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『やぁ!……やあ!……やぁ〜。なんかこれ猫みたいだな。面白い』


配信前。マイクを前に俺はふざけていた。まぁ、最初は緊張したとは言え今は慣れっこだ。声もこうやって出る様になったし、今みたいな新たな発見もあるし。一番最初なんてな……。恥ずかしくて耳まで赤くなった。沢山の市民の前での演説の時はそんなに緊張しなかったのに可笑しい話だ。


『ん?おぉ、もう時間か。王として遅刻は良くないからな!行こう我が食卓へ』


ばっとんが翼をバタつかせ、時刻を教えてくれる。さぁ、始めようか!






『やぁ!我が血肉となる者達よ。我が名はヴァンパイア・ロード!吸血鬼の王である!』


《コメント欄》


・よっ!

・連日は珍しい

・いつもゲリラだからな

・流石にまだ糖分さんはいないか

・こんヴァンわ〜

・昨日の続きかな

・待ってた


『えー、今日は昨日の続きの質問をまずは片付けていくぞ。最初は……自己紹介だな。まぁ、今したけどやる?』


《コメント欄》


・やって

・それ+吸血鬼かどうかを一緒に答えれば良いと思う

・成程ね


『分かった。名前はヴァンパイア・ロード。良く種族名が名前なのかとか言われるのが多いのだが、皆適当に名乗ってるからそこら辺は緩いんだ。山田さんや高橋さん、佐藤さんが沢山いるのと同じだと思ってくれ』


《コメント欄》


・へぇ……

・それは知らんかった。メモメモ

・何げに新情報じゃね?

・吸血鬼の生態は良く分かってないからなぁ

・だって調べる前に殺られるから殺られる前に殺らないと

・優しくない世界

・田中さんは?


『あぁ、田中さんもそう。えっと、次はああ。我が吸血鬼かどうか?まさか疑ってるのか?こんなに何処からどう見ても完璧な吸血鬼なのに』


《コメント欄》


・コスプレ疑惑と言うか願望と言うか……ね。分かって

・吸血鬼だって確定したら殺さなくちゃいけないからさ

・でも殺せるのお前ら

・無理だわ

・人類は滅亡します

・可愛すぎるからいけない

・えっ待って。もしかしてお前ら対吸?俺はそうだけど

・俺もそう

・俺は違う

・対吸


『……対吸って何?我知らないんだけど、誰か教えてくれー』


《コメント欄》


・カッコ良さは?

・馬鹿余計な事言うな

・人には向き不向きがあるんだよ

対吸血鬼対策部隊タイキュウケツキタイサクブタイとは、日本が持つ、最大級の規模を持つ吸血鬼に対する対抗組織である。遠い昔から減らない吸血鬼被害に対して、産まれたグループであり。彼らは自らの血を武器として吸血鬼と戦うのが仕事である。略して対吸と言われる事もある。wikiコピって来た。

・ナイス

・もしかして割と此処対吸多い?

・多そうだな

・それにしても今日は糖分が来ないわね……。何でかしら

・多分佐藤さんの事?佐藤さんなら今日は夜勤パトロールだから来れない筈。多分後でアーカイブ五回は周回すると思う

・そうなの。なら、遠慮してたけど送るわ。受け取りなさい!



【¥40000】『別にアンタの為じゃないんだからね』


『はぁ〜成程ぉ。wiki貼ってくれた人ありがとな〜。助かった!にしても二百年前とは違うなぁ。知らない事だらけだぁ』


いやぁ、本当何も知らないわ俺。俺の知ってる情報は何も役立たない。いや、そんな事は無いか。まぁ仕方ないなぁ。頑張って覚えよう。


『あぁ、そういえば確かに今日は佐藤さんいないな。珍しい、ん?スパチャ。佐藤さんか?』


あれ、違った。なんかちょっとがっかり。


『塩分担当さん初めてだよな!お金ありがとなって、あれ?俺……我じゃない?』


《コメント欄》


・ん?

・今、俺って言った?

・俺っ娘?

・困惑のあまり素が出てて草

・ツンデレは失われし古代文明だからな


『我のじゃないなら後で、渡しておくから教えてくれ。受け取っちゃって申し訳無い』


《コメント欄》


・いや合ってるんだよなぁ

・それはツンデレって言うんだよお婆ちゃん

・良いから受け取りなさいよ。あーもー。


【¥10000】『アンタが好きだからアンタに投げたの!分かったら受け取りなさい!!!!』


『何で我怒られてんの』


《コメント欄》


・急に告白し始めたよ

・ツンデレだからね

・訳がわからん


『まあ、またありがとう!我の事が好きなのは滅茶苦茶嬉しいぞ!勿論、我もお前らが好きだぞ。無論食料としてだがな!』


そう言ってニヤリと笑う。ガチ恋勢を作ると可哀想だから現実を見せよう。


《コメント欄》


・何処でもガブっといっちゃってください

・カモンカモン

・プリーズプリーズ

・ギブミーヴァンパイアロード


『急に全員頭がおかしくなったぞ。血迷うな。まあ、話は戻して。なんか此処は対吸の人が多いみたいだな。我が思ったのは、対吸血鬼対策部隊は吸血鬼専用のお巡りさんみたいな物なんだろ?いやぁ、命懸けて人々を護る仕事をしてるなんて、いくら仕事とは言え凄いと思う。対吸の人はいつもお疲れ様だな。後、今日は居ない佐藤さん、あっ、スマン。名前を読んでしまった。糖分さんもそれから塩分さんも。本当にありがとう!』


『あんまり頑張れは好きじゃないから。一緒に頑張ろう!我もこれから配信を頑張って、いずれ仲間を集めてお茶会や食卓を囲むのだ!』


《コメント欄》


・頑張ろう!

・結局、ヴァンちゃんは吸血鬼なん?

・吸血鬼っぽいけど、無害っぽいから今の所は様子見で良いんじゃね。そう上に言っとくわ。と言うか本当に王だとして勝てるのか?

・俺、本部長。ヴァンちゃん大好き。殺すのならお前殺す

・本部長が裏切ってて草

・もう終わりだよこの組織。




少しすると良い時間になった。




『ふぁあ……スマン。眠くなって来た。今日はこれで、おやす……』


瞼が重くなって目を瞑る。意識が落ちる前にばっとんが電源を落とした。それを確認して、俺は寝た。パジャマのままだからこのまま……。

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