19.5


「これは……どうすれば良いんだ?まさかこうなるとは思わないだろう」


《コメント欄》


・何とかしろ本部長

・取り敢えずヴァンちゃん起こしてお化け屋敷行こう

・頼んだ本部長!

・早くしろ本部長

・お前しかいない


「そう言われてもな……」


全く持ってどうする事も出来ない。私は取り敢えず、そばで座り込んで動かなくなった少女を励まして席に移動させながら、この場にいる筈のこの企画の発案者の我が娘とその友達を恨んだ。


そもそも、どうしてこうなったのか。それは……意外にも彼女から言い始めた事だった。







《一週間前 深夜 配信中》 (良い子は寝る時間)





『くぅぅ……悪い事してる気分でテンション上がるぅ!』


ご近所に配慮しながらも、ウキウキでお湯を沸かしカップ麺に注ぐ。


《コメント欄》


・お酒呑んだせいかクソテンション高くて草

・太るぞ

・太っても可愛いから良いんだよむしろそれが良いんだよちょっとムチってしててだらしない方がこっちのテンションも上がるんだよ分かったらもう二度と言うんじゃねえぞクソガキが

・分かった俺が悪かった

・変態がブチ切れてる……

・ネットは怖いなぁ



『なんか荒れてる?喧嘩は辞めてくれよ?』


確かにお酒とカップ麺は太るかもしれない。でも、食べた分動けば良いんだろ。動けば。


『にしても、もうこんな時間かぁ。ラーメン食べたら寝ようかな。丑三つ時だし、お化け出たら怖いし』


絶対に見たく無いし、会いたくも無いからな。


《コメント欄》


・怖がってるけど、アンタもそっちの類なんだよな

・確かに。吸血鬼もモンスター系で草

・同族嫌悪か?

・恐怖映像になるのか

・お化け屋敷も行けないのか

・雑魚過ぎ

・王の威厳が泣いてるwwww

・見た目通り子供だから仕方ないな



『あ?何だ。このやろー』


人が折角楽しい気分で配信してるのに。何?お化け屋敷?……本物のお化けは怖いけど、お化け屋敷のお化けは人だろ?本物じゃ無い。ならいけるんじゃね?酔いが回って来たのかクラクラする頭でそう思った。


『別にお化け屋敷ぐらい行けるが?怖く無いし、後子供じゃない』


《コメント欄》


・こっちもキレてて草

・喧嘩は辞めろ(売られた喧嘩は買わないとは言ってない)

・お前らの喧嘩はお前らの物。我の喧嘩は我の物

・子供だろ

・BBAだぞ

・ほい、遊園地のお化け屋敷のHPのURL


『あっ、待ってHPの時点で怖い!』


いきなりビックリさせるのは駄目だろ。心の準備とかがまだなのにさ。


《コメント欄》


・もうアウトで草

・キレるのは草

・急に叫ぶな

・カップ麺伸びるぞ


『あっ、くそ〜忘れてた。食べなきゃな』


麺がスープを吸ってかなり濃厚でジャンクな味になり、罪悪感をより強く感じてとても幸福感を感じる味だった。


『味濃っ!うまっ』







そこから巡り巡って本部長に連絡が来て、揺すったり胡麻吸ったり胡麻貸してどうにか貸切をした。んだが、娘は諸事情で来れなくなり、その友達は仕事が終わらず来れなくなった。結果、気合いで有休を取った私だけが来れた。あっ、いや彼らもいたか。


「大丈夫ですかお嬢様膝乗ります?」


ポンポンと膝を叩くメイドと……。


《いやぁ、友達出来るかもしれないっすね。いやぁ楽しみっす〜》


《いやいや。お化け屋敷だが、此処には化け物はいないぞ。中身はヒトだぞ》


《ええ〜そ、そんなぁ。詐欺じゃ無いっすか》


《ってかお前そんな事も知らないのか?》


《元々ヒトの頃から引き篭もりだったんで、外の物はあまり知らないんすよ》


グールと蝙蝠。はっ!もしかして、この中で人間は私一人なのでは。そう思うと居心地がかなり悪くなった。

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