第20話 古代魔術
「いや~なんとかなりましたね」
「ええっ今部下からテレパシーで報告が来ました、カリオストの方も無事に人間たちが倒してくれたそうです」
「そうですか、よかった……それで人間側に被害は?」
「怪我をした者はいたそうですが死者はいないみたいです」
エドリゴの話を聞いて内心胸をなで下ろすバイス。
バイスたちは『白砂の大寺院』の内部にいた、場所がどこなのかバイスには分からないがかなり広い空間だった。
床、壁、天井が白く、白い柱が綺麗に並んで天井を支えている。
寺院といってもその内部はダンジョン、かなり広く、広大とも言える程だ。
呪われた品物の山はバイスたちの目の前にあり今はエドリゴの部下であるローブを着込んだ魔術師たちの部隊がその呪われた品物に封印を施そうと働いていた。
余りにも大量の呪われた品物故に全ての呪いを消し去るには相応に手間と時間がかかる、一度封印して安全を確保し、後日に時間をかけて処理していくつもりなのだ。
バイスたちは完全にひと仕事終えた気分だった。
「バイスさん、本当に助かりました。バイスさんに出会わなければ僕が何かをする前に事が動いて大変な事になる所だったですよ」
「それは自分たちもですよ、エドリゴさん程の魔術師の助けがなければ何も出来ませんでした。本当にありがとうございました」
お互いにお礼を言い合う、そこにプニプニとした存在がバイスの頭の上に現れた。
(も~~プニだって頑張った! ずっとバイスをテレパシーで応援してた!)
「ふふっプニも頑張ったとテレパシーで……」
「そうなんですね、ではその応援のお陰で僕たちの作戦は成功したのかもしれませんね」
そう言うとエドリゴはプニにもお礼をいった、プニは満足そうにプルプルしている。
エドリゴはバイスとプニを食事に誘おうとする。
「今回は我がダンジョンも色々とありましたが、なんとかひと段落つきました。良ければバイスさんとプニくんにはお礼も兼ねて何か奢らせてくれませんか?」
「ダンジョンの食堂でですか?」
「ここでも人間の街でも構いませんよ、どこか行きたい所があればそこで。無ければこのダンジョンの食堂でオススメの物を…」
そこまで話をしたタイミングで突然エドリゴの部下が悲鳴を上げた。
バイスたちは咄嗟の事で声をした方を見る、そこには倒れた魔術師と直ぐ近くに灰色の霧のような物が現れていた。
何だあれは…魔力の気配を感じるけど、妙に薄いと言うか…。
プニが剣に変身してバイスの手に、エドリゴも杖を出して構える。
すると灰色の霧から声がした。
「オノレ…人間…そしてダンジョンの裏切り者共が……」
「この声は……リッチー!?」
「リッチーって確か、ダンジョンマスターに倒されたって言う?」
灰色の霧が形を変えていくと痩せこけた人間…いやミイラに見える何者が現れた。
しかしその姿は依然として霧のように薄らとしていて感じる魔力もとてもリッチーとは思えない微々たるものだ。
「あれは恐らくリッチーの残留思念です、憎しみに囚われた亡者の最後の足掻きですか見苦しい…」
「黙れ! 貴様らダンジョンが我ら『魔王軍』に協力すれば容易く人間を滅ぼせると言うのに、貴様らがそれを拒むから……!」
「戦争になればどれだけの無関係な命が危険に晒されかも考えないテロリスト共に力を貸すわけがないでしょう?」
エドリゴの言葉にリッチーは忌々しげに表情を歪めたが直ぐにニヤニヤと笑い出した。
「……ならばもう終わりだ、このダンジョンも地上の人間たちも全て……全て絶望の果てに滅ぼしてやる!」
リッチーは最後の力を使い施される途中だった封印を破壊した。
そして呪われた品物の山に強力な魔術を発動する。
「……来たれ滅びよ……『アニメイトカオス!』」
リッチーが使ったのは今は失われた筈の古代魔術の一つだった。
リッチーは古代魔術を発動すると塵となり消えた。
その最後など誰も気にも止めていない、何故なら最後に発動させた魔術によって呪われた品物の山が吹き飛んでバイスたちも吹き飛ばされたからだ。
そしてなんとかバイスたちは起き上がると奇妙な事に気付いた。
おかしい、呪われた品物の込められた呪いの力が……消えている?
バイスが感じた異変をエドリゴやその部下たちも直ぐに感じ取る、エドリゴは直ぐにリッチーから攻撃を受けた部下を他の部下に運ばせ、自身は何が起きたのかを調べ始める。
バイスもそれに同行し、呪われた品物の山があった方へと進んだ。
するとそこには…。
「ッ!? バイスさん、駄目です。これ以上進んではいけないっ!」
「エドリゴさん…あれはなんですか?」
(かつてないヤバイ気配をビンビンに感じるよバイス!)
バイスたちの視線の先には漆黒の球体が浮かんでいた。
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