第8話 蘇生魔法レベル3

 エゼルはカイジスをおだてまくる。

 カイジスがいつも他の冒険者に小バカにされたり足蹴にされたりしてるのを知っていたからだ。


 それらを知る理由は一度その蘇生魔法を確認して以降ギンちゃんやタマちゃんを光学迷彩で姿を隠してカイジスの様子を見にオーガルの街まで向かわせた事もあるから。


(このダンジョンの地下にあの馬鹿共のせいでの転移事故で宇宙船ごと飛ばされて幾星霜…よもやこんな不可思議な力の使い手が私の目の前に現れようとは…必ず力を貸してもらうからね?)


 ちなみに最初はギンちゃんやタマちゃんでダンジョンの魔物を駆逐し、カイジスを下まで案内しようとしたが下層の魔物は下級ダンジョンでもそこそこ強くギンちゃんたちが逆にやられた。


 それらの残骸を無事な方がダンジョンの浅い方に運んでそれを毎度カイジスが蘇生魔法で直していたりする。


 そのままではカイジスを何時までも自身がいる隠しエリアまで連れてこれないと思い、転移ゲートを設置したのだが、それらについてエゼルはカイジスに説明するつもりはない。


 エゼルは別にこの星の文明にリノベーションとか大革命を起こすつもりなどサラサラ無かった。


 彼女の目的はたった一つ。

 この星で最大のダンジョン『幻螺旋の巨塔』である。


(あれの存在は偵察用の小型ユニットで知っていた、アレだけ育ったダンジョンならそれはもう素晴らしい財宝を溜め込んでいるだろうね、実に踏破が楽しみー!)


 たまたまの事故で来てしまった星でもガッツリ海賊活動をする気満々のエゼルだった。


 しかしその為にはどうしても宇宙船が必要、何より宇宙船がない宇宙海賊とか有り得ないと考えカイジスに宇宙船の復活をお願いするのだ。


 故に全力でヨイショする。

 そしてヨイショされた経験が人よりずっと少ないカイジスはとてもいい気分になった。


「そ、そうか? 俺の蘇生魔法はそんなに素晴らしいか…よぉし分かった、俺に任せろ!」


 カイジスは調子に乗った、そして全力で蘇生魔法を発動した。

 しかし……何も起きなかった!


「………え?」


「あ~こりゃ駄目だな、流石にこんなデカブツは復活出来ねぇみたいだわ」


 カイジスはアッサリ諦めた。


「で、出来ないの!? この宇宙船ゼビルスがないと『幻螺旋の巨塔』を踏破しても財宝を運べる場所がないのに!?」


「えっあんたのあのダンジョンに行きたいの? やめとけっていくらエゼルが強くても手前の荒野の化け物共は大国の軍でも手も足も出なかったんだぞ、やられるのがオチだって」


「今は『幻螺旋の巨塔』の事はどうでもいいでしょう! それよりも何故復活出来ないの!?」


 エゼルは自身の予想が外れて取り乱した、カイジスの両肩を掴んで前後に揺らす。

 カイジスは頭を前後にぐわんぐわんされながらも説明する。


「やっやっぱり~蘇生魔法のスキルレベルが低すぎるからだと思うぞ~」


「スッスキルレベル?」


 カイジスは懐から一枚のカードを見せる。


 名前:カイジス

 種族:人間

 ジョブ:回復魔法師ヒーラー

 保有スキル:蘇生魔法(レベル3)


 そのカードには簡単な情報だけが記されていた。

 それを見たエゼルはなにこれっと疑問を口にしてそれにカイジスが答えた。


「これはスキルカード、俺が使えるスキルとかジョブが記載されている、冒険者カードとしても扱われる大事なカードだ。無くすと再発行にそこそこ金を取られる」


「成る程、つまりその蘇生魔法のレベルが今は3でそのままだとゼビルスを復活出来ないんだ…」


「おうっその通りだ」


「ならどうやればそのスキルレベルは上げられるの?」


「スキルレベルってのは要は練度だ、実際に蘇生魔法を何度も使えばそのうち上がるけど…」


「よしっそこの偵察用の小型ユニットたちを破壊しよう、そしてカイジスが」


「やめろよ! お前には人の心がないのか!?」


「海賊にそんな事を言われても…」

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