第3話 結論
カイジスは教会の中に入る。
そこには白いフード付きローブと木製のロッド、それと身に着けるタリスマンが置いてあった。
それらはカイジスの私物だった。
冒険者の装備を身に着けてカイジスはオーガルの街の外へと歩き出す。
近くにあるダンジョンの探索へと向かったのだ。
オーガルの街の回りは荒れた大地が広がり、更に大陸の内陸部に進むと地面が隆起して入り組んだ地形の荒野が広がっている。
荒れた大地までならそこまで危険な魔物が現れる事はない、しかし一旦荒野に侵入すると見上げる程に巨大な蛇やサソリやクモの姿をした魔物やキマイラやグリフォンと言った魔獣、果ては地竜すら姿を現す魔境だった。
かつてはその荒野の先に見える異形の塔『幻螺旋の巨塔』を目指して幾多の冒険者が挑み散った。
次に大国が軍事力に任せて侵略しようとしてことごとく失敗した。
やがて誰も手を出すことすらしなくなった、人類の文明も力も及ばない世界である。
無論カイジスはそんな魔境になんて近づく事はない。
その手前の荒れた大地に幾つかある下級ダンジョンに稼ぎに行くのだ。
荒れた大地を歩くこと小一時間程、カイジスの目の前には大きな岩壁がありその岩壁に遺跡を思わせる建造物の入り口が現れていた。
あるのは入り口だけでポッカリと空いたその入り口は岩壁の中へと道が続いていた。
これがオーガル周辺にある数少ない下級ダンジョンの一つだ。
中にいる魔物もカイジスがロッドでぶん殴れば倒せるレベルの相手が浅いエリアには多い。
もちろん群れで来られればカイジスが袋叩きにされるだろうが…。
しかしここには何故かカイジスに力を貸してくれる存在がいた。
「あっ今回は来たのか…」
カイジスの視線の先には銀色に光る虫が飛んできていた。
この銀色の虫はクワガタに似ていた、大きさも似たようなサイズだ。
しかし違う点もある。
まずそのクワガタは生物ではなく機械の虫だった、赤い目を光らせてブゥンブゥンと飛んでいる。
しかし機械なんて物を知らないカイジスには目の前の銀色のクワガタも生物や魔物の一種くらいにしか考えていなかった。
「それじゃあ今日も頼むよギンちゃん」
カイジスは銀色のクワガタに名前までつけていた。
つまりはそれだけこのダンジョンでカイジスはこの銀色のクワガタことギンちゃんと行動を共にしているのだ。
カイジスがギンちゃんと出会ったのは半年前、ダンジョンで道に迷ったカイジスの前にギンちゃんが現れた。
最初な妙な魔物だ、何故俺を襲わないんだ? と怪しんでいたカイジス。
しかしその後についてこいとばかりにゆっくり飛ぶギンちゃんの後を追うとすぐにダンジョンから脱出する事が出来たのだ。
それをカイジスは恩に感じた、その後もカイジスが一人でダンジョンに入ると何度か見かけ、『とある事』がありその後はダンジョンの入り口に来るとほぼ必ず現れる様になっていった。
「けどギンちゃん、この前あの連中と一緒の時は全く現れ無かったよな?」
あの連中とはカイジスを足蹴にしていた二人組と宿で静養しているもう一人を加えた三人組である。
カイジスがこの下級ダンジョンに入る時は必ずギンちゃんの後を追う様に進む、すると魔物の群れと全く出会わなかったのだ。
ごく偶に一体だけの魔物と出会う事はあったがそれはカイジスでも対処が出来る手合いばかりだった。
その理由をカイジスはギンちゃんはとても頭がよく、そしてダンジョン内の魔物からカイジスを避けて先導をしてくれているのではと考えた。
何故ならギンちゃんの先導なしでこのダンジョンに挑んだ時は散々だったからだ。
その結果またソロぼっちに逆戻りなってしまったカイジスだが、まっそれでも良いかと考えることにした。
(実際に組んだ冒険者よりもギンちゃんの方が頼りなるしな、何度か他の冒険者の組んだけど探索が上手く行かないと直ぐに不機嫌になるのには付き合いきれないからな~)
基本的に一人と一匹で誰に気負うことなくダンジョンを探索する気楽さが自分には合っている。
そう結論を出してカイジスはギンちゃんと共に下級ダンジョンの中を進んだ。
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