8.5


『じゃ、許可も取れてたし行くか』


エレベーターに乗って、まずは二階へ行く事にする。全部で五階まであるから順番に攻めて行こうと思う。


《コメント欄》


・やべえな

・何でもう許可取れてるんだよ

・不思議に思っちゃいけないんだな

・そうだよ思う方がおかしいんだ

・そうか、そうなんだ。

・なんか洗脳でもしてる?


『おっ着いた。此処が二階か』


取り敢えず、誰かと会うまで歩いてみる事にしよう。誰か居ないかな。


《コメント欄》


・誰も居ない

・片っ端からドア開けてけ

・それはエグいだろ

・見せ場が無いから

・確かに今の所歩いてばっかで見せ場ゼロだけどさぁ


『あっそう言えば、塩さんが確か二階の資料室にいるって言ってたな。探しつつ進むか』


まぁ、ずっといるかどうかは分からないけど。会えると良いなぁ。



《コメント欄》


・マジか

・なんかRPGみたいになってきたな

・途中でお使い頼まれそう

・確かにモンスター連れてるし、グゥルも後ろ歩き始めたしもうパーティーだな

・魔王パーティーかな?

・勇者って感じはしない

・ゴスロリ服着て欲しい

・分かる。わかる

・大事な事なので二回言いました




『いやぁ、いないなぁ。ってか資料室何処だ?』


なんかこれじゃ探検って言うより、迷子になった子がウロウロ彷徨っているだけな気がしてきたな。


誰かが歩いて来る、聞いてみようか。


『すいません、資料室って何処ですか?』


「此処を真っ直ぐ行って右に曲がればあるよ」


『有難うございます』


真っ直ぐ行って右か、行ってみよう。




《コメント欄》


・やっと会えそうだな

・会ってどうするんだ?

・雑談するんだろ

・散々貢いでいる佐藤より塩原さんに会いに行くのは草

・だって変態と優しいギャルだったら一択しか無いだろ

・そりゃあそうか



『此処を、右に曲がると?』


資料室と書いてあるネームプレートが見えた。あった此処だ。さて、問題は塩さんがいるかどうかだけど。取り敢えず入ってみるか。


『失礼しまーす』


そっと扉を開けて小声でそう言うと、沢山の書類に囲まれながらキーボードを叩く女性の背中が見えた。塩さんだ。でも忙しそうだし、話しかけ無い方が良いか?


「うーんっ!ちょっと休もうかな〜。辛すぎ〜」


そう思っていると、タイミング良く休憩に入ったみたいだ。我はすかさず、話しかけた。


『塩さん!』


「あっ!来たんだヴァンちゃん〜丁度良かった。ちょっと抱かせてくれない?」


言葉を返すよりも先に、ギュッと抱きしめられた。なんか温かい。後ホッとする様な気がする。


「いや〜最近連チャンでさぁ、家に帰れなくてグルミ達のパワーが得られなくてさっ。助かったよ、これでもっと仕事頑張れそう。ありがとね?にしても抱き心地最高だね」


と言うながらも離してくれない、そろそろ離してくれ。


「……分かったよ、ハイ。所で何か用?」


『いや無い……。いや、そうだ!塩は今何をやってるんだ?』


「今?資料作成だよ、その後はデータ収集。私は現場と言うより、事務仕事が多いからね。この間のは結構レアなんだよね。戦えない訳じゃ無いけど、一人で黙々と作業してる方が楽でねっ。だから裁縫とかPC作業が向いてるのかもね」


『……成程。所で佐藤さんは今何処にいるか知ってるか?』


「アンは今日休みだから分かんないなぁ、ゴメン」


その後、少し雑談してその場を後にした。そして、三階、四階には色々な物があった。最新器具が揃ったトレーニング施設に、和洋中が揃ったレストラン。それからネカフェに仮眠室。二十五メートルプールまであるなんて凄いなぁとも思った。そして、五階に来た。


『多分此処が、本部長室な筈。此処でお礼を言って今回は終わろうか』


目の前の扉を三回ノックして、入ると。


「おぉ、初めましてだね。私は此処、対吸血鬼対策部隊の本部長。名前は佐藤康次郎だ。宜しく、えっと。吸血鬼の王よ」


優しそうなふっくらしたおじさんがそこにいた。そして伸ばされた手を掴み、握手した。


……?


『佐藤?いや、多い苗字だからたまたまか』


偶然だよな。


「あぁ、君に惚れていて。今想像している、その佐藤は私の娘だ」


『え?』


《コメント欄》


・は?

・嘘だろ

・本部長の娘だったの?

・知らんかった

・通りでこの組織がやばい訳だよ

・ちょっと納得


「これからも娘を宜しく頼むよ」


『終わり〜!またな、お前ら!』


困った我は強制終了して、全てを無かった事にして急いで寮に戻った。寝て起きたら夢になって無いかな。

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