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『ばっとん。行くんだ』
首を振るばっとんに我はそう言う事しか出来ない。悪いけど、我も引くわけにはいかない。
『ばっとん……しょうがない。命令だ。"行け"』
ショボショボとした感じで、飛んでいくばっとんの背中を見守る。安心しろ、ちゃんとその勇姿は見届けるさ。我はばっとんとの視界を共有した。
《……》
『……』
ごくり。
廊下には何者の影も見えない。よしっOK。戻って来いっばっとん!戻って来たばっとんは不服な様子でそこら辺を飛んでいる。
『どうしたばっとん。お前が言ったんだろ?なんか物音がするって。我は何も聞こえなかったけど、だったら見にいくのが言い出しっぺの鉄則だろ?』
まだ不服そうなので、一肌脱ぐ事にする。これで手を打ってくれ。
『はぁ……一口な。あんま吸われると貧血で倒れちゃうからな』
そう言うとばっとんが血を吸った。うっ、ゔぅ。
『はい、おわり』
必要経費とは言え、辛いなぁ。そろそろパソコンとかもこっちの奴に変えようか。じゃないとそのうち出血多量で我死んじゃう。全部血で賄ってるからなぁ。でも花粉症は楽になったし良いか、薬飲んだら効いたからあれは花粉症らしい。でもでもたまたまかも。
『パソコンにカメラに……マイクもそう。ばっとんも』
あー、頭痛くなって来た。まぁ何も居なかったみたいだし良かった。ゴッキーとかレイちゃんだったら叫ぶ事しか出来ないからな。本当に。置物化するぞ。
『何か食べようか』
ゆっくりもそもそと動く。体がダル重い。何かあったっけ……。
『ぃやぁ!我が血肉となる者達よ、我が名は!ヴァンパイア・ロード。吸血鬼の王である』
《コメント欄》
・今ヴァンは!
・よっす!
・今日も可愛い
・残業後、ボーッとした頭で見る王の配信は最高だ
・こんヴァンは
『ふぁあ……んん!さて今日もいつも通りお前らの悩みと言うか、質問と言うか戯言的なアレを読んで行くか』
《コメント欄》
・くさ
・読んでけ
・脳みそ空っぽで見れるから王の配信好き
・かわいいー
・佐藤さんは?
・今日は
『まずは……えっと、"神様を信じますか。それから……"成程、色々宗教的なモノもあるけど我は神様はいると思う。いるって考えた方が良いのかなって。それからなんだ。"それから、いるとしたらどんな神様が良いですか"か』
《コメント》
・まぁ、佐藤さんはエリートだもんな
・何てたってアレだもんな。アレ
・何だっけ。
・"返り血の聖女"だよ。倒した奴に対して、祈りを捧げる姿を市民が見てそう伝わったらしい。
・良いよなぁ、俺も欲しい
・欲しいならあげるわよ?はい!今日から貴方は"狂喜の女王様"です
・遠慮します
・神様か〜
・いるのならスギとヒノキと吸血鬼を何とかしてくれ
・居たら良いよな〜
『そりゃあ、自分に優しい神様だよ。そんなもん決まってるじゃん』
……懐かしいな、神様。二百年ぐらい前に会ったっけ。女神様だったけど懐かしい、元気にしてるかな。
そうぼんやりと考えていると、誰かがドアを叩く音で戻された。
『?何の音?』
ガンガンと考えている間にも鳴り止まない音。何だろう結構遅いのに……。
『まあ良いか』
《コメント欄》
・気にしないの草
・煩い
・都合の良い神様が欲しいよな
・わかる
・まだ叩いてる
・迷惑だぞ
『……出てみようか』
ずっと叩かれても困るし、出よう。玄関まで行き、扉を開けると。
『うおっ!?』
《グゥゥゥゥ》
人とは違う怪物みたいな奴がいた。扉を掴んで、全開にしてこちらに近づいて来た。……もしかして食人鬼って奴か?舐められたら終わりだ。
『おい。我を誰だと思ってる?我は吸血鬼の王だぞ?』
引かず、一歩前へと出て声を張る。無い胸も張って身体を大きく見せる。前教わった通り、震える足を押さえこみ、一息で声を低くし、放つ。
『頭が高い。首を下げよ、愚か者よ』
よし、何とか偉大な感じは出せた。何とかなっただろう。怖くて虚を見詰めていた目線を食人鬼に戻した。すると。
《グゥゥゥゥウ……》
泣きながら震えてた。後、なんか匂うなって思ったらお漏らししてた。そんなに?少しホッとした俺はかなりまずい場面な事に気づき、パニックになり励ましながらパンツを履かせると言うカオスを引き起こした。
『何やってんの我』
気づいた時には時すでに遅し。バッチリカメラに写ってたので、もはやドッキリでした〜って言おうかと思った。
らだ。
「推しが泣いてるグールにパンツ履かせて励ましてる?何で?」
……対吸の人が来ちゃった。しかも。
「ずるい!私もパンツ履かせてください」
変態だ。
お前ら帰れ。頼む。
『帰れ』
《コメント》
・本部長です。佐藤君、後で詳しく調書にこの事を書く様に。後、幼女独占法違反で捕まらない様にね
・何言ってんのマジで
・混沌が混沌を呼んでる
・類は友を呼ぶを体現した配信
・ヴァンちゃんが変態だと?
・変態じゃないけど変人だろ?
・草
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