15


『グレちゃおうかな』


ん?そんな驚いた顔をするなよ。いやいや気持ちも分かるだろ?


だってさぁこの世の中正しく生きてたって損するだけだし、なら好き放題やりたい放題やった方が良く無いか?それで誰かに迷惑を掛けるのも仕方が無い。って言うのは勿論吸血鬼ジョークなんだけど。


……本当はさ、悪ってカッコよく無いか?悪の組織とかさ。正義より悪の方が魅力的でカッコ良くて憎めない様な気がする。まぁ、個人の感想だぞ勿論。って事で我は悪の道に進む事にする。で、最初の発言に戻る訳なんだけど。


グレ方が分からない。と言うか悪=グレるで合ってるのかな。そこがちょっと心配になって来た。よし、調べるか。『グレる 意味』で検索っと。




成程、ヤンキーみたいな感じか。暴走族になって暴走するか。サングラスかけて単車で爆走して。良いな、やろう。な、やろう!グゥル。


《はい?僕ですか?》


『そう。一緒に暴走して、大人の階段を登ろう!』


こうして、我とグゥルは大人の階段を登る為、夜の街へと飛び出した。配信も休みだ。


「ご飯もう出来ますけど、食べないんですか?ヴァン様」


そう言われたらさ。……。


『食べる!今日は何だ?』


「ハンバーグですよ。明日はカレーです」


よし、ハンバーグ食べたら暴走しに行こう。爆音で人を威嚇して止まらせながらカツアゲをしよう。他人に迷惑を掛けずにな。


「それから、外に用事があるんだったら私が行ってきますよ?外は暗いですし。何が欲しいんですか?」


『自由』


「今自由じゃないんですか?」


自由じゃ無い。だからこそ暴走するのだ!夕飯を良く噛んで、食べ終わった我はグゥルを連れて外へ出た。


「日を跨ぐ前迄には帰らないと迎えに行きますからね」


震えながら我は無視をした。




「……迎えに行くタイミング逃しましたね、まさか一週間も帰ってこないとは」


『ただいま……』


「……テレビの音で聞こえないですね。あれ?特集だ。何でしょう」


テレビにはサングラスを付けた何処か見覚えのある金髪の子供が焼き芋屋の車体とツーショットを決めている姿が映った。タイトルは『最近バズってる話題の焼き芋屋さんの色々な理由について尋ねて見ました!』だ。


「最近、この季節になると食べたくなるのはそう!温かくてホカホカの焼き芋ですよね、今回はその話題の焼き芋屋さんを尋ねて見ました!」


アナウンサーがそう言った後、ずらっと並んでいる人達が写される。どうやら全員、焼き芋屋の客らしい。凄いな大繁盛ですね、私は知ったこっちゃ無いですけど。


「数えて見たところ十人程いました。平日の深夜なのに凄いですね……何が彼らをそこまで待たせるのでしょうか」


アナウンサーの声に同意する。私もそんなに待てませんよ。ってか帰るわ。


「待っている人に尋ねて見ましょう!すいません、何でこんな遅くに待っているんでしょうか?」


「そりゃあね、焼き芋を食べたいから。それから大将ちゃんが可愛いから。二つの欲を揺さぶられて気付いたら此処に並んでいました。それが答えです」


「な、成程。あ、次はあそこの列の一番最初に並んでる方に聞いて見ましょう!あ、対吸の方ですか?テレビなんですけど撮影大丈夫ですか?」


「あー、顔出しは辞めて欲しいですね。それ以外なら。推し以外に顔面を見られたく無いので」


『は、はい。お姉さんはどれぐらい待ってるんですか?』


「ずっとです、盗ち……風の噂で彼女が何処かへ行ったのを知ったので有休を取って来たので問題は無いです」


「これで有休が取れるなんて優しい上司さんなんですね!」


「ええ、一応理想の父です」


『おわっ、また佐藤さんいるじゃん。帰ってくれない?カツアゲするよ』


あ、思いっきり店主さんの素顔が出てますね。凄い眠そう。サングラスもしてないですし。


「いくらでも捧げます」


『冗談だから、そのブラックカードと暗証番号付きのメモを渡すの辞めてくれないか?』


「いくらでもあげるのに」


「店主さんが今出ましたね、あのすいません!どうして、焼き芋屋さんを始めたか教えて頂いても宜しいでしょうか!」


それは私も気になる。一週間、何処かへ行ったと思ったら突然焼き芋屋さんを始めたんだから純粋に何やってんだろうって思う。


『何故石焼き芋の屋台車を始めたか?……グレようと思ったんだよ。最初はバイクで爆音でエンジン蒸したりとかやろうと思ったんだけど、普通に迷惑だなって思った。じゃあ迷惑にならない不快にならない音なら良いなって思って考えたら、石焼き芋の呼び声ならギリギリ迷惑にならないんじゃないかと思ってな。警察騒ぎにもならないだろうし』


「成程、変ですね。何か伝えたい事とかありますか?」


『そうだなぁ、待っていてくれてるかは分からんけど。メイドがいてさ、一言言いたい。遅くなってごめんって、まあ直接伝えるのは難しいと思うからこれで伝わると良いな』


……。


「絶対直接の方が良いと思いますけど。と言う事で!焼き芋屋さんの意外な誕生秘話が聞けました!」


それで特集は終わった。はぁ……。


「……カレー。一週間寝かして凄い事になってると思いますけど、食べますか?」


『怒ってないのか?』


「一週間も経てば、怒りよりも心配が上回りますよ。まあ二百年よりはマシですけどね」


『二百年のカレーってどうなるんだろうな』


「さぁ、どうなんでしょうね」


全員分のカレーライスをよそって皆で食べました。やっぱり皆で食べる方が美味しいですね。


『か、辛っ!こんな辛かったっけ!?』


そしてやっぱりご主人に激辛は早かったみたいですね。今回のちょっとした罰として我慢して貰いましょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る