8
『大変だ、皆集まってくれ』
夕方ぐらい、時間は……何時だ。えっと夕方だ。取り敢えず、我は人を集めた。
《?》
《……》
ヒト?人。人は集められなかった。まあ良いや話を進めよう。
『いやーどうしようネタが無い』
マジでどうしよう。また質問コーナーでも良いけど、飽きられるだろうし。新たな客層を入れるには新しい事をしたい。でも、思いつかない。どうしよ。
『なんか思いついた人』
取り敢えず聞いてみよう。三人集まってるし、名案思い付くかも。
《……グゥ!》
まず、元気良く手を挙げたのはグゥルだった。どうぞ!
『はい、グゥル君。ふむふむ、成る程。動物の可愛さでバズらせると。書いとこ』
血で作った真っ白なホワイトボードに鮮血のインクを滲ませていく。落ちるかな。滲みすぎて、ダイイングメッセージみたいになってるけど。
『となると……』
我は二匹を見た。うーん。
『インパクトが薄い、かな』
《……!》
《グゥ?》
見慣れてるせいか、新鮮味が無い様な気がする。今更出してもいつものねみたいな感じで流されそう。まぁやってみないと分からないけど。
『ぺット動画枠狙うならなんか特殊なこと出来ないとな……火の輪潜りとか、毒キノコ早食いとか。あっ冗談だって!』
物凄いスピードで走っていたので急いで追いかける事にした。ドッキリとかなら何とかなるかな?火の輪潜りは燃えるか。
「やっぱ、塩さんに聞こ」
結局
『やぁ!我が血肉になる者達よぉ!我が名はヴァンパイア・ロード。吸血鬼の王だ!今日はだな、いつもとは少し違う事をやっていこうと思うぞ』
《コメント欄》
・今ヴァンは〜
・今日ちょっと早いないつも深夜なのに
・あー、今ゴールデンタイムか
・早起きだな
・早起き?
・質問コーナーはちょっとマンネリしてたし期待
『今回はな、対吸血鬼対策部隊の本部を探検するぞ。色々あるらしいからな』
と言いつつ、まだ寮の自分の部屋なんだけど、格好もパジャマだ。配信終わったら寝るし、良いだろ。このままで。
《コメント欄》
・ほう
・今回は一般人向けかな
・案件?
・対吸とずぶずぶじゃん
・対吸血鬼対策部隊の本部に堂々と侵入している吸血鬼の王
・堂々とも何も顔パスなんだよなぁ
・案内人とかいないの?
『案内人がいると、決まった所で決まった事しか出来ないだろ?折角なら自由に色々とやってみたいんだ!アレがダメ。これがダメとか言われずに、まあ危ない事にはならないと思うけど』
《コメント欄》
・許可取ってないのか
・パジャマ姿で暴れる吸血鬼の王
・そのまま寝てください
・パジャマだと動きやすいから良いね
・パジャマだと素肌が見えやすくて良いね
・寝落ち配信で良いよ
『一応許可と言うか、元々この企画を提案してくれたのは塩さんだからな。多分大丈夫じゃないかな、きっと』
大丈夫な事を願おう。別に我は何か大事な情報を晒すとかするつもりは無いし。まぁ、心配になったら所々聞いてみれば良いか。
『カメラはばっとんに任せてるけど撮れてる?』
写ってるか〜。とカメラのレンズを覗き込んで見る。
《コメント欄》
・可愛いって
・やめて!可愛いからやめて!
・可愛すぎてキレてる
・グゥルは何してる?
・可愛いの暴力
『グゥルは並走してる。頑張れ〜』
まだ本部にも入ってないからなぁ。併設してるからすぐなんだけど。
《コメント欄》
・なんか息が聞こえると思ったらグゥルかよ
・軽過ぎる
・佐藤さんは今日いないのか?
・今日は休みな筈だぞ
・休みてえ
『じゃあ行くか〜。いざ!対吸本部へ!』
あっという間に辿り着き、デカいビルが我の目の前に出た。此処が日本最大の吸血対抗組織、対吸本部だ。いつみてもデカいなぁ。おじゃましまーす。
《コメント欄》
・自動ドアが一瞬反応しなくてビクッてなってるの可愛い
・俺はよくぶつけて壊して怒られてる
・自分で動いて壊すドアだから自動ドアじゃないの?
・自動ドアの新しい定義を作るな
・やっぱデカいな。流石日本最大級
・そんな場所に敵のボスが侵入してるのセキュリティガバガバすぎて草
『どーも』
受付の人達と目が合ったので、ペコっと頭を下げる。うーん。どうしようか。何処へ行けば良いか。ちょっと受付の人に聞いてみようかな。
『すいません、ちょっと良いですかね。聞きたいことがあるんですけど』
テーブル越しに受付のお姉さんと目を合わせる。
「どうかしました?」
営業スマイルを崩さず、そう語りかけて来るので我は頷いて聞いてみる事にした。やっぱり、許可取った上で自由にやる事にした。怒られるのは嫌だ。
『此処で一番偉い人は本部長ですかね』
「そうですね、そうなります。何か御用でしょうか」
やっばりそうか。
『今、本部長って此処に居ますか?』
「ええ。アポの方は取っていますか?」
アポは無いな。しまった。どうしよう……。
『いえ、無いとまずいですかね』
そう言うと、一気に受付の顔付きが変わった。
「そうですね……。一応、お名前とご職業の方をお伺いしても宜しいでしょうか」
『ヴァンパイア・ロードです。一応、吸血鬼の王をやってます』
「あぁ!成程。配信か何かですか?」
また顔付きが変わった。今度は声色が明るくなったので、我は驚きながら答える。
『あっはい。そんな感じですね』
「でしたら何やっても構わないと言ってました。好きにやってくれと何か必要な物があればポケットマネーからも出すと」
『それは怖すぎるから辞めてくださいとお伝え下さい』
あんまり長居すると、やばそうな事まで知ってしまいそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます