第20話 動き出すグロコス

 カイジス達が宇宙船で一晩休んだ翌日の朝、グロゴスはオーガルの街の冒険者ギルドに来ていた。


「……カイジスが?」


「そうですよ、カイジスの馬鹿は何をとち狂ったのかグロゴスさんが闇ギルドの人間と繋がっているとか訳の分からん事を…」


(まさかあの場を切り抜けたってのか? いや、確かにあそこに残したヤツらからの連絡はまだ入っていないのは事実だが…)


 グロゴスは冒険者ギルドの受付の男に適当に話を合わせる、ここで余計な波風が起こすのは避けたかった。


 グロゴスと行動を共にしていた男たちは少なくともこのオーガルの街の冒険者がどうこう出来る程度の実力ではない、海の向こうの大陸ではそれなりに名の知れた者たちだった。


(そのアイツらをカイジスがとは考えた難い、ならあの赤髪の女か? 妙にふてぶてしい態度だったのは覚えているが、どのみち面倒な事になったな…)


 グロゴスの予定では今後大陸からの船で物資や更に部下を組織から増員してもらい、いずれはこのオーガルを乗っ取るつもりだった。


 このオーガルの冒険者に最低限の自衛能力を手ほどきしたのも下っ端として扱き使う為だ。


 ここに組織の犯罪者都市を築き上げる、全てはこの先の荒野にある『幻螺旋の巨塔』という前人未到のダンジョンに挑むと言う冒険者としての目的を達成する為。


 それがグロゴスがオーガルの人間やカイジスを裏切り闇ギルドの人間になった理由だった。


(万が一、船にでも乗られて大陸に行かれ、王都にいる人間にこのオーガルの事を話されると組織の目的がバレる可能性もあるが…)


「グロゴスさん、どうかしましたか? 何やら考え込んでますが」


「いやっカイジスのヤツに何か嫌われる事でもしちまったのかと思ってな…」


(……仕方ない、組織の人間を動かして計画を前倒しにするか…さっさとオーガルを占領する)


 グロゴスは受付の男と少し言葉のやり取りをした後は依頼を受けずに闇ギルドのアジトに向かった。


 場所はオーガルからは見えない大きな岩山、海岸際にあるその場所がアジトだった。

 岩山をくり抜き、中を居住場所にした隠し港である。


 岩山の内部にある港は大きく、大小様々な船が十数隻は留まっている。

 出入りする人間は全員が闇ギルドの人間、つまり犯罪者である。


 アジトにグロゴスが現れると武器や魔道具の数を書類を見ながら数を確認していた組織の人間が挨拶をした。


 すると近くの他の人間も挨拶をする。

 グロゴスは今回の作戦のリーダーを任されているので立場が高かった。


 グロゴスは集まった人間たちに今後の方針を話す。


「少々予定と違うが今日、準備が出来次第オーガルを占領する」


「まだ物資も人員も全て送られてはいませんよ?」


「それでも既に戦える人間は数百人以上はいる、あんな小さな港町を占領するには十分だ」


 グロゴスの言葉に確かにと意見に合意する声が幾つも上がった。


(カイジス、お前が余計な事を企んでいたとしてもあの街の人間を犯罪者に染め上げちまえば全ては何の意味も無くなるんだぜ? お前が何をしても無駄だ!)


 グロゴスたちはオーガル占領の準備に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る