第7話 エゼル=グラスバーン

 赤髪の女がいつの間にマンティコアの前に移動したのかカイジスには見えなかった。


「ガォオオオーーーーーッ!」


「吠えないで駄犬、私は今とても気分が良いからさ…それを害されたくないんだよ」


 赤髪の女は手にした黄金の大剣を掲げる。

 その大剣は人外異形を殺戮する機構を積んだ大剣だ。

 金色の刃に赤い光のラインが奔る。


「……起動せよ…『金剛征剣エルドラゴ』」


 黄金の大剣から斬撃が放たれる、その雷は一瞬でマンティコアを切り裂き、吹き飛ばした。


「すっすご……瞬殺とかマジか」


「いやいやっまだ終わらないからね?」


 赤髪の女は真紅の雷を纏った刃を地面に突き刺した。


「『真紅雷霆レッドスプライト』」


 真紅の光が地面を走り地面を粉々に砕いた。

 カイジスは悲鳴を上げ、衝撃で上に吹き飛んだ。

 そして落ちてきたカイジスを赤髪の女が片手でキャッチする。


「おっと大丈夫かい、カイジス」


「なっなんで床をぶっ壊したんだ?」


「このダンジョンの核を破壊したのさ、これであのマンティコアみたいな敵性体は今後出て来る事はないよ」


「……そうか」


「そう言えば自己紹介がまだだった。私はエゼル=グラスバーン、果てなき宇宙そらを渡り歩く宇宙海賊さ!」


「……宇宙海賊ってなんだ?」


 カイジスには赤髪の女の言葉の殆どは意味不明だった。

 ただ一つ分かった事はこの女は何やらとんでもないヤツだと言う事、それだけである。


 そしてカイジスたちはボロボロになった床の上に立ってお互いの身の上話をしていた。


「つまり…あんた…エゼルはこの星とは違う星から来たと?」


「うんっその通り、異なる星々を回り、その星の数々のダンジョンを踏破しては星中の財宝をかっ攫う宇宙海賊、それが私だとも!」


(海賊要素が変なキャプテンハットしかない女が何を言ってるだ…?)


 自身を別の星の人間と語るがその辺りの説明はあの夜空の星のどれかから来ましたと言う感じのをされた時点でカイジスは理解するのを諦めていた。


 エゼルもそんな感じだろうとは理解している、つまりは遠くから来たとても強い冒険者とでも思ってくれれば良いと告げた。


 エゼルの頭の中では冒険者も海賊もアウトローな似た者同士、カイジスの中では冒険者はギリ犯罪者ではなく海賊はガッツリ犯罪者なのだが、その辺りの溝についてはお互いに触れない。


 そしてカイジスは自分がかなり気になっていた事を尋ねる。


「エゼル、どうしてあんたには俺の蘇生魔法が通じたんだ?」


「それは簡単な質問だね、君の蘇生魔法『アルティメットリペアー』はその名の通り『リペアー』、つまりは機械や私の様に機械技術で身体を改造して様々な星での活動を可能とした生体アンドロイドなどを対象とした蘇生魔法だからで…」


 カイジスは理解出来ずアホの顔になる。

 エゼルもカイジスに理解は無理だと早々に理解した。


「……つまり君の魔法は……そうだな、君の魔法は異星人やその技術で生み出された物にしか効果を発揮しないと思うよ?」


「ハァッ!? 嘘だろう俺の魔法…この星の奴らには効果ないのかよっ!?」


「まずないだろう、そもそもこの星にダンジョン以外で惑星外から他の星から接触があるわけもないし…」


「うわ~~マジかよ~」


 エゼルが微妙に口を滑らせたがカイジスは自分の蘇生魔法が異星人専用だという事がショックで聞いていなかった。

 そこで話を進めようとエゼルは改めてカイジスに話しかける。


「とっ言うわけでカイジス! 君には是非とも私が乗ってきた宇宙船ゼビルスをその素晴らしい蘇生魔法で復活させて欲しい! 頼むよ!」


「すっ素晴らしい蘇生魔法?」


「ああっ君の魔法は本当に素晴らしい、よもや自分たちの文明の力では生み出す事はおろかその構造すら理解すら出来ない代物を問答無用で復活させるなんて数多の星を渡り歩いた私でも聞いた事がない、まさに魔法としかいえない力だ」



 

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