第17話 奴隷狩り

あれから俺達は逃げる様に馬に乗って街道を進んだ。

急いで馬に乗り駆け出した為、現在酔って休憩中。

尻が痛い…


俺は初めて馬に乗った。

その為、乗り方も分からずに馬に乗せられて駆けて来た。

上下左右に揺れに揺られ…俺はダウンした。


「ロゼ…後は頼んだ…ガク」


「馬鹿な事やっていないで、大人しく寝ていて下さい。」


ロゼに膝枕をしてもらい、木陰で休んでいる。

馬よ…お前が最強だ。


この辺りは街に近いせいか、ちらほらと人の姿が見える。

ただ…誰もいい顔をしていないが…

そんなにエルフが嫌いかね。


俺達を見かけると、絡もうとして仲間に止められているバカ。

一目散に逃げ出す人。

嫌悪感を滲ませ、地面に唾を吐き捨てるアホ。

そして…


「オイオイ。こんな所にエルフが居るぜ。」

「ヒューヒューご両人熱いねぇ~」

「おいおい!このメイドめっちゃ美人じゃないか!」

「こりゃ~今晩は楽しめそうだな。」

「「ゲヒャヒャヒャ…」」


馬鹿が群がって来た。


「野生の馬鹿が現れた。君に決めた!行け!ロゼ!」

「馬鹿が仲間を呼んだ。馬鹿が駆け付けた。」

「ロゼ…俺を馬鹿の仲間に入れるのは良いが…自分も馬鹿だと言ってるぞ…」

「ッハ!」

「ロゼさんや…そんなにビックリした顔しても、自分で言ったんだからね。」


馬鹿達が騒いでる中、俺達も馬鹿みたいな会話をしていた。


「俺達を無視してんじゃねぇー‼」


自分達が無視されていると気付いた馬鹿がキレた。


「てめぇ~ら‼何騒いでやがる‼」


馬鹿達がギャーギャー騒いでいると、後ろから怒鳴り声が聞こえた。

スキンヘッドの体格の良い男と牢屋を積んだ馬車が近付いて来た。

奴隷狩りか…

牢を積んだ馬車にはエルフが5人乗っていた。


「頭、こんな所にエルフとメイドがいるんでさ~」

「メイド…どこぞの貴族の奴か?」

「いや、見たことねぇ~奴でさ~」」

「ほぉ~えれぇ~別嬪さんで。お前さん何処の家の者だ?」


馬鹿達の頭がロゼに話しかけた。

当然、ロゼは無視をする。

それを、周りの馬鹿どもはギャーギャー騒ぐ…うるさい…


「なるほど…おめぇ~さんらは他所者か。」


頭は何かに納得したように話した。


「俺らは、ここいらでは名の知れた者でよ。それを知らねぇ~って事は…問題無さそうだな。」


どうやら、馬鹿どもは名の知れた馬鹿だったらしい。

頭はニッと口角を上げてニヤ笑いをした。


「おめぇ~ら‼この2人を馬車に案内してやんな‼」


「ウ~ス」っと返事をした馬鹿共がワラワラと集まり、ロゼに手を伸ばした。

ロゼは伸ばされた手を避けると、ストンっと手首を斬り落とした。


「ンギャァァァァァァァァ‼」


手首を斬り落とされた馬鹿は、初めはキョトンっとしていたが、自分の手首を斬られた事を理解すると大きな悲鳴を上げた。

ロゼの手には短剣が握られており、叫び声を上げた馬鹿の喉に短剣を突き刺し、馬鹿の腹を蹴り近くにいた馬鹿達を巻き込んでふっ飛ばした。

ストラ~イク。


俺は立ち上がってロゼに指示を出した。


「ロゼ…取り敢えず、5人残せ。」


「ご主人様、それは木ですよ。」


どうやら俺は木に話しかけていたようだ。

視界がグルグルして気持ち悪い。

俺は近くに居たロゼの肩に手を置いて支持を出した。


「奴隷商と頭を残して、他は三人で良い…後は…好きに処分しろ。」


「ご主人様、それは馬鹿の頭ですよ。」


ロゼと思ってたが、違ったみたいだ。

俺は顔を上げ、相手の顔を見た。

あ…もう限界…

ゲロゲロゲロ…吐いた。


「「頭ぁぁぁ‼」」


視界がぼやけて気持ち悪い…

ゲロゲロゲロ…

俺はそのままフラフラ歩くと、その場で座り込んだ。


「ロゼ…後は頼む…」


「そこには誰も居ませんよ。」


「貴様ぁぁぁぁ!」っと怒鳴り声が聞こえ、「ゲロ男はあっちに行ってなさい。」っと言うロゼの声が聞こえたのを最後に俺の記憶が途切れた。




バキ・ドカ・ベキ・ドカ…チーン





「お早う御座います。ご主人様。」


目を覚ますと、ロゼが挨拶をしてくれた。

ロゼに膝枕をしてもらい、寝ていたみたいだ。

目の前にはロゼの豊満な胸が見え、ロゼの顔を隠している。

良い眺めだ…あの胸に顔を埋めて眠りたい…

バシン‼「アイタ‼」ロゼに頭を叩かれた。


「それで、この者達をどうなさるのですか?」


ロゼに言われ、顔を横に向けた。

ロゼのお腹と太ももに顔を埋め堪能する。

あぁ~良い匂いだ。

柔らかくて暖かい…気持ちいい…気持ちいいが…服が邪魔だな。

バシン‼ロゼに頭を叩かれた。


「ご主人様も、あの列に加わりますか?」


俺は顔を反対に向けると、馬鹿達が横に並んで正座させられていた。

サーセン…


俺は身体を起こした。

まだ頭がフラフラする。気持ち悪い…


「指示どおり、奴隷商を含め5人残しておきました。」

「あぁ~ありがとう…」

「あれをどうするおつもりですか?」

「街に入る時に…使おうと…思って…もう…ムリ…」


俺は限界にきて、ロゼの膝にうつ伏せに寝転んだ。

そのままアイテムボックスから金貨1万枚入った革袋を取り出した。


「その金で…一か月分の旅支度を…させろ…下っ端に行かせて…他は…護衛でもさせとけ…」

「奴隷はどうしますか?」

「街に行く時に…必要…世話させておけ…」

「畏まりました。逃げた時はどうしますか?」

「街に火をかけふっ飛ばせばいいだろ…」

「畏まりました。」

「詳しい事は…明日…もう無理…拠点…寝る…明日まで待機させとけ。」

「畏まりました。」


俺はロゼに適当に指示を出して休む事にした。

流石に限界…しんどい。


「そうゆう事です。あなた達は、今日一日休み明日に備えておきなさい。私はご主人様を休ませてきます。」


ロゼはそう指示すると、俺を立ち上がらせ森に向かって歩き出した。

俺は、森に少し入った所で簡易拠点を出し、中に入って寝る事にした。


お休みなさい。




次の日、日の出前に起きた俺は、身体が臭かったので風呂に入りさっぱりした後、外に出た。


「逃げなかったのか…」


外には、昨日の奴隷狩りの頭がいた。


「逃げようとも考えたさ…」


そう言って、頭は視線を前にやった。

俺もその視線の先に目をやると、頭の弾けた下っ端が一人転がってた。


「俺達に何をした。」


頭が聞いてくるが、正直俺にもよく分からない。

ただ、思い当たるとすれば…


「従属契約でも発動したんじゃないか…」

「何だそりゃ?」

「お前達がアレに使ってる奴隷契約の強化版みたいなものだ。」


俺はそう言って牢の中にいるエルフ達を見た。

頭は、それを確認すると「っち」っと、舌打ちをした。


「身体はもういいのかよ…」

「あぁ~馬で酔っただけだからな。」

「軟弱な奴だ…」

「始めて乗って、馬に乗せられ上下左右に揺らされたからな…」


思い出しただけでも気持ち悪くなってきた…


「馬も真面に乗れねぇ~のかよ。」

「始めてって言ったろ。」

「「…」」

「ところでハゲ。」

「誰がハゲだ。」

「お前…臭いな。」

「「…」」」

「てめぇーが俺にゲロぶっかけたんだろうが‼」


俺が臭いと言ったら頭がキレた。

どうやら、昨日俺が頭に向かって吐いたらしい…スマン。


「拭いても拭いてもとれねぇ~し‼匂いはするは!最悪だよ‼」


かなりご立腹みたいだ…

俺は悪いと思い、森の方に歩いて行き、頭を手招きして呼んだ。

頭は「なんだよ…」っとボヤキながらやって来た。

頭が来るのを確認すると、俺は目の前に温泉を造ってやった。


「昨日も見たが…お前のそれ…何なんだ…」


頭は、いきなり目の前に温泉が出来た事に顔を引き攣らせていた。


「そうゆう魔法だと思っておけ。」

「あぁ…」

「とり敢えず、温泉で身体と服を洗え…臭い」

「てめぇ…いや…いい」


頭が文句を言おうとしているのを睨んで黙らした。


「それが終わったら、他の奴と奴隷共も入れてやれ。」

「奴隷もか?」

「あいつらと一緒に行くんだ、臭かったら困る。」

「行くって…何処にだよ…」

「竜の谷だ。」

「ハァァァァァァァ‼」


頭は大声を出して叫ぶ。


「いやいやいや…待て待て!死にに行くのはごめんだぞ‼」


「たかが、空飛ぶトカゲじゃないか。」


俺はそう言って煙草に火をつけた。


「トカゲって…あそこ幾多の英雄や勇者が出向いて誰一人帰って来なかったんだぞ‼」

「竜の巣だからな。」

「だったら分かるだろ!」


どうやら此処の住人にとって竜の谷は相当危険な場所らしい。


「別にお前達には期待はしてないさ。」

「だったら、何しに行くんだよ。」

「素材と肉の回収。」

「…」

「逃げたきゃ逃げて良いぞ。」


俺はそう言って森の外をみた。

森の外には、頭の無い下っ端が転がっていた。

それを確認した頭は「最悪だ…」っと頭を抱えてしゃがみ込んだ。

俺は知らん振りして暢気に煙草を吹かした。フ~


「っで…俺達は何をしたらいいんだよ。」


頭の整理が出来たのか、頭が話しかけてきた。


「荷物持ちと素材の回収だな。」

「俺達は戦えないぞ…」

「戦力としては期待していない。自衛だけしてればいいさ。」

「その自衛すら無理なんだよ‼」

「必死に逃げ回ってればいいだろ?」

「…最悪だ…」

「ハハハ!進むも地獄退くも地獄ってか。」

「笑い事じゃねぇよ‼」

「ははは!まぁ~いいじゃないか、さっさと温泉に入ってサッパリと気分を落ち着けろ、あと、臭い。」


俺はそう言って頭を見た。

頭は、俺を睨みつけた後、大きなため息を吐いた。

俺は「飯を食って来るから、それまでに終わらしておけ。」っと言って、そのまま簡易拠点に戻った。

そういや、今日はまだロゼを見ていないな…

そんな事を思いながら簡易拠点に入った。


「御帰りなさいませ。」


中に入るとロゼが出迎えてくれた。


「あぁ~ただいま。」


ロゼに挨拶をし、俺はテーブル席に着いた。

ロゼはそれを見届けると、キッチンの奥に行き、朝食の準備をしてくれた。

俺はそれを見送り、煙草に火を付けて、朝食が出来るのを待った。


朝食が出来たので俺とロゼは、席に着いて朝食を食べていた。

俺は何時も通り、パンとベーコンとスクランブルエッグ。

ロゼは、相変わらずの蜂蜜たっぷりの蜂蜜バター?パンだ。

俺はロゼが何処に居たのかが気になって聞いてみた。


「今朝起きたら、ロゼが居なかったが何処に居たんだ?」


「ご主人様の体調がよろしく無かったので、お一人の方が良いだろうと思い、隣の部屋で休んでおりました。」

「昨日はそのまま寝てしまったからな。」

「はい。ご気分はもう、よろしいので?」

「あぁ~もう大丈夫だ。」

「それは良かったです。」

「ちなみに、臭ったか?」

「いえ、そんな事は御座いませんよ。」

「どんな臭いだった。」

「すっぱ…食事中にする話ではありませんよ。」

「そうだな…すまない。」


どうやら、そのまま寝てしまった俺が臭くて、隣の部屋で寝ていたみたいだ。




朝食を終えた俺達は、馬鹿達が綺麗になるのを待ってる間、ロゼにお仕置きと称してロゼを堪能した。

別に、起きた時に横に居なかったのが寂しかった訳じゃないと言っておこう。

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