初めての魔法

「それじゃあ実際に魔法を使ってましょう。」


ピナ先生の魔法教室実践編が始まった。


「ナツのステータス的には炎魔法と岩魔法。隠し味程度の水魔法に適性があるけど、水魔法は1だから適正なしとして考えるわ。で今回は一番適正数値が高い炎魔法を教えていくわ。」


炎魔法、てことはピナがスライムを倒す時に使った炎の玉ファイヤーボールを俺が使うって事か・・


あの魔法を俺も打てるようになるのか?実感が湧かない。


「大丈夫よ、魔法の天才、ピナ先生がついているわ。安心しなさい!!」


・・・不安だ


「おい!!」

「うそだよ、頼りにしている、ピナ先生。」

「・・・ならいい、まずナツには炎の球ファイヤーボールを使いこなせる様になってもらうは。」

炎の球ファイヤーボールか・・・分かった。」

「じゃあ、さっそく炎のファイヤーボールの出し方について教えるはね」



「炎のファイヤーボールを出す為には、まず初めに体内魔力を炎に変える必要があるわ。

そしてその炎を球体にして敵向けて放つ。簡単でしょ?」


ピナの放つ魔法が敵に見立てた岩に当たる。

これが魔法の使い方と言わんばかりにドヤ顔をしてくる・・・俺としてはどうやって魔力を炎に変えるか教えて貰いたいのだけれど・・・


「簡単でしょと言われてもどうやって魔力を炎に変えたんだよ?」

「あぁ~、そうね、その通りね・・・」


コイツはバカか?


「ちょっと、バカって言わないでよ・・・全く、見てて」


ピナはそう言うと左手の人差し指を一本立てる。


「魔法とはイメージなの、炎を作り出すイメージね・・・まずは魔力を指先に集中させる。そして、集中した魔力に火を付けるイメージで点火」


ピナの指先から小さな火が燃える。


「同じ原理で水なら水、草なら草、岩なら岩、氷なら氷のイメージをするの」


指先にあった火は水、草、岩、氷の順に変わっていく。


器用にやるなぁ。


「えへへ、凄いでしょ!

まぁナツの場合はまず体内の魔力を操る所から始めましょう。少し指を貸して。」


俺の右手の指をピナの赤ん坊の様な小さな両手が握りしめる。


「誰が、赤ん坊じゃい!」

「べ、別に悪い意味で赤ん坊と思ったわけじゃなくて・・」

「本当にぃ~?」


ジト目でこちらを見て来る。


今回は本当に悪い意味で赤ん坊と思ったわけではなく逆に赤ん坊の様に小さく可愛い手でなんか守りたくなるなぁと思っただけなんだけどな。


「・・・私を守るのは魔法を使えるようになってからね。」

「はい。」


確かにその通りだ。


「じゃあ、あなたの指先から全身に魔力を送り込むは、だから目を閉じて感じてね。」

「分かった。」


俺は目を閉じ、魔力を感じる。


指先に何か暖かい物を感じた、それは虚構の様にも感じたが・・・しかし確かにそこにあった。

その曖昧で不明瞭な物を俺は魔力と認識した。


魔力が右手の指先から腕、胸?、肩、頭、腹、足、と巡り再び右手の指先に戻ってくると魔力が消えた。


「・・・ナツ、今どう感じた?」

「何か暖かい物が全身を巡った様な感覚がした。」

「そう、それが・・その暖かい物が魔力よ、今のは私の魔力だけど今度はナツの魔力を自分の意思で指先に集中させて。」

「俺の魔力?」

「そう、体内魔力は貯蔵庫の様な物が体のどこかにあるのね。私の場合はお腹の辺りにあるのね、ナツはどう?体のどこかに魔力を感じない?」


俺の中の魔力?

さっき、体中を魔力が廻った時、どこかに違和感を感る場所があった。俺は意識を集中させて自分の魔力を探す。


「・・・・・・あった。俺の魔力は胸の位置に溜まっている。」


ピナの魔力が全身を巡った時に胸の辺りで魔力が異常に熱く感じた。これって・・・


「そう、魔力共鳴よ。私の魔力とナツの魔力が触れ合って共鳴したのよ。」


魔力共鳴、だからピナは俺の魔力をどこにあるか感じさせる為にあえて魔力を体に送り込んだのか。


「じゃあその魔力を指先に集中させて。」

「集中?どうやって?」

「う~ん?そうね、魔力を動かす感じなんだけど・・これに関したは私も説明の仕方が分からないわ。こう、がばぁぁって感じ?」


魔力をがばぁぁ?ダメだ分からん。

とりあえずやってみよう


胸の辺りにある魔力を俺のまずは右手に集中させるんだ。

いや、無理だろう。


どうやってやればいいんだ?がばぁぁってやるか?

「・・・がばぁぁ。」

「ぷっふ~、」


思はず口からがばぁぁと声が漏れた。それの姿が滑稽に見えたのかピナは吹き出し笑う。

こっちは真剣にやっているのに無礼千万な奴だ。


「く、、ふふ、ごめんね、あまりに面白くて。・・・ふぃ~、そうね、これは人それぞれだからナツがやりやすい様にやりなさい。大丈夫よ、私がいるから必ず出来るわ。」


・・・全く、やってやるよ!

ピナが言うには動かすイメージだ・・だが俺にはそのイメージが分からない。

体内にある何かを動かす・・・ダメだ、俺の魔力はまるで根を張った様にビクともしない。


考えろ、考えるんだ、動かす事が出来ないのなら・・・・



「・・・・あ、来たわ、魔力よ!!」

「出来たのか?」

「うん!すごいわ。どうやったの?」

「どうって・・・動かす事が出来ないなら魔力を膨らませるイメージでやったら・・・ー出来た。こう、じわぁ~と」


そう、動かす事が出来ないなら魔力を全身に広げればいいんだ。

こうして俺は魔法を指先だけではなく全身に広げるイメージにしたら、なんか出来た。


「それって・・魔力拡張ね、魔力移動より難しい事してるわね。」


魔力拡張って言うのか。なるほど魔力を移動させる事より難しいのか・・・

なるほど。なるほど。


「「なんで拡張が出来て移動が出来ないんだろう?」」


ピナと再び意見が合う。・・・もしかして俺とピナは意外と気が合うのかもと思い始めた。


「よし、じゃあ最後のステップよ。魔力を火に変えるのよ」

「火に・・どうやって?」

「そうね、私は無意識にやっているけど蝋燭に火を灯すイメージでやってるわ・・・大丈夫、魔力を火に変えるのは簡単だかすぐに出来るわ。大切なのはイメージよ。」


大切なのはイメージか・・・良し、やってみよう。


魔力に火を灯すイメージ・・・・・ダメだ、イメージが湧かない。

ピナが言っていた事を思い出せ、大切なのはイメージ。


元の世界で火を付ける時どうしていた?考えてみよう。

ライターに火を付ける時はどうした?

薪に火を付ける時はどうした?

考えろ・・・火を付ける時に大切な物は・・・


それは【種火だ。】


俺は指と指をパチンと弾いた。



「ナツ・・・ナツ、目を開けて指先を見て。」


俺は閉じられた瞳を開き目の前の火を見つめた。


「これって?」

「そう、ナツの初めての魔法ね。」


これが俺の初めての魔法だった。

小さくて今にも消えそうな火は確かに暖かく、儚かった。


「おめでとう、ナツ」


以外と魔法って・・面白いな。






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