第8話 怪しまれていた
エリーと屋台にて、鉄板で焼かれた肉料理を食べながら話を聞いた。
「そもそも何で自分を尾行してたの?」
「冒険者ギルドからの依頼です、何でも街で少しでも怪しそうな商人をしばらくの間尾行して日頃何をしてるのかを確認してほしいって」
「少しでも怪しそうって…何かおかしな事を自分がしたかな?」
恐らくだがカリオストが商人なので横の繋がりを疑ったのか、或いは懇意にしてる可能性のある商人でも探そうとしてるのかだろうとバイスは考えた。
どのみちバイスには自分に尾行の冒険者を送りつけられる理由が思い当たらなかった。
しかしエリーはそうでもないらしく「それはですね~」と少し溜めてから言葉を続ける。
「まずこのバッカニアに来て日が浅くて、商人ギルドに登録したばかりの駆け出し商人。それなのに使えない物や呪われた品物なんて危険な物を取り扱うダンジョンからの出土品なんてリスクの高い商売をいきなり始めてー」
「…………」
「駆け出し商人って名乗ってるのに普通に目利きは出来て魔術が付与された道具や魔物素材で作られた当たりの装備品だけを取り扱ってて…ギルドマスターから話を聞いたかぎりでも怪しいかもって私でも思いましたよー? 実際にバイスさんから買った道具はみんなしっかり使えましたし…」
どうやら自分はかなり変な目立ちかたをしてしまっていたらしいね…。
バイスが特に考えもなく何となく問題無いだろうとやらかしていた行動の数々はしっかり見られていたようだ。
(バイスは浅はかーー)
(むっまあその通りだけど…プニはこれを食べていてね)
屋台の料理をそれとなくプニに食べさせる、『擬態』で周囲から完全に見えなくなった状態のプニはモリモリとバイスのご飯を食べていった。
しかしエリーの話を聞いてバイスは今後の方針を決める。
怪しまれている以上は下手に動けばモンスターだとバレる危険がある、仕方はないがしばらくは商売もお休みして好きなだけ尾行でも何でもさせようと。
本当にカリオストや呪われた冒険者やらと繋がりがない以上今より状況が悪くなる事はないと思ったからだ。
他の怪しまれてる商人を尾行している冒険者やカリオストが尻尾を出すのに期待しよう。
一応エリーはバイスを尾行すると言う依頼を受けているからと今日一日は
共にバッカニアをテキトーにぶらつくのについてきた。
プニは中々バイスと話せないので不満そうだったがそこは我慢してねとバイスがテレパシーでお願いする。
そして次の日もエリーはバイスを尾行していた、他の四人も更に離れた所から尾行している。
エリーも依頼されて尾行をしている、もう既に一回他の尾行の前で接触してる(と言うよりまさか一人だけ仲間はずれだとはバイスも思わなかったのだ)のでこれ以上話とかするとエリーの依頼が失敗扱いになる可能性も考え、好きにさせる事にした。
バイスはこれ以上は余計な真似はせずにバッカニアの街で過ごす、屋台街で食事をしたり公衆の蒸気風呂に入ったりして過ごした。
尾行が始まって三日後、四人の尾行部隊は消えてエリーの姿も消えた。
プニに見張ってもらっても尾行してくる人間はいないとのこと、尾行の日々は終わりを告げた。
バイスは冒険者ギルドに少し顔を出すと受付カウンターにて報酬を受け取るエリーの姿を見た。
(プニ、これは何か奢ってもらってもバチは当たらないかな?)
(奢りでお腹いっぱい食べる? バイスも中々の悪、ワルモンだね!)
(ふふっ冗談だよ、僕はワルモンじゃないからね)
報酬を受け取ったエリーも笑顔だったからなのか何故か満足してしまったバイスは静かに冒険者ギルドを後にした。
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