第5話 世界の真実 世界樹
あれからどれくらい時間がたったのだろうか。
太陽は沈み静寂な夜が訪れていた。
湖に映る月明かりが綺麗だ。
この世界の月は元の世界の月よりかなり大きく、夜なのに明るく感じる。
夜空に浮かぶ満天の星々は元の世界では見ることが出来ないほどすごく綺麗だ。
「天が落ちる…まさにこの事なんだろうなぁ~」
うだうだと考えていても答えなんて出ないし、答えなんてあるわけがない。
そんな事は分かってはいるんだが、一人になるとどうしても、うだうだと考えてしまう。
これは、俺の悪い癖だな…
俺は苦笑いを浮かべた。
夜風が冷たく、肌寒く感じてきた俺は寝転んでた身体を起こした。
「今夜の寝る場所作らないとだな…」
凝り固まってた身体を、ストレッチしながら寝る場所の事を考えていた。
俺はふと思った。
何気に此処はCreation Worldの世界と思い込んでいた。
しかし、もし管理者の試験なら、Creation Worldの機能が使えるのだろうかと。
俺は慌ててメニューを開いて確認した。
アイテムは…多分全部あるな。
装備品も…大丈夫。
魔法やスキルなども…さっきつかったから大丈夫だろ…
ステータスは…うん…カンストしてる。
ビルド機能は…
メニュー一覧からレシピを出して、試しにポーションを生成してみた。
すると、目の前に小瓶に入った赤いポーションが生成され1・2秒空中に留まった後、地面に落ちて割れてしまった。
生成は問題なしと…
コンソールは…
「コンソールオープン」
コンソール画面を呼び出すために呼んでみると、目の前に黒い画面が出てきた。
「って出るんかい‼」
俺は思わずツッコんでしまった。
まぁ~いいやと思い、俺はいつもどおり確認の為にお金の入力をしてみる。
脳波入力はダメと…
脳内で考えてる事は入力できないみたいだ。
音声入力は…
「player item 0000000F 1000」と言ってお金を入力してみる。
………
……
…
もう一度入力してみる…
……
…
何もおきなかった…
俺は「はぁ~」っと大きなため息をついて愕然とした。
コンソールが使えるなら色々と出来るんだけどな~と思いながらコンソールの画面を閉じた。
正直諦めきれないが、使えないものはしょうがないと思い、メニューを開いてビルドシステムを開いた。
ビルドシステム
Creation Worldの物作りの機能だ。
3DMAP機能搭載の3Dグラフィックデザインソフト。
詳しく説明すると、本が一冊書きあがるぐらい膨大な内容量になってしまうからはぶくが、簡単に言うと3DCGソフトだ。
詳しく知りたい人は検索をかけて自分で調べてくれ。
要は、何が出来るかと言うと、オリジナルのデザインが作れるって事だ。
一から作る事も可能だし、公式や有志の方々が創り上げたデザインなどをDLしてくれば使う事が可能になってる。
まぁ~簡単に説明すると、木を一本作るとしよう。
一から作るのはクソめんどくさいから公式からDLしてきたのを使うとして、MAP上に自分が配置したい場所に木を配置する。
XYZの三つの黄色と赤と青の矢印で大きさや奥行きを決めれば完成だ。
これで、豆粒みたいな小さな木からバカみたいな大きい木が作れるわけだ。
次にテクスチャーだ。
色・材質等の見た目だな。
一度、配置した木を取り込み、テクスチャーの画面を開いて、木のテクスチャーをクリスタルのテクスチャーに張り替えると。
クリスタルの木の完成だ。
これをコピーして大量に配置してやると…
クリスタルの木の森が完成するわけだ。
次にこれを素材・アイテム化した時は普通の木のままになっている。
見た目を変えただけだからだ。
なので、アイテム画面を開いて先ほどと同じようにテクスチャーを張り替え素材名をクリスタル樹と変えて新規で登録するれば、クリスタル樹の素材の完成だ。
だいぶ端折って説明したが、こんな感じで自分のオリジナルデザインが出来るわけだ。
ハマる人はハマるが、万人受けしない機能になってる。
こうして色々と設定しデザインなど出来るのがビルドシステムだ。
こうして作ったアイテムや建物等をレシピ化する事によって、素材を使って簡易的に作成出来るというわけだ。
俺はこの機能を使って、適当な場所にいつも使っている簡易拠点を作った。
見た目は大きな2階建てのログハウス。
簡易拠点なだけに、効率重視で造ってる。
一階はキッチンとリビングで奥の部屋は素材等を保管する保管庫と調合部屋・火事場の3つの部屋がある。
2階は寝る為だけの寝室となっており、外には大きな露天風呂と4面の畑が広がっている。
正直、今は飯を食べたり風呂に入る気もおきず、さっさと寝たかった。
俺は簡易拠点に入ると、そそくさと2階に上がりベッドに飛び込んだ。
お休みなさい…
って寝れるかぁぁぁぁ‼
人がうとうとと眠り始めた時に、急に脳内にこの世界の情報が流れてきた。
最悪だ…
何が最悪かって?
全部だよ‼
人が眠り始めた時に、いきなり情報を流し込まれたのもあるが、この世界がダメ過ぎた。
まずこの世界、名前は無い。
どうやら作成段階で失敗したらしくそのまま放置されたようだ。
次に世界設定だ。
まぁ~よくあるファンタジーものだ。
剣と魔法、スキルとLvを上げてガンガンいこうぜ!って感じだ。
それはまだいい。
何がダメかって?
この世界を創造した奴は、モンスター娘を造りたかったみたいだ。
ただ、安易に人とモンスターを掛け合わせて造ってしまった為、異物な顔の化け物が産まれてしまった。
ゴブリンで例えるなら、子供の身体をしたゴブリンゾンビみたいな顔だ。
上手く説明できないが、体は人に近く、顔は失敗してゾンビみたいに溶けてぐちゃぐちゃなのだ。
後、お分かりかと思うが、モンスターは全部雌になっている。
つまりどうゆう事かと言うと…くっころさんが男と言う事だ。
モンスターの集落にいくと、ゾンビ顔のモンスターと男が絡み合ってるんだ…
需要が無さすぎる…
この世界、モンスターに狙われるのが女性では無く男性なのだ。
次にこの世界の男女比は1:10となっており、女性が多い世界となってる。
これは問題ない。
ミソロジーも1:10だからな。
問題はこれだ。
この世界、失敗してるのはモンスターの見た目だけなので、放置されていてもそれなりにやっていけてたみたいだ。
ただ、300年前アンブジー教とゆうこの世界の宗教が暴走した。
当時、世界には王国・帝国・エルフ国・ドワーフ国・獣人国・魔王国と6つの国があった。
アンブジー教は世界中で普及しており、人々にスキルや信託などを託す義務を補っていた。
その為、各国はアンブジー教とは切っても切れない関係にあったのだ。
当時の教皇、第18代アンブジー教皇は強欲な人間で有名だった。
何かと理由を付けては、各国にお布施という名の賄賂を要求したり、物資や金品等を多く要求していた。
各国は渋々ながらも今代の教皇は外れだなと思いながら要求に答えていた。
それがいけなかったのだ。
教皇はエルフ国に「エルフ族は世界樹の利益を独占している。」等と言い出したのだ。
流石に、この発言に対して各国は反発しエルフ国も猛反発した。
これがいけなかったのか、教皇はここぞとばかりに「エルフ国は我々神の下部を侮辱した神敵である」っと謳い、5万の兵をエルフ国に向けた。
エルフ国はこれを迎え撃つ為に、2万の兵を神樹の森に配置した。
こうして、強欲な教会と世界樹の守りてのエルフの壮絶な争いが幕を開けた。
開戦当初、教会側とエルフ族は、エルフ国の外周にに広がる神樹の森で激しい攻防を繰り広げていた。
森の中で自由に動けない教会側に対して、エルフ国は森の中でゲリラ戦をしかけていた。
多少の被害が出てるものの、エルフ国は教会側に多大な被害を出すことに成功したのである。
これを知った教皇は大激怒し、「神敵討伐の名誉」を謳い、各国に義勇兵を強要した。
しかし、各国の王達はこれを拒否した。
だが、ここで問題が起きた。
各国の一部の貴族や軍がこれに賛同し参戦した。
その数約30万
それを知ったエルフ国は、30万の教会側の義勇軍を迎え撃つ為、世界樹の恩恵を使い大規模破壊魔法を発動した。
直撃を受けた教会側は約10万の死者を出す大被害を受けたのだ。
大規模破壊魔法を見せ、大きな被害を出せばこれで引いてくれるだろうと考えていたエルフ国は安堵していた。
しかし教皇は違った。
「世界樹の恩恵を我々神の下部に向ける暴挙を許してはならない」っと怒り狂い。
各国の街や村に強制的に義勇兵を募りだした。
集めた数約30万
残った兵と集めた兵合わせて約50万の大軍でエルフ国を包囲したのだ。
流石のエルフ国もこれは無理だと各国に救援を要請した。
しかし、王国・帝国は教会側を警戒してこれを拒否。
ドワーフ国・獣人国・魔王国は僅かばかりの手勢を率いて救援に駆け付けた。
その数約3万。
流石に真向からぶつかれば自分たちは一瞬で飲み込まれかねないと思い、教会側の背後に陣を敷き双撃戦をしかけた。
寄せ集めの軍など烏合の衆と言わんばかりに、着実に教会側を削っていったのである。
それに端を発した教会側は「もはや生かす価値無し」として、エルフ国の神樹の森に火を放ったのである。
森を焼かれたエルフ国は後退を余儀なくされ、着実に追い詰められて行き、教会側の手は城壁まで伸びつつあった。
追い詰められたエルフ国は、最後の頼みとして神々に救援をお願いした。
しかし、「人類の争いは人類で決着を付けるべき」っと神々はこれを拒否した。
神々に拒否されたエルフ国は、人類に裏切られ神々に見捨てられたと絶望した。
世界樹の守護を命じられ、それが完遂出来ない愚かさと、世界に裏切られた絶望でエルフ国は追い詰められていったのである。
強欲な人類に世界樹を渡すわけにもいかず、ならいっそう神々に自らの愚かさを思い知らせようと、エルフ族は自らの命を対価にその身を呪いの炎で身を包み世界樹に飛び込み世界樹を焼いたのである。
教会側がエルフ国を占拠したときには、既に世界樹は焼け落ちており、この争いに意味を見出せなかった。
世界樹を焼かれた事を知った教皇は大激怒し「神敵討伐の邪魔をした国が悪い」っと、残った手勢を率いてドワーフ国・獣人国を攻め落とした。
魔王国には監視を立てて攻める事はせずに大陸の端に追い詰めたままにした。
占拠されたドワーフ国・獣人国・エルフ国の捕らえられた住人達は「世界樹を焼いた罪人」と称して奴隷以下の扱いを受ける事となった。
また、教皇は占拠したエルフ国に首都を置き、占拠した3か国をアンブジー教皇国と改名し絶大な権力を手にしたのだ。
世界の半分を手に入れた教皇国、大半の住人や軍を削がれた王国・帝国、世界の端に追い詰められた魔王国っといった感じで現在に至るわけだ。
つまらないものを観せられた。
ここにきて疲れがどっときた。
俺は疲れた身体を起こし、一階に降り服をそこらで脱ぎ捨てて、疲れた身体を癒そうと温泉に入った。
温泉に浸かりながら俺は月を眺めながらこの世界の事を考えていた。
この世界が放棄された理由は、世界樹が焼け堕ちた為。
では、何故世界樹が無くなったら放棄されるのか?
理由は簡単だった。
世界樹の役割は魂の浄化だった。
死んだ人間の魂は世界樹を通じて浄化され輪廻に返り、また新しい命となって新たな世界に産まれ変わる。
所謂、輪廻転生だな。
その役割を失った世界は自動的に輪廻の輪から外れる様になっているようだ。
そしてこの世界、魂の浄化を失った世界は魂の浄化をされず、魂が消滅するまで記憶を残し転生を繰り返す事になるはずだった。
だがそうはならなかった。
生命神だ。
あの動乱の中、エルフの救援に向かおうとした生命神は他の神々に止められ救援に赴くことが出来なかった。
命を司る生命神は世界樹が無くなればどうなるかをよく知っていたのだ。
故に他の神々に強く訴えかけたが「世界樹が堕ちることは無い」っと笑ってはぐらかされた。
現実は非情だった。
全てに裏切られたと感じたエルフは自らの命を呪いの炎に変えて世界樹を焼き落としてしまったのだ。
これに危機感を覚えた神々は生命神を頼ろうとしたが、その時には既に生命神の姿は無かった。
姿を消した生命神に怒りを覚えた神々は「生命神は世界を見捨て、自分たちを裏切った神」っと称して生命神を貶めたのだ。
では消えた生命神は何処に行ったのか?
世界樹だ。
生命神は自分の部下達を連れて世界樹に赴き、自らの命と精神を削りながら世界樹の役割を担っているのだ。
哀れなものだ。
自ら貶めた神に自分達が守られている事を知らないとは…
また、自分を貶めた者達を自らの命を削って守護しているとは…
俺は頭の中をスッキリさせようと全身を温泉の中に沈めた。
「ブッハァ‼」
俺は、潜っていた温泉から身体を起こした。
「やってられるかこんな世界‼」
俺は温泉の中で仁王立ちし月に向かって叫んだ。
知らん‼何も知らん‼
何が好きに生きろだ‼
何が世界を再生させるも破壊するも自由だっだ‼
ふざけんな!
人の良心につけ込んで生命神を助ける気満開じゃねぇ~か‼
俺に世界を再生させる気満開じゃねぇ~か‼
ふざけんな‼
俺は吠えた。
月に向かって何度も何度も…
正直スッキリとはしなかったが、イライラは収まったと思う。
俺はドボンと温泉に背中から倒れ込むと身体の力を抜いて温泉に浮かんだ。
正直、何も知らなかったらこの世界で俺はヒャハー!俺TUEeeeをしてただろう。
多分、それだけのスペックはあるはずだと思う。
だが、知ってしまった。
知りたくも無い事を知ってしまった。
遠まわしに「この世界をなんとかしてくれ」って言われてるみたいで気分が悪い。
最初っから「勇者様この世界をお救い下さい」って言われる方がまだましだ。
俺はこの世界が嫌いだ。
神も住民も嫌いだ。
ならいっそう管理者の言うように自由に生きてやる。
この世界が再生しようが崩壊しようが、俺には関係ない。
自由に生きて自由に死んでやる!
気持ちの整理がついた俺は、温泉から出ると流石に疲れたのか眠気を覚えた。
俺はそそくさと2階に上がるとベッドに飛び込んだ。
ドゴーン
勢いよく飛び込んだせいでベッドが大破してしまった。
正直やるせない気持ちになった…
俺は渋々と隣の寝室に行き静かに横になった。
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