4.5


『……』


《……》


『何でいるんだ?』


《グゥゥゥゥウ!》


『初めて人に優しくして貰えたからか……。我が人かどうかは絶妙だけど、まぁ良いか』


前回、お漏らししたグールがいつく様になった。まあそれは良いんだ別に。我も悪いし、最初は我の事を人間だと思って食べようとしてたみたいだけど和解して我のファンになったらしいし。名前もグゥルと名付けた。でもなぁ。


……。ちらっ。


「?」


首を傾ける黒髪ロングのお姉さん。彼女が着ている服のワッペンには吸血鬼のイメージである蝙蝠にバッテンがしてある。


『何でいるんだ?』


相手は違うけど、再び質問を繰り返す。


「ボディガードです!」


対吸の人もいるんだよなぁ。なんで?


「前みたいに襲われたら困るじゃないですか、すぐ守れないと」


その理論は分かる。でも、それだと市民全員に一人ずつ配置しないといけないじゃん。と言うか、そもそも敵だよな?世界観的に。


「だからこの資料に判子を。母印でも良いので、中身は確認しなくて結構です。それで契約が成立するので」


全く意味が分からないけど、話も進まなさそうなので。そう言って渡された紙に朱肉を付けて……。


てっ?


『あの……佐藤さん?』


「はい。何でしょうヴァンちゃん」


ヴァンちゃん呼び……。


『上にデカデカと婚姻届って書いてあるんだが?』


「それがどうかしましたか?」


『婚姻届ってアレじゃないの?結婚的な』


「まぁそう言うアレですね」


成程つまり、この人はアレだな。ちょっとおかしな人なんだな。


『……帰ろうか。いや、帰れ』


「嫌だ!!」


ぐっ、力が強い!帰れ!!


『そもそも何で我と結婚しようとするんだ』


「合法ロリと結婚出来たらロリコンとして人生は終わったと言っても良いから」


キラキラな純粋な目で性癖カミングアウトされた我はどうすれば良いんだ。敵じゃん、元から敵なのに二乗じゃん。


『ロリコンなんじゃん……』


ロリコンと一緒に暮らす趣味は無い。何か方法は……。


『あっ、そうだ!今日ゴミの日か』


そう言って我はこっそり血で段ボールを作り出す。


『ちょっと一緒に来てくれるか?おい争うな』


佐藤とグゥルが睨み合ってマウントを取っていた。どっちが先かとか私の方が先に好きになったとか。


「私ですか?」


そうそう、来て来て。ゴミ捨て場まで行きダンボールを置く。良いか皆、我は今から酷い事をするが嫌いにならないでくれ。我の安全の為なんだ。このままじゃ仲間を探すどころじゃない。


『この段ボールの中に入ったら、婚姻届にサインをしてやっても良……早っ』


言い切る前に、段ボールの中に入った。まあ良いか。


帰ろう!




しっかりとドアを閉めて帰った。

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