第19話 カリオストの最後
「馬鹿な…呪いの力が……」
カリオストは混乱していた。
本来なら呪われた品物の山から吸い上げた呪いの力を使い、ダンジョン化させた館と生み出したモンスターでホーバス率いる冒険者と兵士を迎え撃つ筈だった。
それがホーバスたちが突入するタイミングとなった時にこれまで溜めこんでいた呪われた品物が全て消失したからだ。
カリオストの正体はカースイーターと呼ばれるモンスターだ、呪いの力を操り様々な事が出来る。
例えば呪いを取り込み自身を強化したり建物の簡易なダンジョン化、呪いのモンスターを生成するなど。
その力を買われテロ組織『魔王軍』でも幹部のリッチーの右腕を務めていた。
しかし本人が取り込み操れる呪いの力には限度がある、だからこそ館の地下に大量の呪われた品物を溜め込んでいたのだ。
いざという時の力の貯蔵庫として。
それが…このタイミングで全て消えるだと!? 一体何がどうなっていると言うんだ!
人間共が突入してきた、呪いの力が殆ど消え、せっかく複雑に作ったダンジョンの内部も元の館に戻り用意したモンスターも大半が消滅したかかなり弱体化している…。
「こ、このままでは……!」
カリオストの予感は直ぐに的中する。
ホーバスの指揮の下、突入した冒険者と兵士たちが数で弱体化した館のモンスターを次々と倒していく。
そして10分とかからずにカリオストが潜んでいた館の最上階にある大部屋へと雪崩れ込んでくる。
「商人カリオストらしき男を発見!」
「カリオスト! 貴様にはバッカニアの街を混乱に貶めた容疑が掛かっている!」
「素直にお縄につけぇえっ!」
冒険者や兵士がカリオストに向かって怒鳴るように言葉を放つ。
「だっだだ黙れっ薄汚い人間共が! 貴様らなどここで皆殺しにして我が呪いで動く人形に作り変えてやるわ!」
カリオストの元の計画ではジョゼを餌にしてこの館に集まったバッカニアの街の戦力を呪いの力でそっくりそのまま手に入れる計画だった。
その戦力を使いバッカニアを占領し、そこの人間も全てカリオストの能力で支配することでバッカニアを人間の街だと装いつつ『魔王軍』のテロ活動の拠点とするつもりだったのだ。
当然、幹部のリッチーや幾多の同胞を手にかけたダンジョン『白砂の大寺院』への報復もだ。
『魔王軍』からの援軍が到着すれば行いダンジョンも手入れる。
カリオストの頭の中にはそんな未来が描かれていた、それが会ったことすらないバイスやプニ、そしてエドリゴの暗躍によって全ての計画が台無しにされたのである。
ヤケになったカリオストが正体を現す、カースイーターとなったカリオストは黒いぼろ布を纏った三メートル程の身長を持つ人型、長い腕が左右合わせて四本あり肌の色は薄青色で黄色の瞳を持つモンスターとなった。
その姿を見た兵士は声を上げる。
「カリオストはモンスターだったのか!?」
「馬鹿が、本物のカリオストなどとうの昔に殺しているに決まっているだろう!」
「このっ化け物め!」
カリオストは自身の中にある呪いの力で黒い四本の剣を生み出して迫る冒険者と兵士たちに抵抗する。
しかし数は冒険者や兵士たちが遥かに多い、そしてジョゼの一件からカリオストが呪いの力を扱う事は読まれていた。
ホーバスが動向させていた冒険者や聖職者たちの『解呪』の魔術や『破邪』の聖魔術がカリオストに無数に叩き込まれ、カリオストが弱体化すると冒険者の剣や魔術が、兵士の槍や矢が次々とカリオストに襲いかかる。
「おのれ人間……人間風情がぁあっ!」
カリオストは最後まで人間への憎しみを叫び、最後は首を切り飛ばされ倒された。
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