第35話 んなもんあるか!
エゼルは当たり前でしょ、と言う態度でグロゴスにキッパリ言った。
そして言葉を続ける。
「お前が冒険者とやらをしていて、仲間と共にあの『幻螺旋の巨塔』を目指す。ここまでは良いわ…けどその先の攻略だの栄誉だのってのは土台無理な話でしょ? だってダンジョン手前の荒野の魔物にすら手も足も出なかったのがお前の冒険者としての限界だったんだから」
(うわ~~それを言うとか容赦ないな)
カイジスドン引き。
グロゴス押し黙る。
しかしエゼルは止まらない。
「子供が夢を見るのは構わないけどさ、実力の無い雑魚が下らない妄想に取り憑かれて、挙げ句赤の他人を大勢巻きこむのは辞めたら? だってあのダンジョンを攻略するのは私たちであってお前程度の雑魚には無理でしょ?」
「おっ女………お前…」
「何の力も無い者には決して見ル事が出来ない景色があるのよ、それを見たいと望むのは自由だけどね…実際のところはそこに届く力がないんだから素直に諦めて国に帰る事をオススメするかな? あっお前はその前にブタ箱行きだけど」
「俺に力がない……力がないだと? 多少出来るからと図に乗るなよ女! 俺にはあの組織から渡されたコレがある!」
グロゴスは黒い首飾りを懐から取り出した。
それを自らの胸に当て何やらブツブツと独り言のような呪文を唱え始める。
「…我は人の境界を越える。古の悪魔、その力の欠片を我に与えよ!」
グロゴスの体が黒い瘴気に包まれる。
驚愕するカイジス、エゼルは別に興味無さそうだった。
その瘴気もグロゴスに吸収される。
グロゴスの姿が変化していた。
肌は黒くなり頭には二本の角が生えていて瞳は金色になっている、背中にはコウモリのに似た羽があり下半身がヤギのそれに近い毛むくじゃらで足はひづめがある獣のそれになっていた。
そして体は倍以上に大きくなっている。
「まさか……魔人化したのか!?」
「その通りだ、コレが俺の覚悟…カイジス、お前程度のポンコツヒーラーとは全てにおいて格が違うんだよ!」
「………(イラッ)」
グロゴスの言葉にカイジスではなくエゼルがかなりムカついた。
しかしエゼルの表情は直ぐに変化しニヤリと笑みを浮かべる。
「そうっならここからはカイジスがお前をボコボコにするから覚悟しなさい」
「「……………………は?」」
カイジスとグロゴスの声がハモった。
エゼルは構わず話を進める。
「さっきから聞いてればポンコツポンコツポンコツと本当にお前らヒューマンは呆れる程に相手を見る目がないわね、カイジスを馬鹿にし過ぎてる、彼の力がどれ程の物かそれを欠片も理解出来ない低次元な文明レベルに……私は心底呆れて来ちゃったよ」
エゼルが異星人っぽく人間をヒューマン呼ばわりする。
そこには蔑視する意志がありありとあった。
「そこで私は考えた、本物の馬鹿にも分かる様にね。そこまでポンコツ呼ばわりするカイジスにコテンパンにされれば少しは身の程ってヤツを理解するんじゃないかなってね」
「いや無理だろ! あれ見ろよあの悪魔の姿を! どう見ても俺のこの安物のロッドで殴ってもダメージ与えられる見た目してねぇじゃん!」
「安心して、そこは私がカイジスをフォローするから」
「フォローでどうにかなる相手じゃねぇんだよーーーー!」
「どこまでも俺を馬鹿にしやがって! そこまで言うのならカイジス! お前の本当の実力を見せてみろ!」
(んなもんあるかこんちくしょうー!)
グロゴスがコウモリに似た羽を広げると空へ飛んだ、そして滑空して襲いかかって来る。
そしてエゼルは余裕の表情を浮かべて大剣を構えた。
「……カイジス、君に星を制す力を見せてあげる」
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