22
『んっ……んん?』
小さな物音が気になって目が覚めた。何の音だ?と、手を付いて体を起こそうとして。ふと、何げなく周りを見ると。
頭にハテナが出来た。見知らぬ場所、寝る前までは寮にいた筈なのに。そして、横にはメイドが寝ていた。物音が煩くて寝息も聞こえづらく。つい、嫌な予感がして少し大きな声でヤコを起こした。
『ヤコッ、ヤコッ!起きろ!』
良く眠れるな、こんな状況で。と思いながらも、自分もつい数秒前まで爆睡してたのだから他人の事は言えない。
と言うか、起きたばかりで正直な事を言えば、まだ混乱していた。と言うか何も情報が無い。分かるのは、此処が倉庫っぽい馬車だと言う事。
そして、人質と言うには割と雑に放置されていた事ぐらいだろうか。と久々に脳みそを働かせ、真剣に考えていたら。
「お嬢様のえっち」
『どんな夢見てんだ、おい!』
そんなふざけた声のせいで気が緩み、つい大きな声を出してしまったが我は悪く無い。悪いのはヤコだ。それは誰が見ても明らかな筈。そう思っていると、ドアが開き中からガタイの良いおじさん達が入って来た。
「成程なぁ、あの女の担保だ。上物じゃねえか」
「間違いねえ、こりゃあどっちに転んでも盛り上がる事間違いねえや」
等と、何にも知らない我らを置いて勝手に盛り上がっている。何だろう、祭りでもやるのか?あー神輿担ぐからガタイの良い人が集まってるのか。成程ねー。
「お嬢様、行きましょう」
へ?何処へ?
何も聞いて無いけど、と思いながらも差し伸べられた手を掴み立ち上がる。
「こっちだ。そのまま着いて来い」
そのまま暗い倉庫を出て、辿り着いたのは目が眩むような眩い光と騒がしい音。そこは
「お?やっと来たか。遅えぞおい」
「仕方ねえだろ?大事な商品なんだからさぁ。いつものねぼすけ親父達みたいに叩き起こして怪我でもさせたらどうするんだ?」
「確かにな」
入り口に立っていたオッサンと、案内のオッサンが喋っている。結構荒っぽいんだな。怪我って。
「……なんか話が長くなりそうですね。ちょっと席を外すので、もし戻って来たら適当に誤魔化しといてください」
『あ、ズルい。我も行きたかったのに!』
ヤコはそう言って猫になり、そのまま何処かへ行ってしまった。
適当にって……。何でも良いぐらい困るって事を知らないのかヤコは!
「おい、もう一人の女は何処行ったんだ?」
『あー何処だろ?分からないや。ごめんな』
「口の聞き方には気を付けろよガキ」
睨み付けて、強面顔を近づけた後。再び着いて来いと言われてその通りにした。
「……さん。勘弁してくれませんか、これ以上お嬢様を巻き込むのは」
「しょうがないじゃん。二人しか思い付かなかったんだから」
「何百年も生きているのに保証人の一人や二人も増えないんですか」
「長い付き合いでも裏切られる時は一瞬だからね〜。それが家族だろうと。そうでしょ?ヤコちゃん」
「はぁ、今はその話はどうでも良いでしょう」
「そうだね、今は弟子の方が大事か。謝らないと」
『あれ?師匠だ!?あ、ヤコも!ほらいたじゃん』
「たまたま見つかっただけだろ。なんでそんな得意げなんだ」
なんだ、こんな所にいたんだ。見つかって良かった。でも師匠は何で此処にいるんだ?
「この女が此処にいるのは、此処で借金をしたからだ。度を超えた額をしたせいで一人ではとても払えないから、身代わりと保証人を兼ねてお前らが呼ばれた訳だ」
成程?成程!?
『ししょー……』
ジト目で師匠を見つめると、申し訳無さそうな目で逸らされたまま言い訳が始まる。
「ごめんてぇ。結局何が欲しいか分かんないから現金で良いやって思ってさ、調子に乗ったら負けちゃったんだよ」
良く聞く感じだなぁ。これに懲りて辞めて欲しいけど、それならそもそもこうならないし。はぁ……。
『ちなみにいくら?』
安いと良いなぁ。
「二億だそうです、それを私達が返さないと帰れないらしいですよ」
ニオク。ニオクかぁ……は あ あ。
「ちなみにその女の見請け金は別な」
何それ。人の代金みたいなやつ?
『ちなみにいくら?』
「お嬢様聞くのは辞めましょう」
「それも二億だ」
『はぁぁ』
なんそれ。やばえじゃん。四億って事?どうやって返せと?
「お嬢様このまま帰りましょう」
『あ ぁ』
「お嬢様?」
『やっべえなぁ』
「帰れねえぞ、返す迄はな」
こうして、出入り口を塞がれた我らは大人しくカジノ内を物色する事にした。
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