第10話 黒マント

 二人はダンジョンの中を進む、途中で下級ダンジョンでもそれなりに強い魔物が何種類か出現した。


 砂の身体を持ち上半身だけを人型にして拳で攻撃してくるサンドゴーレム。

 岩の身体を持つカマキリで人間の倍以上は大きいロックマンティス。

 宙に浮いた人間より大きいな岩で目玉の様な姿をして幻覚魔法を使ってくるロックアイ。


 下級ダンジョンに何故そんな強そうなのがいるのかと言うと、下級ダンジョンでも最果ての大陸のダンジョンはレベルが違うからだ。


 余所の大陸では上級ダンジョンクラスのダンジョンがここでは下級ダンジョンとして扱われている。


 何故ならここより弱い魔物が出て来る場所が最果ての大陸には存在しないから。


 そしてそんな魔物たちだが全てエゼルが大剣をテキトーに振るうと粉微塵に消し飛んでいった。


 それを横目に本当にコイツってなんなんだ? 異星人ってみんなこんな化け物ばっかだったりしねぇよな…とドン引きしているカイジス。


 その視線の先には鼻歌をフフ~ンとやりながら進むエゼルの姿があった。


「カイジス、次の私たちの目的地はあの転移ゲートのある所に向かうよ」


「あの宇宙船だかゼビルスだかがあった所に一瞬で来れた扉か、なんであそこに戻るんだ?」


「転移ゲートはアレ一つしかないから回収をしたいの、少し調整すればアレを使ってダンジョンの外にも出られるように出来るはず…」


「そんな事まで出来るのな」


「それに残りの異星人の反応があるのはここから徒歩でどちらも数日はかかる場所でね、私が君を担いで走れば数時間で行けるけど、どのみち転移ゲートを使って移動した方が早いの、ほらタイパは大切でしょう?」


「タイパってなんだ?」


 基本的に徒歩移動か馬車で移動する世界観の人間にタイムパフォーマンスなんて概念はない。


 元よりダンジョンの核を破壊してるので今以上に魔物が生み出される事はなくなったダンジョンだ、いずれは全ての魔物が駆逐されただの洞窟になるだろう。


 そして小休憩をはさみながら地上への道を進むことしばらく、カイジスとエゼルは無事に転移ゲートである扉がある場所に戻ってこれた。


 エゼルが転移ゲートに手の平を向けると転移ゲートは光となってエゼルの手の平に吸収されていった。


「よしっ転移ゲートの回収は完了っと」


「そうか、それでエゼルが言ってた転移ゲートの調整ってのはどれくらい掛かるんだ?」


「それは……ん?」


 話をしている途中でエゼルは会話を切り上げカイジスに自分の後ろに来る様に指示する、カイジスは何だろうかと思いつつ移動した。


 するとカイジスたちに声をかけてくる者たちが現れた。


「おいおいお~い、まさかこの俺たち以外でこのダンジョンの奥に来てる奴らがいたとはな~?」


「ああっビックリだ、しかもあんな美女がだぜ?」


「何なら僕たちがエスコートしてあげましょうか~?」


 現れたのは黒いフード付きマントを着て、そのフードで顔を隠した如何にも犯罪者風の怪しいヤツらだった。

 そんな連中の後ろから更に何者かが現れる。


「お前ら、一体何をしている?」


「ボス、こんな所に女がいますよ」


「女? 馬鹿か、こんなダンジョンに女の冒険者が来てなんて……!」


「えっ……グロゴス…さん?」


 黒マントたちの背後から現れたのはグロゴスだった、カイジスは両目を見開き固まる。

 グロゴスも驚いた顔をした、そして溜め息をついた。


「…ちっまさかよりにもよって今日はこのダンジョンに来てたのかよ、しかも実力的に絶対に来るべきじゃない奥地に」


「グロゴスさん……何やってんだ? ソイツらは一体何なんだよ、どう見てもカタギじゃないよな!?」


 黒マントの一人が短剣を手にしてカイジスに答える。


「ウチのリーダーに気安く話しかけんなよ、雑魚冒険者が」


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