第27話 予言
【異界の大回路】を歩いている。
ここは大きな一本道で左右には幾つものダンジョンへとつながる魔法陣と石版がある部屋がある。
今日も僕と水希は探索者の装備をしてそんな大回路を歩いていた。
「へえ~それじゃああの友達にはまたパーティーを組もうって話をされてるの?」
「はいっ最も今の所はパーティーを組むつもりはないですけど」
水希はキッパリと言い切る。
これには少し事情がありあの『奈落のアメミット』については謎のモンスターが一時と間現れて暫く暴れた後に姿を消したって事にしたのだがあの怪物を遠目に見ていたあの四人がしつこくギルドに言ったのだ。
当然その場にいた僕たちにもギルドの人間が何度も話を聞きに来たりあの四人にも詰め寄られたりとダンジョンを思うように探索出来ない日々が続いた。
そして……水希がキレる。
以前も力を借りた超偉いおじいちゃんに頼んで強引に今回の件をおさめさせたらしく、本当にギルドからは何も言われなくなった。
そして四人についてもこれ以上の探索の邪魔は僕が黙っていても私が黙っていませんよと少しキレ気味に話をしたら後日はそれ以上絡まれる事もなくなった。
本当に……あの四人はある意味『奈落のアメミット』以上の強敵だったな。
ダンジョンギミックで倒すことも出来ない輩は本当に面倒だと言うことをまざまざと理解させられた感じだ。
とまあそんな訳で『奈落のアメミット』の事件と四人とのしょうもないトラブルが重なった上に水希にはまたパーティーの再結成をと自分たちに都合のいい真似を積み重ねた彼らは水希を怒らせてしまったそうだ。
まっ水希は根が優しいから見捨てるなんて真似はしないだろうが、今後もあの四人が馬鹿な真似をしないかを見張るつもりらしい。
また僕につまらない理由で絡んで来たらお仕置きのドロップキックが待っていると言う訳である。
ちなみにの話だが、僕は無事に中級探索者に合格した。
試験はダンジョンの基本的な知識に関する筆記とダンジョンでの実技だったので水希の言うとおり落ちる心配は感じなかった。
しかしそれでも合格とか昇級とは嬉しいものだ、僕の懐には赤い探索者カードが大事に収められているよ。
それと戦利品としてゲットした装備だけど、やはりかなり強力な装備だったので現役で使ってる。
少し黄金カラーは派手なので他の探索者がいたりすると自重するようにしてるけどね…。
「あっあの蛇の杖の調子はどう?」
「むっ金蛇ちゃんロッドです、この子の名前は略さないで下さい」
水希がぶーたれる、僕は「ごめんごめん」と言って謝る。
下手に刺激すると僕にもドロップキックをかます可能性が水希にはあるからね、親しき仲にも礼儀ありさ僕は彼女のネーミングセンスについてツッコむ事はしない。
「それなら不動さんのホルスの黄金剣の調子はどうなんですか?」
「バッチリだよ、見た目は黄金だけど刃が欠けたり曲がったりしない頑丈な剣だから今はメインの武器にしてる」
「…て言うか私たち基本的にいつも一緒に探索してるんですけどね」
確かに、けど学生の水希と違い日々稼ぐ必要がある僕は水希がいない時は今もソロで頑張っているんだけどね。
「あっそれにしても今日はいつも見たいに直ぐにダンジョンへ行ける魔法陣がある部屋には行かないんですか?」
「うんっ近頃は色々あったでしょう? だから一度この大回路の突き当たりを見に行きたくてね」
「ああっあの大石版を見にですか…」
水希が納得したように頷く。
この【異界の大回路】は何も延々と続いてる訳じゃない、ちゃんと進み続けると突き当たりに辿り着くのだ。
その壁には他の石版よりもずっと大きかった石版が壁に埋め込まれている。
通称、大石版である。
僕たちはそこに足を運んだ。
「……あっもしかして不動さんにはあの大石版に書かれた内容も分かるんですか?」
「それがね…あの大石版の文字は読めても意味不明な言葉の羅列で内容なんてサッパリとなんだ、もしかしたら何の意味もないハズレの石版なのかもね」
「え~アレだけでんとあるのにハズレって、なんか私まで騙された気分です」
そんな会話をしながら大石版を見上げる。
……あの科学者風の男は恐らく石版の解読をした張本人じゃない、恐らくソイツに半端な情報だけを渡されて泳がされた捨て駒だ。
多分『奈落のアメミット』は目覚めさせた人間に従うとでも言われ、その言葉を信じたんだろう。
故に石版を解読した人間、恐らく僕と同じスキルを持ち、何のつもりかは知らないがあの危険なダンジョンギミックを起動させた頭のおかしいヤツが何処かにいる…。
ハァッ…本当に気が滅入る話だ。
そして、僕は大石版に書かれた文字を読む。
水希に言ったとおり文字は読めても意味不明な羅列でしかない、しかしこれは簡単な文字の並び替えをするだけでその内容は理解出来た。
この大石版にはこう書かれている。
『むふむふ~星に巣くう害獣共よ、好きな滅びを選ぶがいい。その光の先には様々な終わりがいるぞ、奈落の獣に呪われ狂い食われるもよし、溶岩の海魔に焼かれながら沈むもよし、氷嵐の竜に氷に閉じ込められ息絶えるもよしだ。おいどんは迷宮の意思、進む者の歩みを閉ざすモノだぞ~~』
おいどん………いやっそれはどうでもいい…のか?
最初は誰かのイタズラか解読ミスかと思ったよ。
とにかくさ、ホントこんなん凡人にどうしろってんだか。
「不動さんどうかしましたか?」
「え?」
「何かまた抱え込んでるみたいに見えましたけど……」
顔に出ちゃってたか、しかしこんな事は流石に水希にも……いや。
一人の時は黙って、諦めて、見なかった事にしたこの大石版のクソみたいな内容……。
けど、今はこれを何とかしたいと思っている自分がいた。
僕は水希の方を見る。
「……そうだね、なら少し話をしてもいいかな?」
「はいっ! 何でもどうぞ!」
仲間……か。
一人じゃあ諦めてしまいそうな事も仲間がいると違う選択が出来るような気がする。
僕は水希に他のダンジョンにもあの『奈落のアメミット』みたいなのがいるんだって事とこの大石版の内容について話してみることにした。
それが僕たちの探索者としての未来を大きく変える事に繋がるのだが…。
それはまた…別の機会に話すとしようかな。
【了】
凡人なのでダンジョンギミックを極めます どらいあい @driai
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