第15話 強そうなのに…
ジョゼたちが事件を起こした翌日、商人ギルドにバイスはいた。
ジョゼとの戦いに手を出してしまったのでエリーをはじめとした人間に戦っている所を見られ過ぎた事を少し悩んでいた。
冒険者でもない商人が杖と魔術で呪われた冒険者と戦っていたのを見られ、そしてバイスの実力に目を付けた冒険者がいて冒険者パーティーから勧誘を受けていた。
無論バイスは全て断っているが、中にはしつこい者もいて困ったのでそそくさと他の商人が多くいるギルドに逃げ込んだのだ。
この前は夜だったからまだなんとか…けど今回は明るかったし、何より目立ち過ぎちゃたからな~。
普通の商人で街に溶け込みたいバイスからすれば変に目立つのは避けたかった、なら人間同士の戦いなど無視すれば良いのだがそれも出来ない。
(バイスはお人好し、けどそれがバイスだとプニは知っている)
(ゴメンねプニ、取り敢えず今は人に会わないようにするよ)
しばらくは宿とギルドを往復して、商売は少し我慢しようとバイスは考えながら受付カウンターへと向かった。
受付嬢のエルスとバイスは世間話をし始めた。
「バイスさん、実は昨日の一件で領主のホーバス様が重い腰を上げましたよ」
ホーバスはこのバッカニアを治める領主だ、それなりの年齢の男性らしいがバイスは見たことはなかった。
「領主様が?」
「はいっ昨日の呪われた冒険者たちはカリオストが専属で雇っていた冒険者たちでしたからね、今まではのらりくらりと調査から逃れてきたカリオストの尻尾をついに掴まえたっと言う事です」
「そうですか、けどカリオストもこの街の商人なんですよね? ギルドはカリオストと関係とかないんですか?」
「カリオストも駆け出しの頃は商人ギルドに登録してました、それから成功するとギルドと縁を切って自力で商人として成り上がっていったらしいです…もっともあまりいい話は聞きませんから縁を切ってくれてよかったのかも知れませんけどね…」
商人ギルドにカリオストを庇うような貸しも借りないって事なのかな、まあそれなら今回は僕も首を突っ込まなくて良さそうだ…。
バイスがそんな事を思っているとエルスは更に話を続けた。
「それでホーバス様が冒険者ギルドに依頼を出した上に自らの騎士団を率いてカリオストの別荘に向かい包囲するそうですよ、何でもそのバッカニアから離れた別荘で色々としていたと調べはついていたらしくて」
「領主様もこれまで遊んでいた訳じゃなかったと言う事ですね、どれくらいの人数で包囲するかにもよりますがいち商人が抵抗出来るとも思えませんね」
「そうですね、カリオストもこれで終わりでしょう」
そんな話をしながらバイスは時間が過ぎるのを待つ事にした。
そして次の日、バイスが商人ギルドに向かう途中で冒険者ギルドの前を通った。
すると数十人の冒険者と鎧を着込んだ騎士らしき数十人の人間が集まっていて、その人だかりの前に一人の人間がいた。
長い白髪と白い髭を生やした老人だ、しかし背筋がピンとしていて着込んだ鎧も様になっている、腰の剣も業物だとバイスは見た。
老人には戦う者の熟練した空気があった。
あの人が領主のホーバスさんかな、かなり強そうだ。
ホーバスは冒険者と騎士団の前で何やら話をしている、詳しい内容は分からなかったがこれからする行動、つまりカリオストの別荘に向かいそこを包囲する事を話しているんだろうとバイスは考えた。
冒険者の中にはエリーと仲間の冒険者もいたのでバイスは彼女たちの無事を願った。
そして再び商人ギルドに向かい冒険者パーティーへの勧誘を避けるように動く。
勧誘なんてしてないで少しはエリーたちみたいにこの街の為に働いてほしいね。
バイスは昨日の勧誘してきた冒険者を思い出しながらそんな事を思っていた。
そして商人ギルドに向かっていると妙な人間を発見する。
フード付きのローブを着込み、そのフードを深く被っていてあまり顔が見えない。
背丈は小人族のバイスよりある程度高いが成人男性よりは低い小柄な男だ。
しかしその気配は生半可な実力者ではないとバイスは直感した、恐らくホーバスや実力のある冒険者よりも強い。
……しかしフードの男はキョロキョロと何やら自信なさげにおどおどしていた。
強い筈なのだがその挙動不審さにバイスは違和感しか感じなかった。
何より…。
この人、魔術で人間に化けてるけどモンスターだよねっどんなモンスターが変身してるのか分からないけど、ここで暴れられたらシャレにならない。
ここはどこか人気のない場所に移動してもらって話をしよう。
「あの~すみません…」
バイスはフードの男に話しかけ、少し話をして場所を移した。
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