第34話 エゼルはストレート過ぎ

 赤い稲妻が奔る。

 黒マントたちは悲鳴と苦悶の声を残して一人残らず全滅した。


「……本当に死んでないんだよな?」


「死んでないわよ、信用ないわね」


「いやっちゃんと信用はしてるぞ?」


 そんな薄っぺらい会話をしてる二人の人間がいた、かたやこの星の生まれの現地人と他の星から来た異星人である。


 その二人の前には大剣を構えたグロゴスがいた。

 しかし既に肩で息をしている、仲間もみんなやられてしまい精神的にも追い詰められていた。


 ほんの少し前まではグロゴスの仲間は混乱しながらもみんなピンピンしていた。

 グロゴスが大きな声で呼びかけその混乱を一瞬で治め、目の前の二人、カイジスとエゼルを倒せと命じた。


 闇ギルドとは犯罪組織だ。

 しかし当然上下関係はあるので黒マントたちは自然とグロゴスの指示に従い臨戦態勢を取った。


 そうっ臨戦態勢を取っていた筈だった…。


(それなのに、有り得ねぇだろ!? 何なんだあの赤い稲妻は…魔法の避雷針も無視してこっちに向かってくるし、結界すら一瞬で破壊するだと…)


 グロゴスは知らなかった、既にエゼルの宇宙船ゼビルス復活計画が完遂していることに。


 最早その計画が成った今何となく戦力が必要とか準備が必要みたいな事は何にも無く、無くても倒せる連中とのバトルなどエゼルから見れば単なるゴミ掃除。


 カイジスからの殺しは無しでっと言う注文を守る事だけを注意すればいいだけのお手軽ミッションだと思われていた事を。


 グロゴスは吠える。


「何なんだ、一体何なんだお前は!? どうしてお前みたいな化け物がカイジスの…そんなポンコツヒーラーに力を貸すんだよ!?」


「取り敢えずこの私を化け物と呼んだので一殺し、そしてカイジスをポンコツヒーラーと呼んだから二殺しだからね」


「……殺すのは辞めろって」


「それじゃあ五分の四殺しで勘弁してあげるわ」


 エゼルのまるで相手にしていない態度にグロゴスは苛立った。

 グロゴスはカイジスに話しかける、カイジスを説得すればエゼルを止められるかもと言う打算からだった。


「…カイジス、お前も冒険者なら分かるだろう? 俺たちがダンジョンにかける気持ちが、俺は何としてもあのダンジョン『幻螺旋の巨塔』を攻略したいんだよ!」


「気持ちは分かるよ、気持ちだけはな…けどそれと俺の故郷を犯罪者の街にするのと何の関係がある」


「国の偉いだけの馬鹿はダンジョン攻略どころか手前の荒野すら突破出来ないと分かると物資も人間も送らなくなった、俺や仲間、他の冒険者が幾ら説得をしても無駄だった…」


「………」


「そこにヤツらが、闇ギルドの…あの組織が現れたんだ。ヤツらの幹部は言った、あのオーガルを手に入れる事が出来れば望むだけの人間も物資も武器も用意してやると、俺はその言葉に賭けたんだ!」


「そんなクソみたいな理由で…何の関係もないオーガルの連中を襲って街を占領しようとしたのか」


 カイジスは苛立っていた。


「なぁに最初だけさ、犯罪に加担してるなんて意識はな。物と金が順調に回り出せば直ぐになくなる。人間なんてそんなもんなんだよ…そして俺があのダンジョンを攻略した時、オーガルは英雄を支えた街として後世に名を残す栄誉を与えられるんだ! カイジス、お前にはそれが」


「…分かる訳ねぇだろ!」


 カイジスが怒鳴る。

 その隣のエゼルは呆れていた。


「……英雄? お前には無理だよ、だって弱すぎるから」


 エゼルがストレート過ぎる言葉を言い放つ。

 グロコスは絶句した。


「………なんだ…と?」


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