第7話 月

チュンチュンチュン。

良い朝ですね。

清々しい気分です。

日々の生活が嘘のようです。

俺は裸で窓際に立ち、全身で降り注ぐ太陽の光を浴びていた。


「ご主人様、馬鹿な事やっていないで早くお昼を食べて下さい。」


どうやら朝ではなく昼だったようだ。

昼の用意が出来たと呼びに来たロゼにせっつかれ、俺は着替えてダイニングに向かった。


ロゼと一緒に食事をしていると、ロゼが今日の行動確認を取ってくる。


「食事の後はどうなされますか?」

「まぁ~何時もどおり、身体の調整とアイテム確認だな。」

「かしこまりました。準備しておきます。」


とまぁ~ここ最近はこんなやり取りをしながら日々過ごしている。


え?

あれから何があったのかって?

特に何も無く、健全な毎日を過ごしているだけだが?


ロゼを抱いたあの夜から10日ぐらい「1ヶ月です。」ったってる。

朝お「昼です」起きると、食事をし身体を動かしたり、周辺の森を調査したりしている。

夜は食事をし温泉に浸かってから、ロゼとレッツパーティーを3~4日開催して、次の日は惰眠を貪る為にお休み。

次の日起きると、食事をし身体を動かしたり、周辺の森を調査。

夜は食事をし温泉に浸かってから、ロゼとレッツパーティーを3~4日開催して、次の日は惰眠を貪る為にお休み。


そんな生活を続けている。

健全だろ?「不浄です」

だそうだ。


まぁ~そんな生活を続けていて幾つか分かった事もある。


先ずアイテム関連

チートコードも含め、アイテム関連は酷い事になってる事がわかった。

上手く説明は出来ないが、アイテムボックス内にあるアイテムや装備品は、カテゴライズ化され統一し無限化していた。

どうゆう事かと言うと、石で例えるなら、小さい石・普通の石・大きい石と3つあった場合、アイテムボックスに入れると石に統一される。

小さい・普通等が無くなり、石に統一されチートによって最高品質の無限化に書き換えられるって言えばわかりやすいかな?

何が言いたいかと言うと、コレクション要素が無くなり、分類統一化された感じ。

装備品等も統一化され、ほとんどのコレクションが消えた…ガックシ


アイテムに関しては、一部性能が落ちていたり、使えなくなってたりした。

要は、蘇生薬等の復活系は全部機能していなかった。(動物実験の結果)


攻撃系等に関しては現実味が増した感じになってる。

MAP兵器みたいな感じは無くなりまぁ~こんな感じか程度になってる。


身体能力に関しては、何も変わらない・変えられない。

普通に生活する分には問題は無いのだが、意識的に力を入れたり無意識に力を入れると破壊する。


ロゼが言うには無駄に力が入り過ぎ、意識のしすぎらしい。

おかげで毎回ボコボコにされてます。

今もボコボコにされ地面とキスしてるからね…

ロゼとキスするより地面とキスをしてる方が多いのは気のせいだろうか?


そんな感じで一日を過ごし、夜ご飯を食べ温泉に入りレッツパーリーするのだ。




俺は夜中ふと目が覚め、ロゼを起こさないようにベッドから出ると、服を着て家の外に出た。


外に出た俺は月を見上げ、煙草に火をつけた。

相変わらず此処の月は綺麗で大きい。

ただ、満ち欠けが無いのが少し寂しい。


ロゼと過ごして1ヶ月。

今だ何も行動を起こさない俺にロゼは何も言わない。

何かをしなければならない訳ではないが、何もしないのもどうかと思う。

ただ、ロゼと過ごしていると満たされてると感じるのは、ロゼに感謝だ。

俺はそんな事を考えながら、月を見上げ煙草を吹かしていた。


「ご主人様、お身体を冷やしますよ。」


そう言って、ロゼが家の中から出てきた。


「起こしたか?」


「いえ」


俺は振り向く事なく話しかけ、ロゼは返事をしながら俺の横に立った。


「ご主人様は月が好きなのですか?」


ロゼがそんな事を聞いてきた。


「いや…ただ綺麗だなと。」

「そうですか。」

「ただ、あの月を見てると思うのだ、俺は帰る事が出来るのかと。」


そう、月を見てると何時も思ってしまう。

どんなに凄い能力があろうと、神如く力があろうと、俺は帰る術を知らない。

月もそうだ。

どんなに大きかろうと、手を伸ばせば届きそうなのに届かない。

結局何も変わらづ其処にあり続ける。

俺も月も同じだと。

ただただ同じ日々を過ごすのだと。


「私はあの月が嫌いです。」


ロゼは俺の顔を見ていた。

俺もロゼの顔を見た。


「ご主人様お願いがあります。」

「何だ?」

「ご主人様が帰られる際、もしくは居なくなる時は、私を殺し消去して下さい。」


俺はロゼが何を言ってるのかが理解できなかった。

いや、答えられなかった。

ただただお互いに顔を見つめ合い続けた。


本当は、ロゼを抱き留め「そんな事を言うな」って言うべきなんだろうが、俺には言えなかった。

なぜなら、ゼロと被ってしまったからだ。


ロゼは身体が冷えましたと言って家へ先に戻ってしまった。

俺は声を掛ける事も出来ず、ただ後姿を見送る事しかできなかった。


ただ、ロゼが放った刃が俺の心を深く深く抉って。






あれからどれ位経っただろう。

今は何も変わらず何時もどおり過ごしている。

変わった事と言えば、俺が一人になる時間が増えたことだろうか。

答えなんてあの日に出ている。

俺がロゼをゼロとして見ていたからだ。

そして、ゼロと同じ顔で「殺して下さい。」っと言われたからだ。

これは俺の罰なんだと。

安易にロゼを産み出した罪だと突きつけられた。


いや、ロゼはそんな事は思ってはいないだろう。

自分はゼロじゃない。ロゼなんだと…

だから一緒に行きたくないと。

代わりならいらないだろうと。


そう、あの時自分も連れてってと言わなかったのだ。

殺して、消してくれと。

俺は罪の念と罰の念にグルグルと思考をかき回されていた。


「ご主人様、片付けが終わりましたので、お背中を御流しします。」


何時もどおり、レッツパーリーする日々を過ごしていた。

ただ、そんな生活をしている中気づいた事もあった。


生命神だ。


何故、生命神が世界樹に赴き、自らの命を犠牲にしてまでこの世界に尽くしているのかが分からなかった。

ただ、ロゼに言われた事を考えていると合点がいったのだ。


そもそも眷属達に寿命という概念がない。

自ら命を絶つ事ができない。

眷属達が死ぬ時は、他の神々から討たれるか人間に討たれるか。

或いは、星と共に消えるかしかない。


ならどうすればいい?

人間に討たれる?

何百年・何千年待てばいい?

他の神々に討たれる?


他の星に攻め込む神が何人いるのだろうか?

ましてや廃棄された世界にまで足を運ぶか?


なら、自ら命を絶つ?

どうやって?


世界樹だ。

文字道理、世界の柱となって寿命を削ればいい。


最悪だ。


そしてロゼも同じだった。

この世界で自分を討てる者はいない。

この世界と心中するのも嫌。


ならどうする?

俺がするしかない。

だから殺してくれなのだ。


最悪だ。

反吐が出る。


俺はこの世界を嫌い神や人間達も嫌った。

だが、俺も同じ事をロゼにしていたのだと…

自分が嫌った者達と同じだと知ってしまった。


そう、だから何も言えず何も出来ずにだらだらと無意味に過ごしている。

あの日見た月の様に。

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