20


「お嬢様、今日も一緒に買い物行きましょう」


『えーやだ』


何で外に出なきゃ行けないんだ。いや、出た方が良いのは分かるけど面倒臭い。動きたく無い。アレからちょいちょいこう言われるけど、間違えないで欲しい。我は外が大好きなわけじゃ無いから。


『一人で行ってくれば良いじゃん。我は一人で留守番してるからさー』


もう少し寝てたいしな。それに晴れてると花粉がヤバイ。鼻がグシュグシュするんだよな。薬飲まないと。


「はぁ……分かりました。本当はこの手は使いたく無かったのですが、仕方ありませんね」


「春、出会いと別れの季節。お嬢様がゴロゴロと部屋の中で堕落した生活をしてる内に外の世界は色々と変わっているんですよ」


へぇ、一体何が変わったって言うんだ?まさかまた二百年ぐらい経ったとか言うのか?そしたら驚くけど。


『例えば?』


「新商品が出ます。そして、お嬢様の好きなお菓子は無くなりました」


『は?何、何が無くなったんだ』


「それを実際に見てみるのはどうでしょう?」


成程な!そう言う手か。だが、甘かったな。こっちは伊達に二百年引きこもってないからな。そっちがそうなら。


『残念だったな!こっちにはパソコンがある。今の時代、ネットで調べれば何でも済む』


「……哀れですね」


『?何がだ』


何故だ。ネットで調べれば何でも分かる。これが最善の策だろ?


「気付かないのですが?それは確かに便利です。私には使えませんが、ですが!それを見てしまえば、あなたの舌はそれを食べたくなる。そうすれば、お嬢様。貴方は自然と外に出る事になるのです」


『もう疲れたし、良いよ。分かった。今日は我の負けで良いよ』


こうしてる時間もアレだし、結局いつも通り我が折れる。まぁそれでも全く痩せないんだけど。








『か、買い過ぎじゃ無いか』


「そうですかね、今日は抑えめなつもりですが」


そう淡々と言うけど、やっぱり買い過ぎじゃないか?両手に持つ荷物が滅茶苦茶重い。マジで重い。


「……そうだ。少し寄りたい所があるのですが、良いでしょうか?」


『良いぞぉ』


はぁ……耐えろ我。


「本当に大丈夫ですか?駄目そうなら一度家に帰ってから私一人で……」


『良いって我も行くよ!』


こうして、少し寄り道する事になった。因みにどこへ行くんだろう?


「あぁ、それは内緒です。行って見てからのお楽しみって奴ですね」


心を読まれた様な気がするけど気の所為だろう。そうか、それを楽しみにしながら進むしか無いなぁ。


『もしかして、この量をいつもヤコ一人で買ってるのか?』


「まぁ、そうですね、最近皆さん忙しくて……あぁ、でも全然大丈夫ですよ」


『これからは我も行くよ、頼りにならないだろうけど』


あまり力が無いけど、一人よりは二人の方が荷物だって多く持てる筈だし。


「本当ですか!?やっt……んんっ。申し訳ございません。お嬢様の手を煩わせてしまって」


『全然良いぞ?我だっていつも暇だし。頼りになるかどうかは分からないけどな』


「いるだけで良いんですよ。っと着きましたね。そこのテラスの席で座ってて貰えますか?」


『分かった』


オシャレな外見だなぁ。引っ越してからあんまりここら辺出歩かなかったせいで、初めて見た。こんな店でパーカーはアレだな。ちょっと目立つかもしれない。そう思って、服を変えて黒のワンピースに変えた。


『はぁ、重かったぁ』


椅子に座って、少し休憩しているとヤコが戻って来た。


「お待たせしました。少しすると、ドリンクが届くのでそれまで少し休んで行きましょう」


『何頼んだんだ?』


「私は、アイスカフェオレ。お嬢様のは勝手にオレンジジュースにしましたが、良かったですかね?」


『流石だな』


「お待たせしました、アイスカフェオレのお客様〜!」


「はい、私です」


「こちら、オレンジジュースです!」


『我だ。ありがとう!』


喉乾いてたんだよなぁ、美味っ。カラッカラの喉が潤うわ。


「それから、こちらが生チョコクリームクレープです」


『?』


「あ、私です」


『え、え?』


「そして、こちらが期間限定の桜餅クレープでございます。ごゆっくりどうぞ!」


「ありがとうございます」


店員が店へと戻ったタイミングで我は尋ねた。


『ヤコ!どう言う事だ?』


「美味しそうだったのでつい、すみません。勝手な事をして」


『……』


「美味しそうだし、食べませんか?」


『だなっいただきます!』


手元に置かれた、ピンク色の生地とこし餡が美味しそうだ。


『おぉっ桜餅だ』


「こっちはチョコレートです。生地がチョコでクリームもチョコで滅茶苦茶濃いですね」


『甘っ』


「……」


じーっと見られてる。何だろう?もしかして。


『んっ!』


食べたいんじゃないのか?そう思って差し出したんだが違うのか?


「あ、あむ。


あ、ありがとうございます。私のもどうぞ!」


目の前にチョコクレープが差し出されたのでそのまま食べた。


『甘っ!』


口の中が、今までで一番甘ったるくなった気がする。後、これって。いや気にする方が野暮か。我は気にしない。何故なら、大人なレディーだからな。


因みに体重は減らなかった。むしろ太った。そろそろ何か対策を考えないと。

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