第6話 強襲の影
バイスとプニは夜の屋台街へ繰り出した、屋台街は活気があり多くの屋台が並んでいる。
集まるのお客は殆どが冒険者、後はそんな冒険者たちと仲の良いバッカニアの住人たちだ。
やれどこの屋台の食べ物が美味しいだの酒に合うだのと皆明るい調子で話をしている。
そんな屋台街の屋台の一つにバイスは向かい、用意されている横長の椅子に腰を降ろす。
屋台の店主は五十代くらいの白髪の男で、屋台では様々な煮物を煮ていた。
ぱっと見はおでんに近い、大きめにカットされた根菜類や肉類、少しだけ練り物がある。
「いらっしゃい、何にする?」
「オススメを適当に見繕ってくれませんか?」
「あいよ、苦手なヤツとかねぇかい?」
「はい、ありません」
実はここでプニとバイスの『擬態』コンビネーションが炸裂する。
プニの『擬態』で人間の姿をしているとは言えバイスの正体はスケルトンだ、だから本来は物を食べるというよりはその食べ物に宿った生命力を食べる。
故に食べ物自体を食べる事は出来ない、しかしその食べ物の生命力をバイスが食べると骨の身体の中に入る食べ物をすかさず頭の上から移動したプニがその身体でキャッチ。
それを繰り返すことで小人族のバイスは食事をしているように見えるのである、なお一度に多く食べるとプニのキャッチが追い付かず腰の辺りから食べた物がぽてっと落ちる失敗を過去に重ねた経験あり。
(うんうん、美味い! あっこれも美味いよバイス!)
(ああっどれも良い生命力が宿っていて美味しいね)
「美味しいですね」
「そうか? ウチの熱々の煮物を殆ど冷まさずに食べてるが大丈夫か?」
「………」
ちょっと失敗しちゃったかも。
そんな事を考えながるバイスだった。
そして夜の更け、お腹を満たした冒険者や街の人間がちらほらと帰ろうとしていた時である。
夜の屋台街に人の悲鳴が響き渡った。
屋台街に緊張が奔る、バイスも声のした方に目を向けた。
スケルトンであるバイスは視界が暗くても回りが普通に見えた、注意して観察すると腕を押さえた男と剣を持った数人の男たちがいた。
「なっ何が起きたんだ!?」
「剣を抜いた人間が何人かいるみたいです、店に隠れていた方が良いですよ」
バイスは懐から代金を払うとそ~と問題が発生している場所へと近づいた。
ある程度近づくと男たちの声の内容が理解出来た。
「お、お前ら……いきなり剣を抜くとか正気か!?」
「……………」
「あぶねぇっ!」
腕を押さえている男が声を張り上げる、その男に剣を手にした男たちの内の一人が剣を振るい、怪我をした男の仲間と思しき男が剣を抜きその凶刃を弾いた。
男を襲った男たちは雄叫びを上げる。
そして見境なしに回りの人間を襲い始めた、バイスもその男たちの一人と対峙する。
バイスは右手を背に回し、手の平にプニが現れる。
そのプニが『擬態』で一振りの曲剣に変身した、現場は騒がしくなっていてバイスの行動を気に止める者はいなかった。
バイスも元はダンジョンで働いていた、冒険者から見れば戦闘員と清掃員の違いなどあるはずもないので当然襲われるので護身の為の剣術を習得していた。
バイスの剣を八の字に回転させるようにして放つ連撃である、スキが少ない剣で冒険者に攻勢で出られる前に攻め立てる剣だった。
男の剣を受け流し、次の瞬間には接近してさながら舞うように攻める。
コマのように回転して連撃、バイスが目を回すなんて事にはならない、何故なら目玉などないからだ。
バイスがどうやって物を見てるのか、それはバイス自身にも分からない。
スケルトンは何故か皆そうなっているのだ。
無数の斬撃を男の剣に叩き込み男を怯ませた。
戦ってみて分かった、この男は正気じゃない。
雄叫びを上げながら振るう剣には型もなにもなく倒そうと思えばいつでも倒せた。
しかし周囲の様子をそれとなく確認すると他の冒険者たちもそれぞれ武器を手にして正気を失っている男たちと戦っていた。
そこは屋台街で多くの冒険者が来ていた、そして冒険者は街中でも武器を手放さない者も多い。
そんな場所に数人で来た時点で頭がおかしいと言う話である。
多少酔っていても武器を手に戦う冒険者の数は二十を超える、男たちは一人で数名の冒険者に囲まれ袋叩きにあった。
バイスの元にも冒険者が来て目の前で男を袋叩きにした。
余計な実力を見せないで正確だったとバイスは胸をなで下ろした。
男たちは武器を取り上げられ一カ所に集められる、冒険者の一人に魔術師らしき女性がいて他の冒険者と話をしているのを小耳にはさんだ。
「コイツら呪われてるわね、恐らくダンジョンの呪われた品物をテキトーに触ってダンジョントラップを食らったのよ」
「なんでダンジョントラップを食らった冒険者がバッカニアの街中に現れるんだ?」
「そんなの私が分かるわけないでしょ?」
そんな会話をバイスは黙って聞いていた。
捕まった男たちは街の警備兵に渡され連行されていった。
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