第12話 全員土下座が条件で
「その黒マントの話が事実なら君の住むオーガルの街はかなり危険な状況と言う事になるかな」
「…ああっそうだ、こんな連中を相手にしてる場合じゃねぇ今すぐにオーガルに戻らねぇと!」
「分かった、それなら一度ゼビルスがある隠しエリアまで戻ろう」
「隠しエリアまで? なんでだよ」
「既に転移ゲートの調整は完了した、あそこに戻って転移ゲートを設置する。その方が地上に出て徒歩でオーガルに向かうよりずっと速い」
「分かった、この…コイツらも一応回収しときたいんだが…」
「ああっ私の言うこと素直に聞くビームを全員に打ち込んで自分たちの足で来る様にする」
またあのビームを…と思いつつも今はオーガルの街に急ぐ事が黒マントの人権よりも優先された。
カイジスたちはアババババとなった変な連中を従えて宇宙船ゼビルスが埋まっている隠しエリアに引き返した。
そして隠しエリアに戻ると黒マントたちをそこら辺に放置、直ぐに転移ゲートをエゼルに設置してもらいカイジスはその扉を開けてオーガルへと急いだ。
そしてオーガルへと到着したはいいのだが……。
「てめぇっふざけてんじゃねぇぞっ!?」
「おぶぅっ!?」
カイジスとエゼルはオーガルの街へと到着したがそこにグロゴスの姿はなかった。
今のうちにカイジスは危険が迫っている事を冒険者ギルドの冒険者、そしてオーガルの人々に伝えたが…。
カイジスは何故か冒険者ギルドの冒険者から右ストレートで殴り飛ばされていた。
カイジスを殴ったのはギルドで何度か話した事のある顔見知りの冒険者である。
「カイジス…てめぇ何のつもりだ?」
「何のつもりって…」
「グロゴスさんに何の恨みがあってそんな馬鹿な事を抜かしてんだと聞いてんだよ! あの人がどれだけこのオーガルの為に働いてくれたのか、まさか忘れた訳じゃねぇよなっ!?」
「っ!」
その冒険者の言っている事は事実だ。
海を渡って来た冒険者の中で長年このオーガルに残ったのはグロゴスだけだ。
危険な魔物が時折街の近くに現れるオーガルの様な危険な街に住み、縁もゆかりもない他の冒険者にも魔物と戦う為の手ほどきをしてくれた。
カイジス自身もそれを受けたからこそ多少は戦えるのだ。
もしも他の冒険者がカイジスと同じ事を言えばカイジスもとても信じられなかっただろう。
(やっぱり、冒険者としての実積も信頼度も違うか…分かってはいた、けど…)
「グロゴスには俺も世話になった…だがそれとこれは別の話なんだ、本当にアイツは闇ギルドの人間と繋がってんだよ!」
結局カイジスの言葉に耳を傾ける者はいなかった。
誰もがカイジスを恩知らずと軽蔑し、様々な暴言で侮辱した。
それをとなりで見ていたエゼルは…。
「よしっ! グロゴスとか言うのが何かをする前に、私がこの街を消し飛ばしてやろう!」
「ハァッ……やめとけ」
表情こそいつも通り微笑を浮かべているが、気配がまるで悪鬼か何かみたいになっているエゼル。
背後から赤いオーラがオラオラと立ちのぼっていた。
ブチ切れムカムカ丸。
このままだと本当に何かしかねないのもあったり、目の敵にされてオーガルに居場所がないのもあったりでカイジスたちは街から撤収した。
「それにしてもヤバイぞ、このままだとオーガルの連中が…」
「君の故郷の連中ね、見捨てていいと思うけど?」
「いやいやあんなのでも本当は気の良いヤツらなんだって」
「それなら連中が全員土下座で助けを求めて来たら助けると言うのはどうかな?」
「そんなの待ってたら犠牲者とか出るかも知れないだろう? グロゴスは街に居なかった、きっとどっかにアジトとかあってそこに今はいるんだ。何とかそこにこっちから打って出れないのか?」
エゼルはオーガルの街の人々の為に何かをするモチベーションはゼロだった。
あんなの少し…いやかなり痛い目を見てから助けてあげればいいんだよね、とか思っていた。
そんなわけで自分の目的、宇宙船ゼビルスを復活させる事を優先した提案をする。
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