第17話 占領されちゃえ作戦

 エゼルからのジャブをヘラはしれっとした顔で受ける。


「妾もまさか宇宙の辺境でコソコソ海賊ごっこをしている小者とこうやって何処とも知れぬ惑星で顔を合わせるとは思っても見なかったのじゃ」


「「……………」」


 ここが宇宙船、或いはカイジスがそう離れてない所で寝ていなければ速攻でお互いに武器を出していただろう。

 そうっこの二人はとても仲が悪かったのだ。


「ふんっまさかヘラ、お前もあのワームホールでここに来ていたとはね…」


「お互いに悪運だけは強いみたいじゃの~」


 この二人はこの星に来る前にとある星でお宝を奪い合い、やり合っていた。

 宇宙船に乗り込みお宝を持って星から脱出しようとするエゼルと宇宙船を落としてお宝を奪おうとしていたヘラ。


 二人以外にもヘラに雇われた傭兵とかもいてドンパチと戦闘をしていたその最中の出来事だ。


 お互いに無駄に強力な武器を使った影響なのか、それとも元々空間が不安定だったのか戦場のど真ん中に突然ワームホールが発生したのだ。


 それに飲まれた。

 と同時にお互いともが事前に用意だけはしていた生命維持装置が発動し、仮死状態で身体を腐食やらその他もろもろの耐性が極めて高い特殊金属の像に変換して身を守ったのだ。


 その後そのワームホールによってお互いにこの星の地下へと送られる。


 宇宙船ゼビルスと共に何故かダンジョンの壁からこんにちはしていたエゼルは動けないながらも使える物を使ってダンジョンの隠しエリアにてあんな感じなって救出されるのを可能性は低くても待っていた。


 ヘラの方は地中だったので完全なスリープモードから目覚める事もなく埋まっていたようだ。


「……本当にお互い、よく無事であったもんじゃな~」


「全てはカイジスのおかげだよ、あんなとんでもない魔法の持ち主がいなければ私たちは発見されても全裸の女の像として何処かに飾られるしかなかったでしょうね」


「考えるだけでも恐ろしい可能性じゃな、してカイジス殿は一体何者なんじゃ? どうしてお主と共に行動をしている」


「簡単に話すとグロゴスの件もあって戦力が欲しい、まあ他にも私みたいに像になっている者がいるのなら助けられるのなら助けたいと彼は言っていたわ」


「報酬の話もなしでか? お人好しじゃの~カイジス殿は」

「ちなみに彼は故郷のオーガルでは実力のない冒険者と見られているのよ」


「……どう言う事じゃ?」


 お互いの状況などを話もそこそこに、話はカイジスの事に移る。


 エゼルはヘラにカイジスがグロゴスの一件で右ストレートを食らった事やポンコツヒーラー呼ばわりされている事を話した。


「よしっその街はグロなんとかが滅ぼすまで放置じゃ」


「私もそうしたいけど…カイジスは止めようとするわよ多分…」


「ならせめて街がそのグロなんとかに占領でもされるまで待つべきじゃ、そこを救って恩を売り二度とカイジス殿にふざけた真似が出来ぬようにするべきじゃ!」


「私もそうしたいよ、現にこうやってカイジスを連れて時間を潰してグロゴスが行動を起こせる時間はくれてやっているしね」


 カイジスが知らない間に『オーガルの港街よグロゴスに占領させちゃえ計画』が進行していた。


 殆どグロゴスの行動任せなので行き当たりばったりだが一切こちらから何の接触もしないのでバレる可能性もゼロな計画である。


 エゼルとしてはグロゴスがちゃんと動くならそれでよし、動かないならその時は組織ごと八つ当たりのサンドバッグにして潰してしまおうと考えていた。


「運任せで回りくどいの~そのグロなんとかとさっさと接触して動きを誘導すれば良いのではないか?」


「……カイジスにバレたら私たちの立場が悪くなるわよ?」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る