第1章 廃棄された世界
第4話 転生 廃棄された世界
「ん…んあぁ~」
俺は身体を伸ばしながら目を覚ました。
寝転んでいた身体を起こして、バイキバキに凝っていた身体を伸ばしながら辺りを見回した。
目の前には大きな湖があり周りは開けた草原になっていて、その周りをぐるっと囲む様に大きな森が広がっていた。
どうやら、森の中の湖にいるみたいだ。
心地よい微かな風を感じながら現状を確認する為、自分の服装などのチェックをした。
黒のロングコートは銀で装飾されており、着てる服は黒の某バンパイアハンターみたいなV系の服装だ。
髪は銀髪のロングで、耳を触れば大きく尖っていた。
そう、ハイエルフのデザインだ。
自分の顔を確かめるべく、湖に近づき水面を覗き込んだ。
白い肌に蒼い瞳、細長いつり目。
顔のディティールも大丈夫そうだ。
上手く反映されずに初期化されてたり、テェクスチャーが崩れてたらどうしようかと思ってたからな。
俺はそのまま座り込み空を見上げて右手を伸ばした。
ここは仮想現実世界。
現代のVR技術が五感に重きをおいて開発を進めているのは知っていた。
料理専用のVRソフト等は味覚等の再現に注力しており、ほぼ現実と変わらないとまでいわれているほどだ。
微かに感じる風と自然の香りに身を委ねてそっと目を閉じた。
これが現代のVR技術…
Creation Worldではあじはえなかった感覚。
Creation Worldはその名の通り、物作りに注視しており、五感などはほぼ皆無だった。
多少何かに触れてる感覚と熱い冷たい位の極端な感覚しかなかったからな。
もし、俺が他のゲーム等に手を出していれば、こんな感覚に早く気づけたのだろうか…
そう思いながら閉じてた目を開いて空を見上げていた。
「さてと。何時までも此処でのんびりとしていたいが、適当に身体と戦闘をこなしてログアウトするかな。」
俺はそう言いながらアイテムボックスから適当に武器を取り出した。
取り出したのは、ちょっと豪華な装飾を施した刃渡り4尺の5尺刀。
個人的に刀や曲刀の部類が好きでいつも使ってるやつだ。
戦闘スタイルに関しては言うまでもない。
某、悪魔ハンターのお兄ちゃんを模して作ってる。
居合や連撃等が大好きなのだ。
ちなみに高速戦闘も大好物でこれも取り込んだんだが…
これが大変だった…
レトロゲームみたいに、キャラクターを操作する分には問題がないのだろうが、VRは主観で操作する。
つまり、自分の反射神経がものをいうのだが…
光速の速さや音速の速さでプログラムを組んだら…
自分が壁のシミになっていた。
結局、2~3倍速が自分の限界だとゆうことがわかった。
そんな事を思い出しながら、俺は取り出した刀を鞘から抜き軽く振ってみる。
ヒュンヒュンっと刀の声を聴き動作に問題が無い事を確認すると、刀を鞘に戻した。
チンっと高い納刀の時の音を聴くと、俺は腰を落とし足を少し開いて抜刀の構えをとった。
目を瞑り意識を集中させ…技を放つ。
「抜刀連撃」
俺が最初に作った技。
0.5秒で10回の斬撃を繰り出す高速モーションだ。
何で0.5秒かって?
処理能力の問題らしい。
0.4秒以下だと攻撃判定がでず、0.5秒で11回以上の攻撃判定は反映されないそうだ。
つまり、0.5秒で10回の攻撃が最高値の設定らし。
これに関してはナビーがデータを取りながら教えてくれたので、俺には詳細はサッパリわからない。
戦闘のアシストモーションも効いている事を確認できたし、次は移動速度かな。
俺は森に目を向け、全速力で森に向かって駆けだした。
ドゴオォーン‼
駆けだしたと思ったら大きな音と共に衝撃を受けて俺は立ち止まっていた。
目の前には大きな木の幹があり後ろには湖がみえている。
正直何も理解できずにぼーっとしていると、目の前の大きな気がギチギチと音を立て後ろに傾き大きな衝撃音と共に倒れた。
俺はそれをぼーっと見ながら途方にくれていた。
しばらくして要約理解が追い付いたのか俺は大きな声で「ハアァァァー‼」と叫んでいた。
いやいや…だってそうだろ。
さっきまで立ってた場所は湖の畔だぜ?
一瞬で100m近く離れてる森の木にぶつかって止まるとか…はぁ~
これは修正が大変だな…
取りあえず歩く。
問題なし。
ジョギング。
問題なし。
走る。
かなり速い。
早めに走る。
ドゴオォーン‼
また木にぶつかって止まった。
こりゃ~ダメだ。
一度戻って修正して貰わないと。
俺はナビーに報告するべくログアウトした。
…
……
………
ログアウトした。
…
……
………
「ログアウト」
たまに、設定が初期に戻されて音声認識の時もあったからな…
…
あぁ~手動でログアウトするのか…
確かメニューの設定の…
無いじゃん…
いやいやいやいや落ち着け俺。
こんな事は何度もあったはずだ。多分。
とりあえずここはナビーに…
って居ねぇじゃん!
そうだよ…
ロビーでログを観察してるんだった…
観察…
そうだよ!
観察してるんだよ!
だったら、今のこの状況理解してるはず!
「ナビー!ログアウト出来ないからなんとかしてえぇぇぇ‼」
俺は空を見上げて叫んだのであった。
あれからどれくらいの時間がたったのだろうか?
ぼーっと空を見上げながらそんなことを考えていた。
真上にあった太陽も、今は傾きもう直ぐ日が沈むだろう。
そうなれば、静寂な夜が訪れる。
そんな事を考えながら無意味に時間だけを消費していた。
「はぁ~これからどうしよう…」
ナビーとは連絡もとれず、あちらからも連絡は無い。
メニュー画面をくまなく探してもログアウトボタンがない。
それどころか、設定・オプション機能が無かった。
これはあれか?
小説やアニメなんかでよくある転生・転移ものか?
いやいや…もぉ~40過ぎのオッサンだぜ?
あれらは高校生か…
オッサンだったな…
そんな馬鹿な事を繰り返しずっと考えていた。
それもこの一枚の手紙が原因だ。
俺は一枚の羊皮紙みたいな手紙を取り出し眺めていた。
「始めましてCreation Worldをプレイしてる諸君。」から始まり長々と説明書きがされていた。
要約するとこうだ。
管理者と名乗る者がCreation Worldのプレイヤー達に試験を行うというものだ。
その内容が、この廃棄された世界で好きに生きろだ。
廃棄された世界。
輪廻から外れ、世界の枠組みから外れた世界。
文字どおり廃棄処分された世界。
じゃ~廃棄された世界が何なのかって言うと、失敗作だ。
創造において失敗はつきもの、理想とかけ離れた物・完全な駄作等、そんな世界がごまんとあるそうだ。
そんな場所に俺達を放り込み好きかって生きてるのを評価するらしい。
世界の再生や破壊・まったりやのんびりと暮らす等好きにしろだと。
その結果を基に、報酬内容が決まるそうだ。
報酬内容は分からないが、何故俺達なのかは分かった。
Creation Worldだ。
厳密に言えば、Creation Worldのアナザーワールドシステムが原因みたいだ。
管理者曰く、アナザーワールドシステムは世界創造の一旦らしい。
それを人類が創り上げ使用してることにより、管理者側の領域に足を踏み入れたそうだ。
そこで、世界創造の一部を担ってる一部のプレイヤーに今回の試験を行い、見極めを行うそうだ。
そんな事が事細かに書かれていたのだが…
これが、運営側が準備したこのゲームの世界設定なのか、現実ではありえないが、本当に管理者と名乗ってる存在が準備した試験なのかが分からないのだ。
何故かって?
思い出して欲しい。
俺は、Creation Worldのストーリーモードをテストプレイする為に、別サーバーに準備された世界にログインしている。
そして、その内容は「好きに生きろ」だ。
羊皮紙みたいな紙に書かれてる内容と一致するのだ。
管理者の場合は、ログアウト出来ない今の現状と第三者目線で書かれた内容だったからだ。
ただ、もう一つ理由を挙げるならば…
俺は地面の土を掴み手のひらからサラサラと地面にこぼした。
そう、いくら何でも現実的すぎるのだ。
始めはまったく気が付かなかったが、砂の一粒・草木の一本一本まで、あまりにもリアルすぎるのだ。
さらに、これに物理演算を組み込もうものならば…
余りにも無謀…仮に出来たとしたら、どれだけのスペックが必要なのか…
そんな事が、先ほどから俺の頭の中をグルグルと駆け回ってるのだ。
もし、この世界がゲームなら、いずれログアウトできるだろう。
しかし、それが違ったら…俺は此処で一生を過ごす事になる。
確かに俺は、現実世界で転生や転移等に強く憧れ、願った事など多々ある。
正直、現実なんてつまらない。
だから俺は、ゲームに逃げた。
だから、ミソロジーを創りあげた。
あれが俺の理想の世界。
だから心残りなのだ。
家族や友人達よりも。
俺の理想の世界。
もう、戻ることが出来ないのかと…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます