第11話 カリオスト

 そこはバッカニアの街から少し離れ、開けた土地に建てられた洋館。


 カリオストが所有している別荘だった、暫く前に商人や庭の手入れをする人間を全て解雇したので大分庭や屋敷の中も荒れてきている。


 無論、洋館の主であるカリオストはそんな事は気にしてもいない。

 そもそもカリオストは薄汚れた場所に抵抗感が全くなかった。

 カリオストは人間ではない。


 そもそも人間のカリオストはとっくに殺され、カリオストに成りすましたモンスターがジョゼたち冒険者を集めたり呪われた品物を集めているのだ。


 そのカリオストの洋館の地下は元々は小さな物だったが、『空間拡張』の魔術を使いその規模を外の人間からはバレないように広げていった。


 今では地上の洋館の数倍の広さとなっている、石造りの壁や天井はまるでダンジョンのようだった。


 その地下の大広間にて集められ山のように積まれているのが呪われた品物である、その山の近くには十数人の人間がいた。

 ジョゼを中心とした冒険者の集団だった。


 ジョゼたちがカリオストに協力していたのは力を得られると言われたからだ。

 ジョゼたちは冒険者としての才能に限界を感じ、これ以上は上にいけない事を悩んでいた。


 そこにカリオストが現れ自分は呪いの力を利用して人間を魔術以外の手段で更に強くなれる方法を研究しているのだと言ったのだ。


 その研究の一環として呪われた品物から呪いの力を吸収し、自身の肉体を強化したりと実演をして見せたカリオスト。

 彼が人間ではない事を知らないジョゼたちは簡単に騙された。


 カリオストは元々呪いに強い耐性があり、呪いを吸収する事で自分を強化する能力が元からあるモンスターだった。


 その力を目の当たりにし、カリオストはその効果を身に着けているブレスレットやネックレスの力だと言いこの装備を完成させるのが研究の目的だとジョゼたちに言ったのだ。


 実際の理由は呪われた品物を集める事と実力のある強い肉体を持つ人間が必要だっただけである。

 ジョゼがカリオストと話をする。


「カリオスト様、何故わざと街中のそれも冒険者が多く集まる屋台街に実験体を?」


「あれは呪いの力を少しだけ使った失敗作だ、少しでも戦闘データが欲しくて作ったからな。負けてもいいから戦わせたのだ」


「まあヤツらはたまたまダンジョンに来た駆け出し冒険者でしたからね、能力はたかが知れてる」


「その通り、この完成した呪いの力を支配するブレスレットを持つ君らはあんな失敗作とは別次元の存在となるだろうね…」


 ジョゼたちの右腕には銀色のブレスレットを身に着けていた、それがカリオスト曰く呪いの力を制御するための装備なのだ。


 カリオストが「それでは最後の実験を開始する」と言うとジョゼたち冒険者は呪われた品物の山へと近づいていった。

 冒険者たちが口々に力への渇望を口にする、それはジョゼもだった。


「……これで、俺を置いていったあの連中に俺の力を認めさせてやる」


「ああっ必ずお前は人間の限界を超えられるよ、ジョゼ…」


 それはそうだろう、何しろ人間じゃなくなるんだからな。


 カリオストの内心など一切知らないジョゼたちは何の効果もないブレスレットの力を信じて呪われた品物に触れた。

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