12


ずっと部屋にいっぱなしなのもアレだなと思って外に出てみた。んだけど……。


「にゃあお」


『に、にゃお』


何でこうなったんだろうか。今、我は猫カフェにいる。あまり猫が好きじゃないのに。


「ぁあ。可愛い……」


塩さんのせいだ。猫カフェにいるから来て欲しいと言われ、来たら猫を抱っこする事になった。可愛いのは分かるけどさぁ。


「アンも呼べば良かったかも。いや、煩くなりそうだし良いか」


それにしても猫カフェなだけあって、猫がよりどりみどりだ。沢山居てそれほど好きじゃない我でも癒される気がする。そんな事を考えていると、店員さんが近くに来て話しかけて来た。


「ネコちゃん可愛いですよねぇ。特に此処のネコちゃんは人見知りもしない良い子ちゃん揃いなので最高ですよ〜」


……我は割と人見知りするタイプだから、突然現れて話振るの辞めて欲しい。願いが伝わったのかどうか。店員さんが抱いていた猫が手から抜け出し、よじ登って我のところにやってきた。


そして、噛まれた。


『イタッ』


ちょっとした散歩のつもりだったから血を抜かなかったからか、噛まれて血が少し出た。痛え。


「ごめんなさい、この子何故か初対面の人に対して良く噛むんですよ。だから抱いていたんですけど。本当にごめんなさい。絆創膏持ってきます」


慌てて店員さんは店の奥へと走って行った。って、猫。置いてってるし。


「……」


目があった。


『な、なんだよ』


暫くじっと目を合わせていると、店員さんが戻って来て絆創膏を貼ってくれた。


「じゃあそろそろ配信やる?」


え?


『いや、聞いてないし。持って来てないぞ』


「ん?ならカメラがあれば良いんでしょ?ならスマホで充分。ハイ解決だね。レッツ配信☆」


そう言って渡されたスマホをじっと眺める。


『嫌だと言ったら?』


「……泣く」


大の大人に泣かれたら、流石に不味いので我は配信をする事にした。よっと。いでよばっとん!




『はいはい。我だぞ〜』


あまりやる気は無いので、適当に挨拶を終わらせそのまま始める。どうせこの時間に新規は見ないだろうし、このぐらい緩くても許されるだろう。


《コメント欄》


・適当すぎて草生える

・我だぞさんこんちは

・昼間から活動する自称吸血鬼の王さん

・早起きだね


『だって我の意思で始めた訳じゃないからな。始めたのは塩さんのせいでもあるしまあそれは置いといて。今回は猫カフェで動画を撮ってるぞ』


……許可とか大丈夫なのだろうか?


『塩さん、勝手にカメラとか回して大丈夫なのか?怒られたりしない?我嫌なんだけどそれ』


そう尋ねると塩さんから衝撃の事実が明かされる。


「あー、大丈夫だよ。だってこれ案件だもん。今回このお店から、ヴァンちゃんに動画を撮って欲しいって言われたから引き受けたんだ。こうすれば、お金も稼げるし良いと思ったんだけどどう?」


『それは事前に説明して欲しかった』


同調する様に猫がにゃあと鳴いた。って我の指を噛んだ猫だった。おのれ、我の血返せ。なんてな。減るけどそんなに我はケチじゃない。ただ、我の血なんて口に入れて大丈夫かとは思うけど。

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