくて? この学園ではCクラスが一番多いので、その方達は他のクラスをたくさん倒さなければうまく点を得られませんわ。それに、私達Sクラスの生徒を倒してもEクラスの生徒を倒した時と得られるポイントが同じでは労力に見合いません。そこのところどうなのですの?」
リエラの言う通り、このルールでは一番人数の多いクラスが不利になってしまう。数は力とは言えど、実力が違いすぎれば意味をなさない。
また得られるポイントが同じではSクラスのような強者と戦うよりも弱者と戦う方が効率がいい。数も多くあまり強くはないCクラスが狙われるのは必須だろう。
「いい質問じゃ。現在一人倒して得られるポイントはSクラスが一万点、Aクラスが百点、Bクラスが十点、Cクラスが五点、Dクラスが一点、Eクラスが0点となっておる。ちなみに各クラスの人数はSが三人、Aが二十人、Bが五十人、Cが二百人、Dが七十人、Eが十人じゃ。バランスは取れておるじゃろ?」
「ちっ、どこがだよ。Sクラスが一万っておかしいだろ」
アークが机に足を上げたままタレスに喰らいつく。こいつに常識というものはないのだろうか。猿なら猿らしく檻に入っていればいいものを。
「なんらおかしくないぞ?」
「はぁ? こんなん俺らの中の誰かがやられたら負け確定じゃねぇかよ」
「ほぅ、随分弱腰じゃの。もしや自分が負けるのが怖いのか?」
「おいおい、俺が雑魚共に負けるわけねぇだろ。俺が心配なのはこいつらが負けて俺が泥を被ることだ」
リエラと私を見ながらそんなことを言うが、滑稽だな。自分の力量を測ることができないらしい。このクラスで最弱なのは間違いなく貴様だろうに。
「ほっほっほ、お主の心配は杞憂じゃよ。この者達はお主が思うよりもずっと強いからのぉ」
「へっ、そうかよ」
まるで聞いていない。これで脱落したら笑いものだな。
「クラス対抗戦は明後日じゃ。詳しいルールの説明は当日行われる。それまでの期間は計画を立てるなり鍛錬するなり自由にしていい」
なるほど。その期間に出来るだけ戦力差を埋めようというわけか。今日入れてたったの二日でだがな。
その程度の時間で戦力差が埋まるとは到底思わん。
実力を付けるにしても作戦を立てるにしても時間がなさすぎる。
それに、もし実力を付けれたとしても一人が強くなった程度ではどうもできず、もし作戦を立てれたとしてもそれを伝達するのに時間がかかり結果的に間に合わない。
今回のクラス対抗戦は上位のクラスが圧倒的に有利だ。下位のクラスは圧倒的な戦力差を前に蹂躙されるだけだろう。
例外がなければ、な。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます