第12話 エピローグ

チュンチュンチュン。

清々しい朝ですね。

この通り、俺のお腹も風通しが良いです。

俺は全裸で窓際に立ち、全身で日光を浴びていた。


「ご主人様、バカやってないで大人しく寝ていて下さい。」


俺はロゼに怒られ、いそいそとベッドに戻った。

あれから何があったかって?


特に何も無いぞ?

あの後、倒れた俺はロゼに運ばれて治療をしただけだからな。

回復薬を使おうとしてたが俺が止めた。

これは、罪の証だ。


しかし凄いなこの身体。

昨日の傷がもう塞がってるんだから。

異世界パネェ~


実際、あれは何だったのかって?

人間は簡単に壊れないって事だ。

気が狂ったり、おかしくなる事はあっても、理性は残ってるって事だ。

後は…適当に考察してくれれば良いさ。


結局のところ、俺は自分を許せずにロゼを手にかけた。

ロゼはそれが当たり前だと受け入れた。


ただそれだけ。

そう…それだけ…



夜中、俺はふと目が覚めた。

ロゼを起こさないようベッドをでて、1階のリビングに向かった。

夜は少し肌寒く、俺は暖炉に火をくべた。

部屋の中は暗く、暖炉の火が部屋の中を微かに照らす。

俺はソファーに座ると煙草に火をつけた。

煙草の白い煙が暖炉の火に照らされて、ゆらゆらと揺れている。

俺は大きく吸い込むと、フ~っと煙を吐いた。

アイテムボックスからワインを取り出すと、グラスに注ぎゆらゆらと揺らした。

暖炉の上にある黒い丸太にグラスを掲げ、一気に飲み干す。


「はぁ~」


ソファーに大きくもたれかけ天井を見ながら煙草を吹かした。

俺とロゼはすれ違い過ぎた。

俺はロゼにゼロの面影を覆い、安らぎを求めた。

ロゼは代役を拒み、眷属であり続けた。

ただそれだけ。


「何でこうなったかなぁ~」


「私が不出来なだけだったのです。」


ロゼがそう言いながら2階から降りてきた。


「起こしたか?」

「いえ、私も目が覚めてしまい、ご主人様がおられなかったので。」

「そうか」


俺はグラスを取り出すとワインを注ぎテーブルに置いた。

ロゼは「失礼します。」っと言って、俺の横に腰を下ろした。


「私が何者にも為れなかっただけです。」


ロゼがポツリポツリと語り始めた。


「ご主人様がゼロ様をお求めになって、私を創造して下さった事は理解しております。

あの時は、ゼロ様の代役を果たそうと思っておりました。

ただ、ご主人様がいつも私を抱く時は、ゼロ様の名前を呼ばれるのです。

初めのころは、ご主人様が寂しいのだろうと思っておりました。」


ロゼはそう言いながら俺の顔を見た。


あ…

これはあかんやつだ…

俺は冷や汗が止まらなかった。


「初めの頃は、ゼロ様の代役を務めていると思っておりましたが、だんだんと憎く、悔しくなってきたのです。

何故、自分ではなくゼロ様なのかと、何故一緒にいるのに自分を見てくれないのかと。

だからあの日、私は代役ならいらないだろうと。

ただ…

あれ以降ご主人様は、私の顔を見ると凄く悲しそうな顔をするのです。

それがなんなのかは、私には分かりません。

ただ、それがとても悔しくて悔しくて…」


ロゼの頬に一滴の涙が零れた。

それを見た俺は、そっとロゼの頭を抱き寄せ、頭を抱きしめた。

ロゼは俺の胸で泣きながら大声で叫んだ。


「何故ですか‼」

「何故私を見てくれないんですか‼」

「何故ゼロ様なんですか‼」

「私じゃ駄目なんですか‼」

「どうして…どうして、私を…見てくれなかったんですか…」


「済まなかった。」


俺は自然と言葉を発していた。

それしか言えなかった。

それすら言う資格はなかった。


それを聞いたロゼは顔を上げると、バシン!

俺の頬を叩いた。


ロゼは涙を流しながら俺を睨みつけていた。

俺はそっとロゼの頭を抱きしめた。

すると、ロゼは声を出して大きく泣き叫んだ。




「大変お見苦しい物をお見せしました。後、頬を叩き大変失礼致しました。」

「いや、良い。お前にはその資格が、権利がある。」

「お許し頂き有難うございます。」


ロゼは落ち着くと謝罪し頭をさげた。


「俺にとっては、ゼロは特別な存在なんだ。」


「…はい。」


俺はゼロとの思い出を語りだした。


「ロゼにとってはゼロは俺の第一眷属であり、母神、偉大な存在なのかもしれない。

だけどな、ゼロは初めの頃はただの人形だった。」


ロゼが驚いた顔で俺をみた。

俺は微笑むと優しくロゼの頭を撫でながら語った。


「俺がCreation Worldを始めた頃は、右も左も分からなかった。

にっちもさっちも行かなくなった俺は、ナビーを頼る事にしたんだが…

このナビーもポンコツでな、何にも出来なかったんだ。」


俺は苦笑いを浮かべ、ロゼを見た。

ロゼの背中に手をまわし、ソファーにもたれて天井を見上げ、煙草に火をつけた。

俺は大きく吸い込むと、フ~っと煙を吐いた。


「俺は2年近くかけてナビーを育成した。

色んな書籍を買いあさり、ナビーと2人で勉強を始めたんだ。

おかしいだろ?

お前達からしたら、万能な存在が何も出来なかったんだから。」


「そんな事は…」


俺はロゼの頭をポンポンとやさしく叩くと続きを語った。


「そんな感じで、俺とナビーは試行錯誤しながら、やっとの思いで造り上げたのがゼロだ。

当時は、お前達みたいに美しく綺麗ではなかったが…嬉しかった。」


「だから、特別なのですね。」


「いや。」


俺が否定すると、ロゼは驚いた。


「別にゼロを造った事に喜びは無かった。

Creation Worldと言う、扱う事が難しかったソフトを扱い、初めて何かを作る事が出来たのが嬉しかったんだ。

お前達には聞こえが悪いが、お前たちの様な者は、幾千幾万と作っては消し作っては消しとやってきていたからな、そこには感情なんて物は無かった。」


そう、いくつものゲーム等で、幾千幾万とアバターやキャラクター等を作ってきている。

だから思いれなんてほとんど無い。

出来て当たり前。

出来て当然なんだと。


「それは…」

「悲しいか?」

「はい。」

「お前達が敬う創造主達は、大概こんなものだ。」


ロゼは残念そうに俯いて頭を下げた。


「その時のゼロは、本当に人形の様でな、何もしなかったんだ。

こちらから話しかけても、挨拶程度しか出来なかったからな。」


俺は苦笑いを浮かべ、ロゼの頭をなでた。


「俺もナビーもそれが当たり前だとは理解してたんだが、挨拶程度しか出来なかったのは…少し残念だったのを覚えているよ。

とはいえ、Creation Worldは、お前達の様な者を造り出すシステムだ。

俺とナビーは、あの手この手で試行錯誤しながらゼロの育成に励んだ。

まぁ~結果は出なかったがな。」


そう言って、俺はロゼの顔をみた。

ロゼも顔を上げて俺の顔を見た。


「半ば諦めて、ゼロの育成を後回しにした俺達は、世界構築を始めたんだ。

しばらくそんな事をしているとな、ゼロが俺達の後を付い来るようになったんだよ。

それが嬉しくてな、俺とナビーは喜んだよ。

まぁ~話しかけても会話はあいかわらずだったがな…

それでも嬉しかった。

その後、ゼロは俺達の真似をしたり一人で何処かに行ってオロオロしてたりと、楽しかった。

気づいたら、ゼロは自分から会話する様になってて、それに気が付いた時は思わず抱き着いて喜んだ。」


ロゼは俺の顔を見ながら真剣に聞いていた。

俺は天井を見上げ、煙草に火を付けて、続きを語った。


「それからは、俺達は常に3人で行動してた。

色んな世界を構築しては失敗を繰り返した。

破壊して、破壊されて、消して、消されて。

泣きそうにもなったし、挫けそうにもなった。

でも、そんな時は何時も、ナビーやゼロが励ましてくれて支えてくれた。

そうして出来たのが、今のお前達が知るミソロジーだ。」


そう、俺達は何度も何度も失敗を繰り返した。

挫折しそうになった時も何度もあった。

でも、必ずナビーやゼロ達が支えてくれた。

それが嬉しかった、楽しかった。

だから特別なんだ。


「だからな、お前に一つ聞きたい。」


「はい。」


「何故あの時、思考を止めた?」


ロゼはあの日、俺に「殺して、消去してください。」と伝えた時以降、思考を辞めて人形の様になった。

俺はそれがとてもとても悔しかった、許せなかった。

確かに、俺の行いは良くなかった。

ロゼに許されたい、罰せられたい、怒られたいとも思ってた。

それが、自分の我儘だとゆう事も理解してた。

だから何も言えなかった、何も出来なかった。

でも、同じくして歩みを止めてしまったロゼが許せなかったんだ。


「そうですね…」


ロゼは天井を見上げぽつりぽつりと話始めた。


「最初に申し上げたように、私を抱いている時にご主人様がゼロ様の名前を呼んでいるのが、本当に憎く悔しかったです。

何度、ご主人様を引っぱ叩こうかと思ったほどです。

でも、それが自分の役目だと役割だと思ってました。

そう思って過ごしている内に気づいてしまったんです。

別に私じゃなくても良いんじゃないかと。

ご主人様が求めているのはゼロ様であって、私じゃない。

なら、私は何をすればいいのかと…

ご主人様が私を御求めにならないのであれば、私は人形になれば良いのではと、ゼロ様の代わりを演じていれば良いのではないかと思ったんです。

だからあの日、元の場所に帰られるなら、代役は不要だろうと、ゼロ様が居られるから自分は要らないだろうと、そう思って「自分を終わらせて下さい」っと、お伝えしました。

此処に置いて行かれたり、放置されるのは嫌でしたから。」


ロゼは涙を流しながら俺の顔を見て、話を続けた。


「だから私は、心を閉ざし人形になろうと、感情を殺して演じてれば良いのだと…

ご主人様の気性が荒れて行くのを見ながら、私はこれで良いのだ、こう在るべきなんだと…

そう思ってました…いえ、そう思う様にしてました。

でも、ある日ご主人様が、私に手を出さずに何処かに行ってしまわれた時、私は慌てて追いかけました。

そしたら、ご主人様が泣いておられたのです。

「何故だ‼」「どうしてだ‼」って叫びながら。

それを見た時、私は浅はかにも「ざまぁみろ」って思ってしまったんです。

可笑しいですよね、醜いですよね。」


「それは…」


俺が否定しようとした時、ロゼは涙を流しながら首を左右に振った。


「これがご主人様の選んだ道、ご主人様が選んだ結果なんだと思ってました。

でも同時に、何で私はこんな事をしているんだろう、こんなのが見たかったわけじゃないって思ってたんです。

答えなんて初めっから出てましたけどね。」


ロゼは涙を流しながら笑顔で俺をみると、また天井を見上げて話始めた。


「結局、私は何もしてこなかったんです。

ゼロ様にも為れず、人形にも為れず、ロゼにも為れなかった…

いえ…ロゼに成ろうともしてなかったんですね。

私は、ご主人様に見て欲しかった、認められたかったんです。

ご主人様を突き放しておきながら…我儘ですね。

結局、私は何もしてなかった、してこなかったんです。

ご主人様に認められたい、見て欲しいと思いながら…

自分は何もしていなかったって気づいたんです。

そしたら、私はご主人様を抱きしめていました。

自分でも分かりません、何でこんな事をしてるのか…

ただ、気づいたら抱きしめて、私も泣いていました。

これは私が犯した罪なんだ、私の過ちなんだと。

だから私は、このままご主人様が元に戻らなくてもいい、ただもう一度自分を見て欲しい、見て貰おうと頑張る事にしたんです。」


そう言いながら、ロゼは俺の顔を見つめていた。

俺はそっとロゼの顔を引き寄せた。

ロゼは俺の胸に顔を押し付けて話始めた。


「昨日、ご主人様の本気の怒り、殺意で刃を向けられた時は、訳が分からなくなりました。

何で、どうしてって、。

私は頑張ってきたはずなのになんでって…

もぉ~訳が分からなかったです。

頭のなかはぐちゃぐちゃで、正直何があったかなんてほとんど覚えていません。

ただ、ご主人様に「決別だ!」っと言われた時は恐怖を感じました。

怖かった!嫌だった!別れたくなかった‼」


ロゼは俺の胸で大声で泣き始めた。


「気づいたら、私はご主人様を刺していました。

ご主人様に抱きしめられ、何が起きてるのかが理解出来なかったんです。

自分がご主人様を刺していると。

自分がご主人様を傷つけてしまったと。

自分の剣に流れてくる血が、ご主人様の物だと理解した時、恐怖しました。

吐きそうになりました。

泣きそうになりました。

自分が何をしているのか、此処で終わるのかと。

嫌だった‼

怖かった‼

こんな終わり方なんて‼

嫌だった‼

自分の手でお別れするなんて…

私は…私は…私は‼

私はただ…初めて会った時に見た、ご主人様の笑顔がもう一度‼もう一度見たかったんです‼」


ロゼは俺の胸で泣き叫びながら、俺を何度も叩いた。

俺はロゼを抱き寄せると、そっと背中を撫でた。


「ご主人様、二度とあの様な事は成されないで下さい。」


ロゼは落ち着いてきたのか、俺の胸に顔を押し付けたまま、そんな事を言ってきた。

俺は約束出来なかったから、曖昧に「善処する」っと答えた。

ロゼは、俺の胸から顔を離し、涙を拭いながら

「約束してくれないのですね。」っと言って、笑った。

「あぁ~嘘は付きたく無いからな。」俺もそう言って笑った。


「酷い言葉です。」

「言葉とはそういうものだ。」


お互い見つめ合うとクスクスと笑った。


俺はロゼの前に置いたワインを下げると、新しくグラスを出してワインを注ぎ、ロゼの前に置いた。


「飲まないのか?」

「飲んで宜しいのですか?」

「その為に入れなおしたからな。」


それでも飲もうとしなかったので、俺は「どうした?」と聞いた。


「いえ、これはビーナス様が、ご主人様の為だけに御造りなったワインだと認識しております。」

「そうだな…。」

「私の様な末端な者が頂いてもよろしいのでしょうか?」


俺は空中をコンコンと叩くそぶりをして「此処にいっぱいある。」っと言った。

それを見たロゼは、ギョッとした顔をして笑顔に変わった。


「遠慮なく頂かせて貰います。」


「あぁ~。」


2人してワインに口を付け「はぁ~」っとワインの美味しさの余韻に浸った。


「始めて飲まして頂いた時にも思いましたが、やはり美味しいですね。」


「そうだな。」


そう、このワインは、ロゼと初めて食事をした時にも出していた。

ロゼは、その時からこのワインが特別な物だという事を知っていたのだろう。


「そう思うと、ご主人様の能力は凄いと思いますが、少し勿体ないですね。」


ロゼはグラスを目の前に掲げ、暖炉の光に当て、ワインの色を楽しんでた。


そう、このワインは、ビーナスが自らの手で葡萄を栽培し、自らの足で踏み潰し、自らの手で丹精込めて漬け込んでくれている。

毎年、「今年の新作です。」って、笑顔で言いながら贈って来てくれた物なんだ。

それが此処に来て、アイテムボックスがカテゴライズ化した事により、『ビーナスのワイン』として一つになってしまたんだ。


「本来なら、色んな味が楽しめたんだろうが…ビーナスには悪い事をしてしまったな。」


「そうですね。」


お互い顔を見合わせてクスクスと笑った。


「ロゼ…何故俺が眷属を造る時に、ゼロをベースにしてるか知ってるか?」

「いえ…ご主人様の好みだとしか…」

「まぁ~それもあるが、それだけじゃないんだ。」


俺は眷属を造る時、何時もゼロをベースに造っている。

好みもあるが、ちゃんとした理由もある。


「お前達眷属はな、産まれながらにしてゼロでありゼロなんだよ。」


「どうゆう意味でしょうか。」


「う~ん…言葉にすると難しいんだが、お前達の記憶、知識、技術等は誰が与えた物だと思う?」


「ご主人様では…ないのでしょうか…」


ロゼは、半信半疑になりながら答えた。


「半分正解で外れだな。」


「どうゆう事でしょうか…」


「確かに、お前達眷属の知識や技術は、俺とナビーが与えた物でもある。

ただ、そのベースとなってるのは誰か?」


「ゼロ様ですか?」


「そう、ゼロ自身が俺達から学び、経験し、記憶した物なんだ。

それは、ゼロ自身が自らの手で掴み取った物。

それをお前達は共有している。

ゼロでありゼロなんだと。

ある意味、残酷な事なのかもしれないな…」


「それは…」


「お前達は、産まれながらにして膨大な知識と技術を持っている。

それを知覚してしまうが為に、自分だと思ってしまうんだろうな。

でもそうじゃない。

お前達は子供なんだ。赤子なんだ。

だから俺は、お前達を造るときは、必ずゼロの子としてゼロに似せて造るようにしている。」


ロゼは黙って俺の顔を見ながら話を聞いていた。


「だからな、ロゼ、もう一度言わせて欲しい。」


「何をでしょうか?」


「俺は弱い。これからも沢山間違い失敗するだろう。

ロゼを産み出した時に、ゼロを求めていたのは本当に申し訳なく思う。

おそろく、それがロゼにも影響しているのだと思う。

でも、お前が居てくれたからこそ安心出来た。

お前が居たから安らぎを得る事ができた。

ありがとう。

だからこそ、もう一度俺を支えてくれないか?

俺は多分、お前に沢山迷惑をかけると思う。

もしかしたらゼロの面影を追う事もあるかもしれない。

だけど、そんな時はぶん殴ってでも止めて欲しい。

嫌なら嫌とはっきり言って欲しい。

だからロゼ。

俺と一緒に歩んではくれないか?」


俺は今の気持ちをロゼに伝えた。

一緒にいて欲しいと、間違ったことやゼロの面影も追うかもしれないと。

嫌なら嫌とはっきり言って欲しい。

ぶん殴ってでも止めて欲しいと。


「後、これも受け取って欲しい。」


俺はロゼに、薔薇をモチーフしたメイド服を渡した。

これは、俺がロゼの為だけにデザインした服だ。


ロゼは静かに立ち上がると、テーブルを挟んで俺の向かいに立った。


「ご拝命…受けたまわりました。

前回ご主人様の期待に応えられず、大変申し訳ありませんでした。

今度こそ、ご主人様のご希望に応えられるよう、精神瀬瑛お仕えさせていただきます。」


ロゼは泣きながら両手を前で組み、綺麗に頭をさげた。


「あぁ、俺もロゼに見捨てられないよう努力する。よろしく頼む。」


「はい!」


ロゼは涙を流しながら笑顔で答えた。

その顔は涙でぐしゃぐしゃで汚かった。

でも、とても綺麗で素敵な笑顔だった。


俺はこの顔を忘れないだろう。

いや、忘れてはいけないんだ。


こうして、俺達の長い長いすれ違いは幕を閉じた。


お互いに歩み寄る事をしなかったが為に、歪な関係になり歪んだ形で狂いだした。

最後に本音をぶつけ合う事で、少しはお互い理解出来ただろうか?


「しかしロゼ…お前、意外と泣き虫だったんだな。」


「み…見ないで下さい‼」


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