第18話 同盟?

「うむ、それもそうか。カイジス殿に嫌われるのは嫌じゃからの~」


「ッ!? そ、そんな話はしていないでしょ、ただ…彼の故郷がムカつくと言っても命の恩人相手にそんな傍若無人な振る舞いは宇宙海賊でもしないの」


「そうじゃの、多大な恩には恩を持って報いる他にない。カイジス殿がそのオーガルとやらを潰そうとするのなら話は早いのじゃがな~」


「……彼はそんな短絡的な人間じゃないわ、だからこそ私も下手な行動は控えているの」


「合い分かった…つまりはお互いに余計な過去を暴露するのもこの星の現住民相手に下手に暴力で話を進めるのもやめておくべきと言いたい訳じゃな?」


「その通りよ、まあカイジスの身に危険が迫る場合は話が別だけど…」


「……そちらも合い分かった」


 そんな会話をしながらその日の夜は過ぎていった。

 そして深夜、カイジスはトイレに起きた。


「…………おっ夜は床が薄ら光るのか」


 一応宇宙船ゼビルスには消灯時間が設定されおりその時間を過ぎると天井の光は消され、柔らかなブルーライトで足元を照らすようになっている。


 そんな気の利いた光なんて全くない文明の人間であるカイジスにはそれだけで驚きである。


 ちなみにトイレの方もポットンではなく水洗、更にトイレットペーパーの質にも驚いたり手洗い場の水が手をかざすだけで流れる事にも驚いていた。


 カイジスにとってトイレひとつ取っても、そこはまるで王宮かどこかのトイレではないかと思っていた。

 実際は王宮にもそんなトイレはない。


 眠気がまだ残る足取りながらも驚く事が多いのでいちいち反応してしまうカイジスだった。


「おやっカイジス殿」


「あっヘラさんか…」


 廊下を進んでいたらヘラと会ったカイジス。


「妾にさん付けは不要、ヘラだけでよいぞ」


「そうなのか?」


「普段なら有り得ぬが、多大な恩があるカイジス殿なら構わん」


 カイジスは「そうか、分かった…」と返事をしてトイレに向かおうとする。

 するとヘラが呼び止めてきた。


「……カイジス殿、しばし話に付き合ってくれぬか?」


(俺……トイレに行きたいんですけど)

「……まあ良いけど?」


 カイジスの返事を聞いたヘラは尋ねるように話をする。


「妾もそしてエゼルも素直に言えばあまり人様に顔向け出来る生き方をしてはいない人種じゃ、それはカイジス殿も分かっておるじゃろ?」


「………まあな」


「それならどうして助けたのじゃ?」


 ヘラの言葉にカイジスはしばし考える。

 確かに宇宙海賊とかマフィアと聞いてイメージする理不尽さを度々感じているのは事実だ。

 しかし…。


「……もう聞いたろうけど、俺はグロゴスってヤツを信じて一度裏切られてる」


「ああっそうじゃの」


「けどな…裏切られたからってそれじゃあもう誰も信用しないなんて生き方、俺には出来ないんだよ…だって俺弱ぇし。こうやって結局は人に頼らないと何も行動出来ない、だからまた裏切られる可能性があったとしても相手を信じてやっていくしか出来ない…そもそもそっちのが気楽だしな」


「!」


「だからヘラも気楽にしてくれ、力を貸すのが嫌になったらそれも仕方ないさ。無理強いとかしたくない、お互いにフェア……になれるように努力はするつもりだからさ、俺も…」


「………ふっ」

(成る程…元来のお人好しさは確かにあるが、それ以上にこのお人は他者に対して誠実でありたいと見える、悪くないのじゃ…)


 コレまで多くの人間を見てきたヘラ、そんな彼女には嘘の類を使うことも使われる事も好まないカイジスの性格が誠実に思えた。

 そしてそこに好感を持った。


「……よろしい、ならばこのヘラ=アルゴニウムはここにカイジス殿、貴殿と同盟関係を築こう。今後つまらぬ裏切りなどなく、貴殿が自分を見失わない限り、この妾が敵対する全ての障害を排除し貴殿を道を切り開くのじゃ」


「そっそうか、ありがとな…」



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