第11話 罰

俺はふと目が覚めた。

横にはロゼが寝ている。

ロゼを起さないよう俺はそっとベッドを出て服を着替えた。


家の外に出ると、憎っくたらしく大きな月が出ていた。

自分を見ているようで嫌いだ。

俺は煙草に火をつけ吹かした。

白い煙草の煙が夜空に消えていく。


「ご主人様、お身体を冷やしますよ。」


ロゼが家から出て来た。

あの時と同じだ。


「あぁ~起こしたか?」


「いえ」


俺は振り向く事なく話しかけ、ロゼは返事をしながら俺の横に立った。


「ご主人様は月が好きなのですか?」


ロゼがそんな事を聞いてきた。


「あぁ~嫌いだ。自分を見ているようで。」


俺は答えてロゼを見た。

ロゼは目を見開きこちらを見ている。


「だから終わりにしようと思う。何もかも。」


「何を言って…」


俺はアイテムボックスから刀を取り出し構えた。


「全ての始まりが此処なら、此処で終わらす‼」


俺は今だ目を見開き硬直しているロゼに斬りつけた。


キーン


ロゼの手には1本の短剣が握られていた。

どうやら、ガードが間に合ったらしい。


「っち」俺は舌打ちして距離を取った。

チンっと刀を納刀すると、腰を落として構えた。

今だ呆けてるロゼに飛び込み「抜刀連撃」を放った。

ロゼは我に返りギリギリのところで後方に転がりながら回避した。

すかさず俺は詰め寄り座り込んでるロゼに本気の上段切りをした。


ズバァァーン

大地を斬り、湖を割り、奥の森まで斬り飛ばしていた。

ロゼは横に転がる事で回避したようだ。


「ご主人様正気になって下さい‼」


ロゼが何か叫んでるが、どうでもいい。

俺はそのまま刃を返して逆袈裟斬りで斬りつける。

ロゼに回避された俺はそのまま刀を上段に構え、「兜割」


キャイィィィン

刃と刃がぶつかり合う金属音が響いた。


ロゼがよく使う細剣だ。

薔薇をモデルした美しい細剣。


しゃがみ込んでるロゼと鍔迫り合いになった。

俺はロゼの顔を覗き込んだ。


「此処が始まりなら、此処で終わらす‼」


「ご主人様…さっきから何を…」


ロゼは顔を歪め防御に徹する。

俺はそのままロゼを押し退け、連続で斬りつける。

ロゼは慌てて体制を立て直しながら剣戟をいなす。


何度も何度も。


キンキンキンキンキン

辺りには激しい剣戟の音が木霊する。


お互い距離を取り武器を構える。


「ご主人様‼ご主人様がさっきから何を言っているのか私には分かりません‼」

「黙れ!」

「此処が始まり、此処が元凶!」


俺は刀を突きつけて叫んだ。


「だから、お前を殺す‼」


俺はロゼに飛び込んでおもいっきり刀を振り抜いた。

ロゼはそれを両手で受け後方に後づさった。

俺はすかさず飛び込み連撃を繰り出した。


「お前は言った。私を殺して下さいと。」


「それは…」


ロゼは剣戟をいなし、躱しながら答えた。


「分かってる。代わりの自分は要らないからと。」

「分かってる。置いていくぐらいならと。」

「分かってる。ゼロの代わりじゃないと。」

「分かってる。自分を見てくれと。」

「分かってる。」


「だったら‼」


「お前が殺せと言ったんだろうがぁぁぁ‼」


俺はロゼに強烈な一撃を振るって押し退けた。

俺はそのままゆっくり歩き、ロゼに近づいた。


「その顔で、ゼロの顔で、俺に、俺に、俺にぃぃぃぃ!」


俺は上段に刀を構え本気で放った。「兜割」


ズバァァァァァァァァン


俺は刀を片手で軽く振りながらロゼに近づく。


「だから殺した。」


キンキンキン


「だから壊した。」


キンキン


「何千何万と。」


ロゼは何も答えない、答えなかった。


キン


「まだ殺せと?」


そう、今までも今も、何も抵抗しない。

身を守るだけ。

俺を止める事もしない。

止めようともしない。

ただ居るだけ。

だから。


チン

刀を納刀し構えた。


「居合一刀 一文字」


キーン

ロゼの細剣が切れた。


慌ててロゼは武器を取り出し構える


キーン

ロゼの武器を斬った。


キーンキーンキーン

何度も何度も。


やがてロゼはへたり込んでしまった。

辺りには無数の武器の残骸が転がっている。


「立て。」


ロゼはへたり込んだまま動かなかった。


「立てぇぇぇぇ‼」


ロゼは身体をビックっとさせるとおどおどと立ち上がる。


「武器を取り構えろ」


ロゼは武器を取り出し構えた。

だが、顔が俯き表情は死んでいた。

俺は歩いて後ろに下がり、ロゼと距離をとった。


「これで最後だ。」


俺は刀を上段に構えた。


「何もしないならそれで良い。これで俺とは決別だ」


ロゼはギョっとした顔で俺を見た。


「行くぞ!」


俺はロゼに飛び込んだ。

ロゼは動かない。

俺はそのまま上段から振り下ろした。

ロゼが叫びながら突っ込んでくる。


ズブッ

ロゼの剣が俺の腹を貫いた。


俺は刀を離しロゼを強く抱きしめた。

ズブブブ


「すまなかったロゼ」

「お前を見てやれなくて。」


「ご主人様…」


ロゼは俺の腹を貫いたまま抱きしめられている。

俺を貫いた剣からは血が伝ってポタポタと地面に落ちている。


「俺はお前を苦しめた。」

「ご主人…様…」

「俺はあの時、お前を抱き留めるべきだった。」

「ご主人様!ご主人様‼」

「だが…出来なかった…怖かった…。」

「離して!離して下さい‼」

「俺には…資格が…無い…と…決めつけて」

「早く‼早く‼離して下さい‼」

「これは…罰…だ…俺と…お前…の」


ドッサ


「ご主人様ぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」

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