第10話 罪の牢獄

「お早う御座います。ご主人様。」


気が付いた俺にメイドが挨拶をしてきた。


誰だ?


知らない天井に知らないメイド。

辺りを見渡せば知らない場所だった。


「ここは?」


俺は近くにいたメイドに聞いてみた。


「ここはご主人様の御家です。」

「そう…なのか?」

「はい。ご主人様が倒られ、私が部屋までお運び致しました。」

「そっか…」


どうやら俺は倒れて此処に運び込まれたらしい。

いや、彼女の話では此処が、俺の家みたいだ。


「覚えておられないので?」


「あぁ~」


何も分からない。

何も…

自分が誰なのかさえ。


「下にお食事の準備が出来ております。こちらにお持ちしますか?」


どうやら、食事が用意されているようだ。


「いや、行くよ。」


俺は身体を起こしベッドから出た。

ぐっら…

態勢を崩した俺をすかさずメイドが支えてくれた。


「大丈夫ですか?」


俺は「あぁ~」と曖昧な返事を返した。

メイドは「お支えします。」っと言って俺を支えて1階に連れってってくれた。


小さなテーブル席に案内された俺は目を疑った。

1階の部屋には辺り一面、小さな丸太が飾り付けてあった。

部屋の壁、大きなテーブルの上、家具の上や中。

ただ、奥の大きな暖炉には黒い小さな丸太だった。

余りにも異様な風景。


「ご主人様、お待たせしました。」


メイドが料理を持ってきてくれた。

何も入っていない透明のスープ。


俺は「あぁ~ありがとう」っとお礼を言ってスープをスプーンですくった。

スープを飲もうとスプーンを見ると紅い目玉があった。


「うあぁぁぁぁぁぁぁ‼」


俺はビックリしてスプーンを放り投げた。

辺りを見回すと、部屋一面に飾り付けられた首があった。

俺は這いつくばって逃げた。


知っている。

俺は知っている。

あの光景を。


嫌だ嫌だ嫌だ‼

ごめんなさい‼ごめんなさい‼ごめんなさい‼

許して‼許して‼許して‼

俺は何度も叫んで謝った。


誰かが近づいてきて俺を抱きしめた。

メイドだ。


「大丈夫ですよ。」


俺はメイドの顔を見た。

首が無い。



「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」


俺は飛び起きた。


どうやらベッドで寝ていたようだ。

隣には誰かが寝ている。

俺は起こさないようにそっとベッドから出た。


水を飲もうと1階に降りた。

1階に降りた俺は異様な光景を目にした。

部屋一面に飾り付けられた小さな丸太。

何処か見覚えのある風景。

辺りを確認していると2階から誰かが降りて来た。

確認すると、首の無い女性だった。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


悲鳴を上げ、腰を抜かした。

辺りを確認すると、一面首が飾り付けられいた。


「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


俺は這いつくばって逃げる。

首がしゃべる。


『『『「私を殺して下さい。」』』』


這いつくばりながら外に出た。


異様な光景。

出て来た建物と同じ建物が辺り一面に建っていた。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


俺は知っている。

知っている。

知っている。


後ろから誰かに抱きしめられる。


「大丈夫ですよ。」



「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


俺は飛び起きた。

隣にはメイドが寝ていた。

俺は起こさないようそっとベッドから出る。


あぁ…また繰り返すのかと。

何度も何度も。

俺はそのまま外に出た。

見慣れた風景。


俺は一本の短剣を取り出した。


何度も何度も自分の心臓を刺す。

何度も何度も。


憎い。

死なない此の身体が。


憎い。

頑丈な身体が。


憎い‼憎い‼憎い‼


何度も何度も自分の心臓を刺す。

何度も何度も。


「ご主人様おやめください‼」


メイドが走ってきて俺を抱きしめる。


苦しみの元凶。

だから首を…


撥ねれなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る