第16話 魔王軍…嫌いだな
「あの…本当にすみませんでした、何しろこの街に来たのが始めてで人の多さにもなれず…」
バイスとフードの男は人がいない建物の裏に移動して話をしていた。
フードの男の言葉にバイスは「そうなんですね」と相槌をうつ。
そしてバイスは本題を切り出した。
「……ところで貴方、人間じゃないですよね? かなり高度な魔術で変身していますが分かりますよ」
バイスの言葉に固まるフードの男、そしてバイスは自身の手の平の上に乗っているプニを見せた。
プニはプルプルしていた。
(プニは変身の達人、余裕で看破してしまった!)
そう、バイスがフードの男の魔術を見破れたのは身近にプニという『擬態』の能力を持つ存在がいたからだ。
プニの存在を理解したフードの男はバイスの方を見る、人がいない事は既に確認済みなのでバイスはプニに頼みタムの時と同様に頭だけ元のスケルトンの姿に戻った。
「まさか貴方もモンスターだったんですか……」
「ええっ自分はスケルトンのバイス、旅をしていてこの子、スライムのプニの力で人間に変身してたんですよ」
「成る程、そう言う能力を持つ仲間がいるのなら僕の魔術を見破れる訳だ…」
「それで話を戻しますけど、貴方は人間じゃない。その上かなり強いですよね? そんな存在がどうして人間の街に?」
バイスの問いにフードの男は自身に使った魔術を解き、本来の姿となって答えた。
「僕の名前はエドリゴ、ゴブリンメイジでダンジョン『白砂の大寺院』の幹部の一人をしている者です」
ダンジョンの幹部って…予想以上に大物が出て来たね。
エドリゴが魔術を解いた姿は緑色の肌をした禿頭、瞳の色は金色で目鼻は人間より大きいなゴブリンの顔をしていた。
ゴブリンは大陸全土で見かけるモンスターだ、しかし稀に能力の高い個体も生まれやすくゴブリンだからといって弱い存在と言う訳では決してない。
現に丁寧な態度のエドリゴだが、ダンジョンの幹部と言う言葉が本当ならその気になればバッカニアを壊滅させる事が出来る魔術の一つや二つは習得している筈だからだ。
そんな存在が何故この街に来ているのか、バイスは知っておきたかった。
エドリゴの話を黙って聞く。
「…実は今、この街の人間たちが手を出そうとしている相手と言うのが我がダンジョンに喧嘩を売った狼藉者たち『魔王軍』の仲間らしいのです、僕の主であるダンジョンマスターはその者を始末してこいと僕に命じられました」
「それならこのままほっておけば人間の冒険者が…」
「いえっ恐らくそうはなりません。あの人間たちは罠にかかっています、先日その者がこの街に送った刺客も単なる餌です、人間たちが向かう建物は既にダンジョン化していてモンスターの巣窟です。入れば人間たちは全滅するでしょう」
とんでもない話だった。
あの数の冒険者や兵士が全滅するとなるとその即席のダンジョンが保有する戦力は相当な物だとバイスにも分かった。
「一体どこからそれだけの戦力を…」
「呪われた品物です、あの館に巣くう者は呪いの力を操れるらしいです。だから冒険者に用意させた呪われた品物をダンジョン化させた建物にさらに秘密裏にこの街にも大量に運ばせています」
「まさか『魔王軍』の目的はバッカニアを呪いで溢れさせる事が目的なんですか?」
「恐らく、ダンジョンマスターにもそれに協力するようにと高圧的な態度で求めて来ましたので…」
エドリゴの説明によるとカリオストの目的は別荘にて集まった冒険者と兵士を返り討ちにして呪いで洗脳する、そして一気にダンジョンのモンスターを外へと解き放ちバッカニアを占領し呪いで溢れ返させるつもりらしい。
その後はカリオストと同じ『魔王軍』を始末した『白砂の大寺院』のダンジョンマスターと部下のモンスターたちへの報復を狙っているだろうとエドリゴは言った。
テロ組織って本当に自分たちの主張だけを押し付けてくるかはたちが悪いよ、それに関係ない人たちをどれだけ巻きこむつもりなんだ。
テロ組織『魔王軍』の詳しい目的などバイスには知った事ではない、しかしこのまま知らない顔をして呪いをバッカニアにばら撒かれるなど冗談じゃないと怒りを覚えた。
(この街、ご飯は中々美味しかった。呪われたらそれがなくなってしまうそれは許せない!)
(そうだね、エリーみたいに知りあえた人もいる。このまま見捨てたらこれから先の旅も気分が悪いものになってしまうよね…)
バイスはエドリゴに協力を申し出た。
「自分もこの街やダンジョンに呪いがばら撒かれるなんて嫌です、ですので少し協力させてくれませんか?」
「協力はありがたいのですが、貴方に何か出来るんですか?」
「ええっこれでもダンジョンで働いていた過去があります。その『魔王軍』の残党の計画を頓挫させるくらいなら簡単ですよ…」
バイスは余裕のある表情で語った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます