初めての戦闘

「・・・村、無いわね。」

「だなぁ。」


村を探し3時間程歩く・・-が辺りには村おろか人の気配すら無かった。


(あのゴミ神、どんだけ辺鄙な土地に飛ばしたんだよ。)

「ああ〜、また神様をゴミって呼んだ。」

「呼んでねぇよ、思っただけだよ。」

「心を読める影響で嫌でも、考えてる事が聞こえるのよ。」


そういえば、ピナにはそんな設定があったな。

ただのマスコットだと思っていた。


心を読める能力かぁ・・・可哀想だな。


人の心が読めるって事は良い事も悪い事も全て聞こえてしまうんだろうな。

【感謝、労い、好意】などの善意な声を聴こえる分には良いが、【妬み、嫉妬、恨み】なのど悪意の声も聴こえるのは可哀想だな。

しかも、ピナの言い方からして常に他人の心声が聴こえて、制御が効かないのだろうな、


ピナも苦労して来たんだろうな。


「ナツって、私の能力をそう捉えるのね。」

「どうした急に?」

「いや、私の能力を聞いた人は大体は気味悪がるか、拒絶するかの2択だから・・・ナツみたいに思ってくれる人いなくてね、正直に言うと嬉しい。」


ピナが体をモジモジとさせて恥ずかしさに悶えていた。


そうか、心が読めるって事は俺の考え事も読めるのか。

なんかこっちまで恥ずかしいな。


「俺は思っただけだ、勝手に聴くなよ。」

「嫌でも聞こえちゃうのよ・・・ーでも、ありがとうね!」

「別に、礼を言われる程の事は。」

「でも私は嬉しかったわ。」


俺の気持ちを勝手に読んで、勝手に感謝して、

本当に俺は何もしてないのだが

でもまぁ、素直に礼を言われるのはいい気分だな。


「だからナツがさっきまで心の中で考えていた事はからかわないであげるわ、」

「さっき考えてた事・・・・はびゃ!?」


俺はここに来てから一つ心配事があった。それは俺が病院で眠っている間に妹や親などの家族に俺の部屋サンクチュアリに立ち入られる事だ。


自室には家族にバレたく無い秘密があった。

普段はバレない様にクローゼットの奥にパンドラの箱の如く封印している・・-が少し調べればすぐにバレる。


それがバレる事は俺は絶対に避けたい。

今までの俺の冷静沈着のクールビューティーなキャラが崩れてしまう恐れがある。


「クールビューティーって・・ぷ、あははは」

「笑うな!」

「えぇ~?、でも別にバレてもいいじゃない、そんなに恥ずかしい事?。」

「嫌な物は嫌なんだよ。」


クソ・・・よりにもよってピナにバレるなんて最悪だ。

何かとイジって来そうだ。

まぁ、バレたの物は仕方がない授業料だと思う、だが今後はピナの前ではいらない事を考えないでおこう。



更に、足を進める、

気が付けば俺らは森の中を進んでいた。


どれだけ足を進めてもやはり村は見つからずに無駄な時間を過ごしていた。


てか、ピナはナビゲーター役でここにいるなら村の一つでも案内してもらいた・・・いや、それが出来たらこうして迷ってるはずもないんから多分ピナも村の場所が知らないんだろうな。


じゃあ、なんでナビゲーターで来たんだよ!


「本当に村・・・-ってか人の気配すらないわね。」

「なぁ、本当にピナに道案内を任せて大丈夫なのか?てか、この世界の地理を理解してるのか?」

「・・・ダイジョウブダヨ!?」

「その返事は心配しかないんだが。」

「大丈夫、大丈夫!地理は理解しているから。」


地理は理解している・・・何か違和感が生まれる言い方をするな。


そう思った・・・その時、茂みから一匹の生き物?が現れる。


俺はそれを見て一瞬生き物かと疑問に思った。

なぜなら見た目が生き物では無かったから、その見た目はまるで地面を転がる水の塊の様に、柔らかそうでかつしっかりとした形を保った少し歪な球体だった。


一度、妹が自由研究で【つかめる水】と言う物を作っていた事があったが・・・まさにそれを大きくしたような形だった。


「なぁ・・ピナあれってなんだ?」

「あぁ、あれは最弱魔物のスライムね!」

「スライム!あれが!」


初めてリアルのスライムを見たぁ・・・確かに言われてみればそうだなこれがスライムか。

意外とデカいな!40㎝ぐらいあるんじゃないか?

でもスライムなら俺でも倒せそうだ!


「よし、初めての魔物討伐だぁ!」

「おぉ、頑張れ」


ピナが応援する。


ふっ・・応援されずともスライムぐらい瞬殺してやる。

俺らの世界でもスライムは序盤で出て来るモンスターの中でも一番弱いモンスターで有名だ。


有名ゲーム、ドラ〇エではひのきの棒を一振りするだけで倒せる、そんな雑魚敵に俺が負けるはずもない。


「よぉし!、とりあえずか!」

「あぁ、スライムは殴っても無駄よ?」

「はい?なら、ひのきの棒で叩けばいいのか?」

「ひの・・えっ?なんて?・・・ー何か知らないけど、スライムは物理攻撃は一切効かないわよ!」

「はい?」


衝撃の真実を知る!

物理攻撃が一切効かない?俺の世界の常識が全て覆える。


「スライムは水に魔力を集めて動くジェル状の魔物なの、だから物理攻撃は一切効かないの。ほら、水を殴っても切っても意味ないでしょ。それと同じよ!」

「なら、どうやって倒すんだ?」

「スライムの倒し方は簡単、適当な攻撃魔法を当てれば倒せるわ、炎の初級魔法、炎の球ファイヤーボールでもぶつけなさい。」

「なるほど、魔法か・・・分かった!」


敵のスライムを睨み臨戦態勢に入る。

お相手もやる気溢れるように体を震わせている。


ふふっ、弱いながらも一人前・・・いや、一魔物前に威勢がいい、これからお前は俺の経験値となるのにバカな奴だ。


「さぁ、来いよスライム!いっちょ遊んでやるよ!」


その時スライムが勢いよく俺に向かい飛びだし、体が宙を舞う。


ふっ・・やはりスライムは知能が低い魔物の様だ。

知性が低いから最弱なのだろう。

安易に空中に飛び出しあがって、どうやって俺様の攻撃を避けると言うのか。

戦闘の基本は相手に隙を見せない事だ。

しかしこのスライムくんの行動は悪手すぎる。

空中では急な方向転換も出来ない、かっこうの的でしかない。


俺に向かってくるスライムに手を向ける。


「ふふ、これでもくらいな、ファイヤーボールぅぅ!!」


俺はファイヤーボールを唱える・・がしかし炎の球疎か火の粉すら出てこない。


そこで俺は一つ重大な事に気が付いた。


「魔法の出し方を教わってなかった」


スライムが体が俺の顔面に当たる。


これが俺が異世界に来ての初めての戦闘、そして初めての敗北だった。












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