第33話 ヘラは欲する
そこには濃い霧が広がっていた。
視界すらほぼゼロとなる様な濃霧だ、本来荒野に砂嵐はあれど濃霧など出ることはない。
「くそっさっきまで聞こえていた仲間の声が……消えただと?」
そんな霧が現れる理由は簡単だ。
故意に出している者がいるだけだ。
「そんなのお主の仲間が皆やられてしまったからだとは思わんのか?」
「ッ!? 『アイスクレイモア』!」
濃霧の中、背後から声をかけられた黒マントは魔法で氷の大剣を出現させて一閃する。
しかし誰も捉える事はなかった。
「外れじゃ外れじゃ~そんな攻撃では妾にかすり傷一つつけられんぞ~?」
「くそっ武器だけが動いて、お前本人は何にもしていないくせに偉そうに」
突然オーガルの街から離れた荒れ地に飛ばされた事で動揺していたのは事実、しかしここまで好き放題にやられるのは黒マントのプライドが許さなかった。
「私の魔法を舐めるな、この程度の霧など何の問題もないわ!」
(本当に魔法と言うのは厄介と言うか何というか…まあそれに助けられたのは妾も同じ、この星特有の文明もまた侮れんな…)
「そこだー!」
黒マントがヘラに襲いかかる。
しかしヘラの姿がまた消えた。
「また幻影か!?」
「違うぞ……ただお主が妾の動きに全くついて来れていないだけじゃ」
「ッ!?」
声は背後からした、ヘラは少し速く移動して黒マントの攻撃魔法を躱し背後に移動しただけだ。
その移動が黒マントには全く見えなかった訳なのだが。
僅かなやり取りで実力差を理解した黒マントだった。
「まさか…今まで相手にもされていなかったと言うのか?」
「然り…妾が直接刃を振り下ろすに『値する』か否か見ておった。結果まあお主はそこそこ粘っていたので大甘に査定した結果じゃが……特別じゃぞ?」
ヘラが『
その瞬間ヘラから放たれる圧力で生き残っていた黒マントは動けなくなった。
恐怖によって。
「あっああ……ああ……」
「さらばじゃ……『
一太刀で岩山を消し飛ばす斬撃を同時に七度放つ。
星雲の如き光を纏い放たれた刃が黒マントを……襲わなかった。
紙一重でそらされた斬撃は周囲に広がる濃霧を消し飛ばた。
黒マントは腰を抜かし股からお漏らしをしてその姿勢のまま気絶していた。
それを見たヘラはニコニコ笑顔で言う。
「ぬふふふ~冗談じゃよ冗談。妾もカイジス殿にはキツく
ヘラはこの星の魔法と呼ばれる謎の力に興味があった。
自分たちの文明よりも遙かに進んだ機械技術にする影響を与える未知の力、それは『
しかしその本当の理由はやはりカイジスの魔法だった。
(他の者たちの魔法も面白いが、やはりカイジス殿の蘇生魔法は別格じゃ…どんな理屈で妾たちが助かったのか、挙げ句には本当に宇宙船まで復活させるとはの~本当に興味の尽きぬお人よ…)
カイジスの蘇生魔法を使えば、かつてコレクションしていた中にある物の中でも本来の能力を失って久しい物を復活させる事も出来るかも。
そんな打算はあれどヘラのカイジスに対する恩とそれを返そうとする意志は本物だった。
「あの『
ヘラの中で自分は子分枠から外れていた、しかしカイジスの中では子分2号枠なのは変わらぬ事実である。
「ふむふむ…やはり是非とも妾のコレクションに…いやそんな事を言えばあの馬鹿二人が何か言ってきそうじゃしの~しかし欲しい者を諦めるなど妾の辞書にはない訳じゃしの~」
荒野に倒れる多数の黒マント、それには視線さえ向けずにヘラはこの場にはいない青年やそのオマケみたいな自身と似たり寄ったりな立場の異星人の事を考える。
「ふぬ~いっそ妾が彼の
エルディオン太陽系にて『
自身が欲する物ならあらゆる宝物、兵器、或いは星さえ手にしてみせた怪物はいつしか女帝と呼ばれた。
どこぞの宇宙海賊からは「それはまるで
そんな女帝が始めて人をコレクションしたいと思った。
彼女が人に惹かれる事など初めての事だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます