ノーマルヒーラーとウルトラレアな異星人たち~俺の蘇生魔法は異星人たちにしか発動しない…まあ復活させた連中が最強なので俺は雑魚のままでも良いらしいけどな~

どらいあい

第1話 ポンコツヒーラーのカイジス

 そこは最果ての大陸と呼ばれる未開の大地、あるのは立った一カ所だけの港街オーガルだけだ。


 過去には様々な腕に覚えのある冒険者が訪れた、理由はこの大陸の奥地にありながらその巨大さ故にオーガルからも見える謎の塔へ向かう為だ。


 そして誰一人として帰る事はなくいつしか冒険者たちも殆ど来なくなった。

 『幻螺旋げんらせんの巨塔』その異様からダンジョンである事は間違いないが、それ以外全てが謎に包まれた存在である。


そんなダンジョンに今尚いずれは挑むのだと燃える冒険心を持つ者がいた。

 その者の名は……。


「オォラァアッ! このポンコツ! ポンコツヒーラーのカイジスさんよぉおっ!」


「お前は何でヒーラーなのに回復魔法一つ使えないんだ!? どうして何も出来ないんだこの無能がぁあーーー!」


 二人の男性冒険者に足蹴にされながらダンゴムシのようにまるまる男がいた。

 歳は二十歳で白い髪と黒い瞳を持つ男だ、ただ冒険者としてはガタイが良いとはお世辞にも言えず全体的に線は細い印象を受ける。


 青年の名前はカイジスである。

 カイジスは別にマゾではないので足蹴にされたら普通に怒る。

 彼は身を守りながら反論した。


「だっだから最初に言ったじゃん、俺はジョブはヒーラーでも回復魔法は使えないって! 使えるのはその上位魔法にあたる蘇生魔法だけだってさ! そっちも荷物持ちとかすれば問題ねぇって…」


「てってめぇふざけんなよっ!?」


「お前が使えるって言った蘇生魔法、全く発動しなかったじゃねぇか! おかげで仲間の一人は宿で静養中なんだぞコラァアッ!」


 二人の冒険者の言葉は事実だった。

 カイジスは本当に蘇生魔法は使える、しかしどう言う訳か人間や動物などの生物相手には一切発動しなかった。


 回復魔法師ヒーラーと言うジョブを十五歳の時に協会の【天職降ろしの儀】で授かり、コレなら冒険者として活動出来ると小躍りした日は遙か過去。


 今はこのオーガルの街で知らぬ者は誰もいないと言われるポンコツヒーラーだった。

 ちなみに二人の冒険者はこのオーガルに海を渡って来て日が浅い余所者である。


 これ幸いにと自分の周囲からの評価などは全て隠してパーティーを組んだカイジスだ……詰まるところ自業自得!


 しかしカイジスは諦めて謝罪したりはしない、そんな事をすれば医療費だの慰謝料的な物を請求されてただでさえお財布が軽いカイジスは生活が出来なくなる。


 故にカイジスは決して謝らない。

 99%自分が悪くても残りの1%に全てをかけて『どっちも悪かったよね』に持って行く腹づもりだった。


「俺は何一つ嘘は言ってないぞ! 蘇生魔法が使えるのはスキルカードを見せたんだから本当だって分かってるだろう!?」


「てめぇ…実際に使えなかったのに開き直る気か!?」


「俺は蘇生魔法を使えると言ったがその対象にお前らが入るなんて一言も言わなかっただけだ、俺は何も嘘は言っていない」


 カイジスのあんまりな言い分にキレた二人の冒険者が蹴りの威力とスピードを上げてダンゴムシモードのカイジスを執拗に蹴りまくっている。


 すると一人の冒険者が声をかけてきた。


「おいっそろそろ辞めろ、ソイツが回復魔法を使えないのは知ってるんだろう? それ以上は冒険者活動にも支障が出る、やるなら俺が力ずく止めるぞ?」


 短い金髪と青色の瞳を持つ三十代中頃の男性冒険者だった。

 使い込まれた鎧や防具、そして背中に背負った大剣から一目で歴戦の冒険者だと分かる男だ。


 男の名はグロゴス=ガード、このオーガルの街で最も高い実力を持ち実績もある冒険者だった。


 それもただの冒険者ではなくすぐ隣に未開の荒野が広がりいつ荒野の魔物が襲撃してくるかも分からないこのオーガルで若い男には戦いの手ほどきをしたり避難場所を作りいざとなればそこへの避難誘導の訓練なども先頭に立ち行っている。


 名実共にオーガルで最高の冒険者だった、そんなグロゴスに止められた二人の冒険者もあのグロゴスの言葉ならと蹴り攻撃をやめて渋々ながらカイジスを解放する。


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