ソウルフ=トラウマ
「ちょっとナツ、いい加減に機嫌直して・・・ほらお魚焼けたよ!」
「・・・」
「ナツゥ~」
スライムに二度目の敗北を味わった俺は心神喪失状態にあった。
スライム一匹すら倒せない俺がこの先魔王を倒せるのか・・・
否、不可能だ。
せっかく、苦労して魔法を覚えたのにスライム一匹すら倒せないなんて・・・雪菜、兄ちゃんそっちに帰れなさそうだ。ごめんよ。
「もぅ~!!ウジウジしてナツらしくない!!」
「俺らしいてなんだよ?」
「そんなんだと、本当に魔王討伐できないよ?」
「いや、スライムにすら負ける俺には魔王討伐なんて・・・」
「もぅ!!この焼きたての魚でも食え!!えい!!」
ピナが俺の口に焼き魚を放り込む。
魚はピナが先ほど川で取ってきてくれた物だった。
炭火で焼かれた魚は香ばしく家でいつも食べてる物とは別次元でおいしかった。
「美味い・・」
「少しは元気出た?・・最初は勝てなくて当然よ!それに魔力切れを起こさなければナツが勝っていたと思うしそんなに落ち込まなくていいのよ!!」
「・・・それもそうか、ありがとう」
確かにその通りだクヨクヨしていても前に進めない。今はピナが焼いてくれた魚を有難く頂いこう。
「ご飯を食べて寝たら魔力も回復するわ。日も傾いて来てるし今日はテントを張って早めに寝ましょう。」
「分かったが・・テント?」
「あぁ~・・。言うの忘れてたわ、神様からナツの冒険に役立つ便利道具を色々と貰って来たのよ。テントもその内の一つ。」
ピナは異空間から折り畳まれたテントのフレームを取り出す。
テントかぁ・・・確かに旅には必要不可欠な物だな。
でも・・・これはなんだ?テントと言うのはピラミッドの様な形をしたなんかスピリチュアルな造形な物だと思っていたが。
これはただのバカデカい折り畳み傘?
「え?ナツってテント知らないの?」
ピナが少し引き気味で聞いてくる。失礼な奴だ。
「バカにしてるのか?知っているに決まってるだろ。」
「じゃあ。これなんだ。」
ピナは先程出したバカデカい折り畳み傘に指を指す。
ホントに人を馬鹿にするのも大概にしてもらいた。
ただのバ・・・
「バカデカい折り畳み傘ではありません」
「ぬ!?」
「はぁ~・・、ホントにアナタ今まで何していたの?これはテントよ。」
「はい?」
バカを言え、テントと言うのはこんな物ではなくもっとピラミッ・・・
「ナツって、時たま馬鹿すぎる時があるわね。テントをそのままの姿で持ち運んだら大きすぎて不便でしょ?だからこんな感じで折り畳んで運んでいるの。」
何だって。こんな見た目のものがあのピラミッドの様な形になるのか?
「ナツって、以外と世間知らずなのね。どうせ引きこもってゲームとかして来たんでしょ?。」
「・・・」
「沈黙は答えね。・・-全く、私はこの体だからテントを組み立てる事は出来ないけど組み立て方は教えれるから一緒に組み立てましょ。」
「ありがとう」
「いいのよ!」
ピナの指導のおかげで無事にテントを組み立てる事が出来た。
しかしなぜ、ピナはテントの組み立て方を知っているのだろうか?
まぁ、無事に立てる事が出来たからいいか。
組み立ては意外と簡単でガ〇ダムのプラモデルを組み立てるよ圧倒的に簡単だった。
しかし、テントはもっとピラミッドの形やと〇がりコーンの様な造形をしていると持ったが・・・意外と家に近い形をしているんだな。
初めての挑戦でテントを立てるのに時間がかかり、気がつけば辺りが真っ暗になっていた。
テントを組み立てた事により程良い疲労感から眠気を感じた、俺は大きなあくびをする。それにつられてピナもあくびをした。
「ふわぁ~、程良い眠気が来たわ。」
「だな。」
さてといい時間だし今日は早めに寝ようと思ったその時、遠くの方から獣の遠吠えの様な声が聞こえた。
「い、今の声は?」
「あぁ、ソウルコメルウルフね。意味は命を食べる狼ね、長いからソウルフと呼んでるは。」
なに命を食べる狼って・・名前からして激やばモンスターじゃん!!!
そうだ忘れていた、今、俺たちは魔物が生息する森の中にいるんだった。
こんな所で吞気に寝ていたら魔物に襲われて、睡眠が永眠に変わってしまう。
ヤバいじゃん、俺、、ヤバいじゃん。
いや、俺だけじゃなくてピナもか?。
「私は最悪ナツを見捨てて飛んで逃げるわ。」
「
「あはは、冗談よ。それにソウルフは初級モンスターで凶暴性が低い魔物よ、滅多に人前に出ないし、こちらから危害を与えなければ何もしてこないわ。・・・でも、私は苦手だけど。」
「はい?」
ピナが苦手な魔物だって?
「ソウルフは魂・・・いや、ここでは魔力と言いましょう。魔力が好物なのね。」
「魔力が好物?」
「そう、天界から初めて地上界に来た時にソウルフにたまたま襲われたのね。当時の私ソウルフの生態を理解してなくてね。捕まって、魔力を吸収されたのよね。さてここで問題、ソウルフはどうやって魔力を吸収すると思う?」
どうやって・・そんな事を言われても分かるはずがない。
もういいや、適当に答えよう。
「舐める。」
「正解。」
当たるのかよ、・・・いや、待ってよって事はピナ
「全身を隈なく舐め回されたわ。」
「うわぁ~!、キッツ。」
あまりの衝撃に言葉が詰まる。
俺の体の大きさなら舐められてもペットとの戯れ程度だがピナの体の小ささで自分より何倍も大きい魔物に舐められたらと考えると・・・ダメだ、気分が悪い。
「ホントにあれはキツかった。臭いわ、汚いは、涎で体中べとべとするわ。・・・でも中でも一番嫌だったのは想像絶するくすぐったさね。」
「くすぐったさ?ピナってくすぐったいの弱いのか?」
「・・・メチャンコ弱いわ。その時に初めて知ったけど。舐められてる間ずっと笑いっぱなし。逃げようにも体格差があり過ぎて逃げれない。その上ソウルフは魔法が効かないの、逆に物理攻撃には弱いわね。スライムとは逆、だから私は苦手なの。」
そうか、それは苦手でも仕方ない。
だが、そんなにくすぐったい刺激に弱いのに・・・なぜピナはスライムに襲われてる俺を助ける時に助けたお礼として足を舐めさせようとしたのだろうか?
「うぅ~、なんかその方が下僕感があっていいなと思ってたけど、冷静に考えてみたら、そんな事されたら笑い死ぬ・・・」
バカだろ・・・
それにしてもピナはくすぐりが弱点かぁ・・・よし、今度ムカつく事言われたら仕返しにくすぐってやるか。
「そんな事したら、ナツの命はないと思いなさい。」
ヤバい、目がマジだ。・・・
惜しいがココは手を出さないのが吉だな。
「あぁ、思い出したら体がこそばゆくなってきたわ。もう寝ましょう。」
「そうだな、・・・でもソウルフは何とか出来るとしても他の魔物が危害を加えない保証はないだろ。朝起きてスライムに窒息させられました。とかは嫌だからな。」
「・・・そんなに嫌なら結界魔法で周辺の魔物が寄り付かないようにする?」
「それが出来るんだったら、最初からしてくれよ。」
「・・・てへっ。」
「可愛くないぞ」
ピナが結界魔法をかけてくれた。明日の朝まで半径7メートルは魔物が入れない結界らしい。
結界と言っても目に見えないし、触れないしで実感が持てないで不安だったけど、ピナの言葉を信じて眠りに着く事にした。
テントの中は大人が3人程が余裕で眠れるぐらいの広いスペースがあった。
俺はそのテントに簡易的な布団を敷き、その中に入る。
布団の中で眠ろうとしているとピナも俺が眠る布団の中に入ってくる。
理由を尋ねると「布団の方が暖かいから!」と吞気に答えてきた。・・・全く
俺は仕方なピナを布団に入れて共に眠りに着いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ー次の日の朝ー
「ぜってぇ~、ピナとは一緒に寝ない。」
朝起きて川で顔を洗いながら、決意した。
【絶対にピナとは一緒に寝ない】と・・・
寝相は悪いわ、いびきをするわ。散々だった。
その上顔を何度も蹴られ睡眠の妨害をされた。ピナは力が弱く痛みはそんなに無かったが起きてしまう程の衝撃はある。その影響で俺は少し寝不足であった。
そんな俺の状況とは逆に気持ち良さそうに眠るピナを見て腹が立つ、今もまだテント内でスヤスヤと熟睡していた。
全く、いい御身分な事だ。
「はぁ、・・ピナの眠り方ってアイツとそっくりだな・・・」
俺が済んでた世界でも同じ経験をした事があった・・過去の記憶を思い出そうとしたが、急いで思いでに蓋をした。
◆数時間後
「死ねぇぇ!!」
あの後、眠りから覚めたピナと軽い朝食を取った後、二人で村探しを始めた。
途中で魔物たちにも数回襲われたがピナから教えてもらった魔法や神からもらった身体強化のおかげで苦労はしたが何とか倒す事が出来た。今も初級モンスターのジュエルラビットもなんとか倒す事が出来た。
「・・・ナツ、魔物を倒す時に【死ねぇぇ!!】って言うの止めない?品がないわ。」
「品が無いのはピナの寝相じゃぁ!!」
「ごめんって、私も疲れてたのよ。・・・まぁ、丁度いい頃だしお昼にしましょう。」
「それもそうだな、少し早いが昼食にするか」
食事を取る事を決めた俺らは近くにあった食事が出来そうな場所に移動して途中で集めた薪に火を着けて調理を始めようとしたその時・・
近くの茂みでガサガサと物音がした。
俺はまた魔物が来たと思い、追い払うために今日の朝にピナから渡すの忘れていたと言われ受け取った短刀を片手に茂みに近づく。
全く・・・こっちは寝不足と空腹でイラついてると言うのにスライム以外ならぶっ殺してやる。
と思ったが茂みから出て来た魔物?は俺の予想とは違う見た目をしていた。
大きさは30~40㎝ぐらいで四足歩行、体は短い毛で覆われ白を基本とした色の犬の様な見た目の魔物が出てきた。俺らの住む世界で例えると白い柴犬?・・その愛くるしい姿から一瞬魔物かと疑った。
「なんだこの柴犬?可愛・・・」
「ぎゃぁぁぁ!!!」
可愛いと感想を言い切る前に魔物の姿を見たピナが急に発狂して俺を盾にする様に後ろに隠れた。
「急にどうした?」
ピナの様子は顔を真っ青にして恐れるような表情を浮かべていた。
ピナがこんなに恐怖してるって事は・・まさか、この魔物ヤバいのでは?
俺が思ったヤバいの理由・・・それは可愛くてヤバいという意味ではなく、ピナでも恐怖するほどに強い魔物かという意味だ。
しかし、ピナのこの怖がり方は俺が考えてる様な怯え方と違うような?
ピナなら強敵が出てきたら真っ先に俺を置いて逃げると思うし、それに俺を盾にする必要もないだろう。
俺は少し疑問に感じた。
「あああ、あれはソウルフよ!」
「・・・ソウルフ?、あれが。」
ソウルフ、それはピナが唯一苦手な魔物、
しかし、ピナの話ではもっと巨大で凶暴化と思っていたけど・・・こんなに可愛い姿だったのか。
「ナツ、何とかしてえぇ!!」
「何とかと言っても。」
俺がどうやってこの状況を解決するか考えていたらソウルフが【キャン】と少し高めの声で可愛らしく鳴いた。
その姿に俺はキュンとなる
「キャン」
「キュン!!。ヤバい可愛い」
「ぎゃぁぁぁ!!!」
俺の反応とは逆にピナは悲鳴をあげた。
さっきからうるさいなこの妖精は。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・もう許して、これ以上舐めないで・・・」
「おい、ピナ?」
ピナは自分の体を抱きしめながら酷く怯える。
その姿にさすがの俺も少し心配になる
完全にトラウマスイッチが入ってるな。
どんだけ辛かったんだよ。
ダメだ。この状態だとピナは使い物にならなしここは俺が何とかしよう。
ピナの話だと魔法は効かない代わりに物理は効くみたいだ。普通に戦えば勝てると思うが・・・ダメだ、こんな可愛らしい子を倒す事は俺に出来ない。
とりあえず撫でてみるか。
そう思い俺はソウルフの頭を撫ぜる為に手を伸ばす。
その時だった。
「ナツ・・今の頭は触っちゃダメ!!」
「え?」
ピナが静止を命じたが反応が遅れ、俺の手がソウルフの頭にピトっと触れた。・・その瞬間、俺の腕をソウルフは凄まじい勢いで嚙みかかる。
俺の腕はソウルフの歯と歯に挟まれて壮絶な痛みが走った。牙で皮膚を裂かれる痛みと強力な噛む力により骨まで痛みを感じた。
後からピナに聞いたんだが、ソウルフは基本的に危害を加えない大人しい性格のらしい。・・しかし、いきなり頭や、背中などの死角を触れられると攻撃と勘違いして噛みついて来るそうだ。
ソウルフは温厚な分、キレたら凄まじく、嚙みついた部位は嚙みちぎるまで決して離さないらしい。
なのでソウルフを触る際はまず目の前に手を置いてから、自分の匂いをかがせてからこの匂いの人は良い人と思わせる・・-そうしないと、今の俺みたいになる。
この世界の常識らしい、、
しかし、そんな常識を知らなかった・・・
「ぎゃぁぁぁ!!痛てぇぇぇ!!離せクソ犬ぅぅぅ!」
「ぎゃぁぁ!!ナツが負けたぁぁ!!もう、終わりよ!!また1時間以上も舐められるんだぁぁぁ!!!いっその事殺してぇぇl!!」
一時間も!!そりゃトラウマになるは・・・てか俺もこのままだとソウルフがトラウマになってしまう。
なんとかしないと・・・
ソウルフを俺の手から引き剝がそうとする・・がしかし、ソウルフはまるで親の仇を捕まえた様に決して手を放してくれなかった。その逆に噛む力は増していく。
「ぎゃぁぁぁ!!離せぇ!!」
「いやぁぁぁ!!おしまいよぉぉ!!」
俺らが互いに発狂するなか、再び近くの茂みが揺れて何かが出てきた。
俺は涙で滲む視界で誰が来たか確認した。
「お兄ちゃんたち、何してるの?」
そこに立っていたのは小さな一人の女の子だった。
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