第29話 闇に葬られる真実

 カイジスもエゼルが用意した転移ゲートで現れ戦闘に参加した。

 手にしたロッドをぶん回して黒マントたちに微小なダメージを与えたが、直ぐに他の三人が一撃で沈める。


 時間にして十数分程もかかなかったアジトでの攻防戦。

 それ自体は直ぐに終わった。


 何故ならグロゴスたちの他には主力がいなかったアジトには十数人くらいしか闇ギルドの人間はいなかったからだ。


 チート異星人、或いはレアリティがSRまでしかない惑星にURのキャラの異星人が来ちゃいましたなノリでボッコボコにされた闇ギルドの一同だった。


「ハァーーっ!? それじゃあグロゴスたちはとっくにオーガルに向かったってのか!」


「そっそうだよっだからここで暴れても既に手遅れなんだよバーカ!」


 カイジスに胸ぐらを掴まれた黒マントが笑う、そんな男に必殺の右ストレートをかまして黙らせる。

 そんなカイジスを尻目に…。


「おおっなんだよこれっ木箱の中に新鮮な野菜や肉がゴロゴロしてるぞ!」


「…それは『保存』の魔法がかけられてんだよ、だからその木の蓋をすれば中のナマモノが一ヶ月以上は新鮮なまま持つのさ」


「魔法すげー! 宇宙に進出する科学技術もないのにそんなのどうやって生み出したんだよ!?」


 カイジスの話を聞き、エゼルはしばし思案する。


(そう言えば進歩した科学は魔法と区別がつかないとか言ってたっけ~それはつまり魔法ってのは高度過ぎる科学力に比肩する何かであるとも言えるって事なんだよね…魔法、まるで未来の…)


「まっそれはそれとして…イプ! その木箱は全部ゼビルスに運ぶわよ!」


「よしっまかせろ、こっちは……おおっなんか果物っぽい!」


「それも!」


「コラァッ闇ギルドのアジトで強盗行為をするなっ!」


 一方のヘラは倒れた黒マントたちを無視して武器の入った木箱を開けて中身を眺めていた。


「ヘラ、この盗っ人どもをちょっと止めるのを手伝って…」


「う~んやはりただの鉄製の武器なんて時代遅れ過ぎるか? いやっむしろこの武骨さや余計な機能がない所がある意味コレクションとして一つは持っておいても…」


「そんな大量の武器をどうするつもりだよ! いいから物盗りは辞めろってば」


 しかし転移ゲートに物資を運ぼうとする三人の手は止まらない。

 カイジスが真面目な顔で叫んだ。


「いいかっここにある物は真っ当な人間からこの闇ギルドの連中が奪った物かも知れないんだ、つまりここにある物はコイツらの物じゃないんだよ、だから…」


「何を言ってるの君は~? お宝も食べ物も勝って奪ったヤツの物でしょう?」


「そうだぜ、敵の物はオレの物だしオレの物はオレの物ってやつさ!」


 エゼルの海賊の思考とイプシロンの理不尽魔人の思考にドン引きのカイジス。


「カイジス殿、ソイツらにそんな高尚な物の考えは理解出来はしないだろうに…」


「……ヘラもその木箱を転移ゲートに運ぶのを辞めろ!」


「ぬぁあっ! せめてその木箱だけは! その木箱には宝石をあしらった高値がつきそうな類の物が…!」


 そして結果的に言えばカイジスは敗北した。

 欲望に燃える三馬鹿を止める術などカイジスが持っている訳がなかったのだ。


 そんなしょうもない戦いがありカイジスたちがオーガルに到着するのに若干遅れたのだが、それを知るのは宇宙船で来た四人だけである。


 そしてこの四人は「アジトにいると勘違いして遅れちゃった、街や人に被害が出ちゃったけどゴメンね」などと馬鹿正直に言う人間はいないので全て闇に葬られる事になる。

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