第16話 宇宙船……凄い

 エゼルはそんなヘラには全く興味もないのか宇宙船の中に走って入る。

 そして中を確認していった。


「…流石に浮力を発生させる機能までは無理か、けど風呂やベッドルームにコントロールルームは完全に復活している。やはりカイジスの魔法はとんでもないね…」


「エゼルー俺たちも入って良いのか?」


「カイジスは良いけど…ヘラはダメだよ」


「ずっと妾への対応が塩すぎなんじゃが!?」


「そうだぞ、ヘラばっかり仲間外れみたいにするなよ…仲間外れはツラいだぞ?」


「その女はそんな玉じゃ…まあカイジスがそう言うなら入ってもいいけどさ~」


 エゼルの許可を貰い中に入る二人。

 カイジスはSF的な内装など全く分からない、銀色の床や壁、天井事態が光っている通路を見てとても驚いていた。


 一方の宇宙でも有数の金持ちであるヘラは…。


「ふうっ何かと思えば旧型も旧型の、しかも中型船ではないか。こんな小汚い宇宙船、妾の船があれば絶対にカイジス殿をこんなあばら屋もかくやな船になど」


「……だから入れたくなかったんだ」


「ごっご愁傷様…」


 ヘラは好き勝手に言ってた宇宙船だが、カイジスから言わせれば普通に凄かった。


(なんじゃこりゃあっ!? ベッドとかふかふかだしあの銀色の洗面所の棒からは手を近付けると水が出るし扉が近づくだけで勝手に開くし、とんでもねぇなウチュウ船ってのは…!)


 ベッドルームの清潔さやベッドの柔らかさに驚き、洗面所の蛇口やシャワールームのシャワーに驚き、自動ドアにも驚くカイジス。


 そんなSF版お上りさんに生暖かい視線を向けるエゼルとヘラであった。


「カイジス、取り敢えず今日はもう休もう。君の蘇生魔法も何度も使える物じゃないんだろう?」


 エゼルはギンちゃんやタマちゃんを使い、地上の人間の様子を観察していた。

 魔法と言うのを使い過ぎるとこの星の人間はかなり疲弊する事も知っている。


「…そんな事も知ってるのか」


「もう日も暮れるし今日は色々あって疲れたでしょ? 私も久しぶりにベッドで寝たいし、少し休憩としましょう」


「それは妾も同意見じゃ」


 エゼルの指摘した通り、まともに蘇生魔法を使った事なんてなかったカイジスの魔力はあまり残っていなかった。


 更に言えば蘇生魔法がここまで魔力を使う事すら始めて知ったくらいである。

 ギンちゃんやタマちゃんに使っていた時と流石に人間を相手に使った時では魔力の消費が違っていて驚いていた。


「確かにそうだな、俺も疲れてるし今日や明日にでもグロゴスが動くとも思えないし…休むか」


 そしてカイジスは始めての宇宙船で休む事にした、シャワールーム以外にも大きなお風呂があるバスルームに驚き、いつの間にか着ている物を洗濯機に転送され服を奪われたと勘違いしたり、自動でいつの間にか作られた料理を見てエゼルやヘラが料理を出来たのかと勘違いしたりと色々ありながらもその日は過ぎていった…。


 その日の夜、カイジスは自身が思っていた以上に疲れていたのかそれとも柔らかいベッドの魔力なのかぐっすりとベッドルームで爆睡していた。


 そんなカイジスとは違い、のんびり休もうと言う気分にならないのがエゼルとヘラの何やら因縁がありそうな二人である。


 場所はリビングルーム、本来は談笑したりのんびりとそれぞれの時間を過ごす為の場所だが今は妙に空気がピリついていた。


 部屋の真ん中には白い長方形のテーブル、左右に向かい合う形で白いソファがありダイニングルームと併設されていて食事をする様のテーブルとイスも別にある。


 二人はソファの真ん中に向かい合う様に腰を下ろしていた。


「ふ~まさかあの宇宙一金に汚い上に卑怯者で有名なお宝コレクターを船に上げるなんて思いもしなかったよ」



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