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『最近さ、寝ている時になんか寝苦しいなぁって思って。金縛りとかだと動けなくなるけど、手は動くんだ。身体が全く動かなくてさ、眠い目を擦って目をゆっくり開けたんだ。そしたら……』


《コメント欄》


・うん

・怖い

・たまに俺もあるわ

・身体が重くなるのは分かるわ。食べ過ぎで身体が重くなって何もしたくなくなるよ


『上に誰かいたんだよね、誰だろうと思ったら自立型の段ボール佐藤さんだった』


あれ?今のを聞いた塩原さんが走っていっちゃった。何でだ?……あっそう言えば、佐藤さんにこれは塩には内緒って言ってたな。やべっ。ゴメン佐藤さん。


《コメント欄》


・段ボールwwwww

・何やってんだ佐藤www

・ふんわり聴くと幼女に夜這いする美女なのにガッツリ聴くとある意味ヤバい話なの好き

・どっちにしてもアウトで草

・本当にあったある意味怖い話


『後は……そうだな。我の話だとアレしたかな?』


《コメント欄》


・アレ?

・知らん

・どんな話?

・うん

・今来たけど何だこの美少女

・くっそ可愛いよな。分かる(後方腕組み彼氏面)


『昔あったとある吸血鬼と貴族吸血鬼のしょーもない争い』


ま、我の話なんだけど。そこは誤魔化しとこう。恥ずかしいし。


《コメント欄》


・それもしかして"第一次血戦"?学校で習った。確か内容は、吸血鬼の王と貴族の吸血鬼の小競り合いで巻き込まれた土地が荒地になってそこにいた人間が絶滅したとか

・あれ?俺の時と違うな。俺の時は吸血鬼の王と貴族の吸血鬼が手を組んで巨大な龍を相手にして、世界を救ったって書いてあったぞ

・どっちにしても世界観がおかしいだろ。そんな漫画みたいな事があってたまるか

・少年マンガみたいで草

・ライバルと協力するみたいな感じか


『所が、あるんだよな〜。そんな漫画みたいな巫山戯た話が、まぁ確かに結構盛ってるけど』


なんだ第一次血戦って知らんぞ我そんなの。そりゃあ少年漫画みたいって言われるわ。しかも何そのデカい龍とか、荒れ果てた土地とか。そんなんなってんの?尾ひれじゃ済まないレベルでデカくなってる。


『あー、我の知ってる話だとな?あっこれは我じゃなくて我の友達の話なんだが、とある吸血鬼の貴族は人間が嫌いでな。毎日毎日残忍な殺し方で見せつける様にして人間を殺していた』


《コメント欄》


・へえ

・怖

・吸血鬼貴族怖えなオイ

・恐怖心を煽るタイプか性格悪いな。良い酒が呑めそうだ

・それで?

・最初からエグそう


『そんなある日、人間から相談されてヒトの味方に近い吸血鬼はその貴族と話すことに成功した。人殺しは辞めろとその吸血鬼は切り出すと、貴族は笑ってこう言った私の復讐を邪魔するなと』


『貴族は言った。何も私はただ人間を殺してる訳じゃない。悲しんで苦しみながら殺してるんだ。殺されたあの子もきっとこんな気持ちだったんだろうと……そう言う貴族の目には涙が浮かんだ。そうして、吸血鬼は説得を諦め、その場を去った。そして、また殺戮が始まったのだが、少しするとピタリと収まった』


《コメント欄》


・何で?

・あー良くある奴か

・漫画やアニメで親の顔より見る展開だな

・語られまくってるからな

・吸血鬼から殺人鬼になったって事か

・だれうま

・人の心無いだろお前ら


『偶然口に入り、飲み込んでしまった血が彼を変えた。彼は復讐を果たしながら、血を奪い喉を潤した。一度得た幸せは、彼を縛りそして依存性を強く持った。彼は毎日、毎日人を痛め血を奪った。それはもはや復讐の為ではなく……彼自身の為だった』


『それを止める為、吸血鬼と貴族はぶつかった。口煩い吸血鬼を閉じ込める事に成功した貴族は油断して、吸血鬼の仲間に殺された』


《コメント欄》


・何か悲しいな

・吸血鬼最後良い所無くて草

・なんかその吸血鬼ヴァンちゃんっぽいな

・確かに。ちょっと抜けてる所がぽいかも

・あれ?ドラゴンは?土地が吹っ飛ぶほどの熱いバトルは?

・そんなのある訳ねえだろ

・サンタと一緒でフィクションだよ

・その時ヴァンちゃんは何してた?


『我?我は勿論、クソ雑魚だから建物の中で子犬の様に震えてたぞ』


まあ、嘘は言ってないな。捕まってからずっと一人で怖くて震えてたし。恥ずいから我じゃなくて他人のせいにしたけど。


《コメント欄》


・可愛いwwww

・解釈一致

・そりゃあそうよ。俺だってそうだもん

・その頃何歳ぐらいだ?ってか何歳なんだ今

・↑前聞いた時には"レディーだから内緒。想像に任せる"って言ってたぞ

・レディーwwww

・その方が良いだろ?って悪戯っぽく笑って言ってたぞ。可愛すぎてその日は眠れなかったぞ


『……そろそろ終わるか。話のネタももう無いし。今日はこれで終わりだ!久々で突然なのに集まってくれてありがとな!おつかれ、またな!』


カメラに向かって手を振る。いやぁ、久々だったけど何とか上手く行って良かった。


《コメント欄》


・乙

・おつかれ〜

・オツ〜

・可愛い〜

・終わらないで

・バイバイ……


 





『んじゃ、カンパ〜イ!』


「はい乾杯」


「かんぱ〜い」


《グゥゥゥウ!》


《……》


グラスが重なり合った後、酒を口に運び喉が鳴った。ぷはぁ〜。やっぱ、お酒は美味いなぁ。


配信が終わった後、寮の我の部屋で打ち上げが行われた。我の部屋の理由は一番広いから、何か元々は本部長が使ってた部屋らしい。通りで広い訳だ、会ったらお礼を言っとこう。


「本当にヴァンちゃん大丈夫なの?お酒」


塩さんが何度目かの質問をするので、我はまた同じ答えを返す。


『それほど強い訳じゃないけどな、程々に嗜む程度には呑めるぞ』


毎晩とは言わないけど、週一ぐらいのペースで呑んでたからなぁ。それにちょっと昔の話して恥ずかしいし、お酒の力で何もかも忘れて寝たい気分だしな。


《グゥ!》


グゥルが入れてくれたお酒にお礼を言って呑んだ、あー美味い。そうだ、おつまみも食べよ。


「いや〜普通に考えれば狂ってるわよね」


皿に乗ったキムチや焼き鳥を摘んで頬張っていると、塩さんがそう言い始める。んんっ。


『ふぁりが?』


「可愛い……録音しとけば良かった」


佐藤さんからそんな言葉が聞こえたが、我は無視をした。人には聞かない方が楽な事もある。


「この状況よ、この部屋の中の半分は人外よ。人間の方が少ないってどうなのよ」


まあ、我はハーフみたいな物だから。半々で良いじゃん二.五と二.五で。


「ニンニクのホイル焼き食べる人〜!」


「餃子も無かった?ヴァンちゃん食べる?」


『我、ニンニクのホイル焼き食べたい!』


そんな顔しないでよ、うわマジで食べるんだコイツみたいな。傷付くわ。


「ごめん!やっぱびっくりしちゃって、餃子も食べる?辣油イケる?」


「いやぁ、いっぱい食べる女の子って良いよね〜」


それ普通は異性が異性に言うやつじゃない?佐藤さんが、我に言うのは違くね?


「アンタは言われる側じゃない?」


「私はもう女の子ロリじゃなくてババアだから。そこを間違えちゃ困る」


「自分でそんなこと言う人初めて見たわ。やっぱぶっ飛んでるわーアンタ」


我も初めてだ。ある意味尊敬するなそのメンタルに。まあ気にせず食べよう。にしてもこのホットプレート良いな、出来立て食べれるしニンニク焼けるし餃子も出来るし。


『ニンニク美味〜』


「餃子そろそろ良い感じだね」


「じゃもーらい。はいあ〜ん!」


段ボールから生えた手が餃子を掴み、そのまま我の近くまで来た。


『え?』


「え?」


「え?」


何この感じ、気まず。気にしちゃダメだ食べよ。


『あふぁあふぁ!』


急いで一口でいったせいで、口が大変な事になったけど楽しい打ち上げになった。久々だな、大人数で食事。

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