16
《なぁ、俺の目がおかしいのかな》
先輩がふとそんな事を言った。……そもそも蝙蝠は目が発達してないから見えないんじゃないかなんて事は言ってはいけない。
《そうですね、僕も年かな。つい先日殴り合ってた筈なのに》
今は和気藹々とお互いの焼肉をあーんし合っている。あっ、ご主人の方が熱そう。
《何であんな仲良いんですかね》
《知らん、元々師弟関係だったけどそんなに仲良く無かった筈だぞ。片方同士はな。それに良くみろ、ヴァロの方は口元がひくついているだろ》
あれ熱くてハフハフしてるだけじゃないんすか?
《そうとも言うな》
《そうなんじゃないすか》
思わず突っ込んでしまうとご主人が会話に入ってきた。
『……だって、これから一緒に暮らす事になるんだから仲良くしないといけないだろ。居心地悪くなるじゃん。だろ?』
……ん?あ、あー今日四月一日か。全部嘘っすね!
『あっそうなの?曜日感覚狂ってて分かんないわ。へぇ、何嘘付くかな。因みに配信者ってどんな嘘ついてんだろ。SNS見てみよ……』
食事中にスマホを取り出して、見始めるご主人。ヤコ先輩にバレたらやばいっすよコレは。
『……なんかTS多く無いか?女体化とか男性化とか。後は結婚したって言う嘘とかか。……どっちも出来そうだな。うーむ悩む』
《ってそれより、ししょーが此処に住むってどう言う事っすか?》
『あー、それはなパチプロになった師匠は……』
『ヴァロお嬢様、さっさと食べてくれないと、いつまで経っても片付けられないんですが?』
……教えてくれるよりも先に、先輩が雷を落として遅くなったっす。
落ち込んだご主人を励ましながら後で聞くと、パチンコで賞金全部スッて住む所も無くなったらしくほっとけなくて此処に住んで貰うことにした。
ご主人が優しくて、思わず《いや、アンタも居候みたいな物だろ!》って突っ込みそうになったのを必死に飲み込んだ。
『やぁ、我が血肉となる者達よ!我が名はヴァンパイア・ロード!吸血鬼の王である!』
《コメント欄》
・お、ん?あ、おはよう!
・驚いてて草
・そりゃあね?最近略されてたし
・それもそうか
『……よいしょ、ええっう"ん"っ。あぁ、今日はちょっと大事な話があるんだ。聞いてくれ』
《コメント欄》
・?
・ん?
・どうした
・今日はゴスロリだ
・本当だあのネグリジェじゃない
『えっと、そうだな。……実は我、結婚したんだ』
エイプリルフールに前世の事も含めて全部言って元男でTSしましたでて言うネタにするのも良いかなって思ったけど、信じられそうだから辞めた。やるなら突拍子も無くて面白い方が良い。
《コメント欄》
・結婚したのか?俺以外のやつと
・いやそんなにショックは無いな。だってほら佐藤さんと……
・確かに親公認の関係だったなwwww
・今日エイプリルフールだぞ
・どっちだ?
『私事になって大変申し訳ないと思うが、これからも活動を続けて行く中で黙っているのはあれだと思って今回このタイミングで喋る事にしたんだ』
こんな感じかな、まあ良いや適当にやっていこう。にしても楽しいな。
《コメント欄》
・相手は誰なんですか?
・ファンの方とも交流があったと聞いてますが
・対吸のどっちなんですか?それともメイドさん?飛び越えて蝙蝠?
『えーお相手の方に関しては、プライバシー保護の為。ご了承下さい』
《コメント欄》
・私達を騙してたんですか?
・何処まで進んだんですか
・書類などの提出はしたのでしょうか!
《boxbgcolor:#ff3700》《color:#ffffff》【¥78880】《対吸血鬼対策部隊の糖分担当》
『明日楽しみだね』
『え?何の話?怖い怖い』
いや、マジで知らないんだけど我。え?どうしよう。結婚って血の繋がりができただけだぞーって言って、メイドと眷属関係を結んだって事で終わらせようとしたんだけど。
《コメント欄》
・本人が困惑してて草
・それより結婚よ
《対吸血鬼対策部隊の糖分担当》 結婚式
・……
・反応困る嘘辞めてくれ
・マジ?
我もう知らないぞ。一回深呼吸をしてからどうにでもなれと思い、少しの悪戯心で滅茶苦茶にする事にした。
『俗に言うハーレムって奴だな』
《コメント欄》
・は?
・情報の暴力すぎる
・何?エイプリルフールってこんな心理戦みたいな感じだったっけ。頭痛いんだけど
・わけわかんない!!!
『じゃ、最後に今日はエイプリルフールだから。全部忘れて、ゆっくり寝てくれよ〜!じゃあおつかれーい』
我はニコッと意識的に笑顔をカメラに向けて、元気良く手を振る。やっぱり予定通りには行かないもんだなぁ。何事も。
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