第2話 実はお人好し?
「……すまないな」
グロゴスは懐から銀貨が幾らか入った袋を取り出して二人に渡す。
「いっいいですか?」
「あんなのでもこの街で昔から見てきたヤツだ。大方なにか馬鹿な真似でもしたんだろう事は想像がつく…」
「グロゴスさん…なんであんなのを…」
「……ただの腐れ縁だよ」
二人の冒険者は袋を受け取るとそれ以上は何も言わずに冒険者ギルドの外に出た。
しかしギルド内の空気はよろしくない、特にカイジスへの向けたヒソヒソとした会話はカイジス自身にも届いていた。
やれまたアイツかだのまたグロゴスさんの顔に泥を塗ってるのかだのと言う言葉が本人にしっかり聞こえていた。
「…………」
カイジスは無言で立ち上がり彼もギルドを後にしようとした。
しかしその前にグロゴスの横を通るタイミングにてボソッと呟くように…。
「…ありがとうっす、グロゴスさん」
「……おうっ」
カイジスはそのまま横を通り抜ける、その時グロゴスがカイジスの背中に声をかけた。
「カイジス、無理に冒険者を続ける必要はないんだぞ? オーガルには人手が必要な場所と仕事は幾らでもある。この街で生まれ育ったお前なら仕事を紹介するくらい…」
「……いやっ俺はまだ…冒険者でいたいんで」
カイジスはそう言うと冒険者ギルドを後にした、グロゴスはやれやれと肩をすくめた。
冒険者ギルドを後にしたカイジスはオーガルの街の外れにあるボロボロの教会に来ていた。
五年前にカイジスはこの教会で『天職降ろしの儀』を行ったのだ、それ以降はオーガルの街の人口も減り続け今では神父もシスターも居なくなり廃れてしまった。
しかしカイジスから言わせればこの教会のおかげで冒険者への道を歩む決断が出来たからと通える日は今も教会に来て箒を手にしてホコリやら小石やらを清掃している。
「本当にお前は律儀だな、もう少しそんな所を相手に見せるようにすればあんな毛嫌いされる事もないと思うぞ?」
「……グロゴスさん」
グロゴスはカイジスが教会に通っている事を知ってる数少ない人間だ。
グロゴスがカイジスの事を気にかける理由としてカイジスは他人に誤解されやすい性格をしていると考えていた。
グロコスは話を続ける。
「…あの二人組、どうせお前を荷物持ちだと馬鹿にしてはした金で雇おうとしたとかだろう? お前が馬鹿正直にヒーラーなのに回復魔法を使えないと話したから足下を見たんだ」
「まあその通りっすね、ダンジョンを探索してる時もこっちを見下してくる言動と態度を隠そうともしませんでしたし…」
「全く、ならなんであの場でその事を大きな声で口にしなかったんだ?」
「まあ魔物の襲撃を現地の冒険者なのに予想出来なかったのは事実ですから、それに下手に事を大きくするとアイツらとパーティーを組もうって冒険者も居なくなるかもって…」
「か~本当にお前は変な所でお人好しなのか何なのか…」
グロゴスはアレだけ足蹴にしてきた相手の今後の冒険者活動にまで気にして全ての泥を自分が被るカイジスに呆れてしまった。
「……まあいい、アイツらには荷物持ちをする冒険者舐めたような態度は取るなと今度会ったら伝えておくぞ」
「うすっ」
「ふっそれと、さっきはああ言ったがカイジス、お前はお前らしく冒険者をやってんなら余計な事だったな。ちゃんと実力をつけてきたらパーティー組んでやるから頑張れよ」
「……グロゴスさん」
グロゴスは背を向けてオーガルの街に戻った。
カイジスはその背を見ていた。
しばらくそうしたカイジスは気を取り直してさっさと教会の清掃を終わらせた。
(そうだよな、いつまでも失敗を気にしてても仕方ないんだ。物事は前に進めないと何も好転なんかしないんだから…)
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