第21話 ポンコツとか言うな!

 カイジスたちはヘラの時と同様に転移ゲートから異星人がいる場所に向かった。

 そこはエゼルがいた下級ダンジョンとは違う下級ダンジョンであった。


 入口はエゼルがいた下級ダンジョンとそう変わらない、中に入るのはカイジス、エゼル、ヘラ、そしてギンちゃんとタマちゃんズである。


「ところでその小型ユニットたちはなんじゃ?」


「ギンちゃんとタマちゃんだ」


「………?」


「カイジスを私の元に連れてくる時にちょっとね…」


「そんな戦闘能力も殆どないユニットなんて連れてくる必要があるのか? 妾とエゼルがおるんじゃぞ?」


「何を言ってんだ、ギンちゃんもタマちゃんもとても頼りになるんだぞ!」


 カイジスの言葉にギンちゃんとタマちゃんは、そうだぞ僕たちは頼りになるんだぞっと誇示するようにカイジスのそばをブゥンブゥンと飛行する。


 それをみたエゼルは少し呆れ気味に笑い、ヘラは理解出来んと嘆息した。

 ちなみにこのダンジョンに出る魔物については事前にカイジスは二人に説明していた。


 現れるのは人型の魔物だ。

 ゴブリン、ボブゴブリン、トロール、ボストロールだ。

 グールにヴァンパイアなどのアンデッドも奥には出ると話には聞いているとカイジスは二人に説明した。


 カイジスはそんな二人にギンちゃんとタマちゃんの活躍する場面を見せてやりたいと先陣を切ってダンジョンに突入した。


 そして結果だけを言えば…ギンちゃんもタマちゃんも活躍は出来なかった。

 先陣を切ったカイジスたちを追い抜いてダンジョンからモリモリ湧いてくる敵をバンバン倒していくエゼルとヘラだった。


 エゼルの黄金の大剣から放たれる赤い稲妻の弾丸が現れた無数のゴブリンやトロールを感電させて次々と黒こげにしていった。


「たわいないってヤツだよね~」


「いやっギンちゃんとタマちゃんにも活躍させてやってくれよ!」


「…そんな台詞は私よりそっちに言ってあげた方が良いわよ?」


 カイジスが「は?」とヘラの方を見る、ヘラは手にしていた長刀がいつの間にか独りでに宙に浮いていた。


 ヘラは不敵に笑う、恐らく彼女の持つ長刀もエゼルの大剣と同じくただの武器ではないのだろうとカイジスは思った。

 エゼルは言葉を続ける。


「こと殲滅、或いは制圧戦においてこの私以上の力を発揮するのがその女。ヘラ=アルゴニウムだからね」


「その通りじゃ、そこのポンコツユニットなぞ不要と言った意味をカイジス殿に披露するとしようか!」


「ポンコツとか言うな!」


 ポンコツと言う言葉は本当はカイジス自身の心にダメージを残す言葉だったのでぶーたれるカイジス。

 ギンちゃんとタマちゃんも抗議するかのようにブゥンブゥン飛んでいる。


 ヘラは当然それらを無視してモンスターたちの殲滅に入った。


「『紺碧冥府刀プルーテス』……抜刀」


 宙に浮く長刀はヘラが手にしてもいないのに鞘から抜き放たれる。

 現れた長い刀身は青く、美しい波紋の刀だった。


 何故かその刀身には水が流れていた。

 ヘラがおもむろに右手を挙げて振るった。


「薙ぎ払え!」


 青い剣閃が奔る。

 ダンジョンの魔物は引くことをしらない、ヘラに向かっていたゴブリンやホブゴブリンの群れが一刀のもとにその全ての首が刎ねられた。


「はっ早っ!」


「手にして振るわないからあれだけ長い武器でも屋内や建物内でも縦横無尽に振るえる、それだけでもチートなのにヤツの刀は…」


 今度はトロールや更にただでさえ身長が五メートルはあるトロールよりも二回りは大きなボストロールまでヘラに迫ってきた。


 ヘラが手をかざす、今度は青い長刀が宙で二、三回振るわれその青い刀身に流れる水滴をトロールとボストロールにまいた。


「我が『紺碧冥府刀プルーテス』の刃は変幻自在じゃ……まあ簡単に言うなら」


 一瞬だった。

 巨体を誇るトロールもボストロールも細切れにされて絶命したのだ。


「この刃の水流も刃である、触れれば大抵の物質は断ち切られる故、カイジス殿はあまり近付かんでほしいのじゃ」


(こえぇ~~)

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