第5話 女性の像
ギンちゃんはクワガタのハサミ部分の間にエネルギーを溜めて赤い光の玉を形成しそれを発射する。
ロックスコーピオンは見た目がゴツゴツしている、その見た目通りとても頑丈な魔物だ。
しかしそんなロックスコーピオンが赤いビームやエネルギー弾を喰らうと一瞬で粉々に爆砕してしまった。
ギンちゃんとタマちゃんは強かったのである。
「本当にギンちゃんもタマちゃんも凄い魔法だよな、それなのになんでこんな下級ダンジョンでいつもやられてるんだ?」
カイジスの疑問にギンちゃんもタマちゃんも話せないので答えられない。
そして倒されたロックスコーピオンはその残骸がダンジョンの地面に吸い込まれる様に消える。
後には半透明な茶色の石とサソリの尻尾の先の毒針と鋏が残されていた。
ロックスコーピオンの魔石とドロップアイテムである。
カイジスの稼ぎとなる物だ。
本来ならこんな感じでダンジョン内をギンちゃんたちの先導のもと探索し、魔石やドロップアイテムが集まったタイミングでそろそろ帰るねっと伝えてダンジョンから脱出するのがいつものパターンだ。
しかし何故か今日はいつもと勝手が違った。
今日はギンちゃんたちはいつもより奥にカイジスを先導しようとしていたのだ。
カイジスはダンジョン内では基本的にギンちゃんの後をついて行くだけなのでいつも通りと思ってついて行く。
そして気付いた時にはこれまでと全く違うルートに入り込んでいた事に気付いた。
「どこだここ? ギンちゃん、多分ここいつもより奥の所に来ちまっているよ?」
不安になるカイジスを尻目にギンちゃんはブゥンと奥に飛んでいく。
そこにはダンジョンの壁があるだけ。
……ではなかった。
「なんだ……あれは?」
ギンちゃんが飛んでいった方を見る。
するとそこには壁と一体化する様に奇妙な扉があった。
当然この下級ダンジョンはこれまで多くの冒険者が出入りしている場所だ。
しかしこんな扉があるなんてカイジスはギルドでは一度も聞いた事がない。
未発見の新しいルート?
それとも中に入るとパーティーが全滅必至のトラップルームなんて可能性も。
カイジスとしてはほぼソロぼっちな立場なので危険はあまり犯したくない。
しかし信頼しているギンちゃんがここに案内してくれたと事は何か意味があるのかも知れないと感じでいた。
ギンちゃんたちは扉の前で飛び回りカイジスを急かしている様に見える。
「……分かった、行ってみるか」
カイジスはその奇妙な扉に近づき、そして開けた。
次の瞬間カイジスは見慣れない場所に来ていた。
そこはこれまでの大部屋の数十倍はある広大な空間だ、場の空気感からダンジョン内なのは間違いないがこれまで行き慣れたダンジョンの浅い部分では絶対に無いとカイジスは直感する。
後ろを振り返るとあの扉は消えていた。
そもそも扉を開けはしたが通り抜けた記憶なんてない。
やっぱりダンジョントラップだったかと警戒するカイジス。
その時。
『よくきたね、カイジス』
「…………ッ!?」
声がした、頭の中に響く様な。
女性の声だ。
何なんだと少し混乱していると、目の前の景色の一部が変化した。
先程まではただ広く、何もない部屋の中で見上げる程に高い壁や天井を見ているだけだった。
しかしその壁に突然巨大な鋼鉄の塊の様な何かが壁と天井をブチ抜いて埋まっていたのだ。
そしてその巨大な何かの下には何故か女性の像があった。
銀色に輝く女性の像、しかも全裸である。
それはまた見事なプロポーションを持つ像だった。
カイジスはその女性の像に見とれた。
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