第10話 迷惑なテロ組織『魔王軍』
「『魔王軍』ですか…」
『魔王軍』、魔王と呼ばれるリーダーを筆頭に人間を殲滅し、この大陸から根絶やしにすべしと考える過激な思想のテロ組織である。
そのテロ活動とは人間の街への攻撃などがあるが、裏では多くの人間以外の種族と繋がっていると噂されている組織だった。
中でもエルフやドワーフ、小人族以外の人間と好んで交流をしない、或いは見た目が奇異だと理由なので人間に一方的にモンスターと呼ばれている種族に接触しその規模は日に日に大きくなっていると言われている。
その全容は謎が多く、バイスが以前勤めていたダンジョンのダンジョンマスターも警戒をしていた。
「俺たち鼠人も人間から言わせればモンスターらしいからな、いちいちこうやって魔術で人間に化けないと街中にも入れねぇ」
「それは僕とプニもですよ…けどそれならなんでわざわざ人間の多いここに?」
「言ったろ、ダンジョン側の事情で人間に迷惑をかけてるって。俺はその様子を確認しにきただけさ」
「そうでしたね、それでその事情について詳しく教えて貰えたりします?」
「……仕方ねぇな、普通なら話さないんだが事がもう起こってるからな。いいぜっ教えてやるよ」
タムは歩きながら話を始める。
「俺はあの『白砂の大寺院』のダンジョンで商売をしていてな、聞いた話だとあのダンジョンのダンジョンマスターは『魔王軍』の連中と接触してるらしい」
「『魔王軍』とですか…」
ダンジョンマスターにはダンジョンを支配するだけの力がある、何よりダンジョンコアを使えば多くのモンスターを生み出したり倒されたモンスターを復活させたり出来る。
『魔王軍』から見ればとても魅力的な人材だと思えるだろう、しかしダンジョンマスターがテロ組織に与する理由がバイスには思いつかなかった。
何故ならダンジョンマスターはダンジョンを運営する存在だ、そしてダンジョンには冒険者、つまり人間が来ないと成り立たない。
人間とモンスターが戦争状態になれば人間も冒険をしてる場合じゃないとなり、ダンジョンに来る人間は確実に激減する。
つまりダンジョンマスターにとって迷惑なテロ組織でしかない『魔王軍』と組むメリットがなかった。
バイスの予想は当たっているらしくタムは「まっ向こうから一方的に何やら言ってきてるだけらしいがな」と呆れ顔で付け足した。
「但し厄介だったのがこのテロ組織の息が掛かったヤツが何人かダンジョンの従業員として『白砂の大寺院』に潜り込んでいたのさ」
「う~わ」
「『魔王軍』のクソ共がよくやる手だよ、無理矢理ダンジョンと近くの街の関係を悪化させて争うように仕向ける、どのみちそんな真似をすれば、いずれは自分たちの方が敵と見なされる事くらい分かりそうな話だけどな…」
「過激なテロ組織って勝手に代弁者を気取って好き放題に暴れてる輩も多いですからね」
「全く、こっちは静に商売をさせてくれりゃ良いのに……あっんでそのテロリストのお仲間たちがどっからか集めた呪われた品物をダンジョンの出土品って事にして大量にダンジョンに持ち込んで、それを人間たちの手に渡るように仕向けてるって訳だ」
「……成る程」
大体の事情が見えてきた。
つまりあの大量の呪われた品物はテロ組織『魔王軍』のテロ活動の一つだったと言う訳だ。
『魔王軍』の思想にも目的にも興味はないバイスだったが、バッカニアやダンジョンで変な真似をされて巻き込まれるのは勘弁して欲しかった。
「……ちなみにその『魔王軍』の息の掛かった従業員は今はどうなってるんですか?」
「既にダンジョンマスターが処分したってよ、確かにソイツらを裏で動かしていた『魔王軍』の幹部、アンデッドマスターのリッチーも始末したって聞いたね俺は…」
リッチー、ヴァンパイアやデュラハンと並ぶアンデッドモンスターの最高峰の一角、そんなのまで『魔王軍』の構成員をしてるのか…。
その事にも驚くバイスだ、そしてそんなのを既に始末している『白砂の大寺院』のダンジョンマスターの実力にも流石としか言えなかった。
普通なら面倒事が起こるならさっさとバッカニアからおさらばする選択肢もあっただろう、しかし問題の『魔王軍』の実力者が消えたのならこれらの事件も収束すると思えた。
「それじゃあもうダンジョンから呪われた品物は……」
「ああっあの聖職者たちには悪かったがあれ以上は呪われた品物が出土する事はないだろうから俺も元の商人として活動出来そうだ…」
「そうですか、ならお互いに人間にバレないようにしましょう」
「全くだな、お互いに平和に過ごしたいね~」
ジョゼやカリオストの事も杞憂だったのかも知れないとバイスは考える、ダンジョンから呪われた品物が消えればバッカニアの状況も良くなるだろうと思う事にした。
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